日本医薬品添加剤協会 |
和名 ポリ塩化ビニル 英文名 Polyvinyl Chloride CAS 9002-86-2 (link to ChemIDplus) 別名 収載公定書 薬添規(JPE2018), EP(4) 用途 基剤 ,結合剤 ■単回投与毒性 ポリ塩化ビニル(PVC)プラスチックの加熱分解産物の毒性及び肺への影響をモルモットを用いて検討した。PVC樹脂及びPVC製品試料(工業製品,電気絶縁製品)の加熱分解産物を単回吸入投与し,死亡率,並びに肺機能(換気量,呼吸数,食道内圧),酸化酵素活性(APD,AH,NPSH,Glutathione)及び肺重量の変化について検査した。 いずれの群においてもPVC投与に関連した呼吸数及び肺コンプライアンスの増加,気道抵抗の低下が認められた。肺機能に対する影響がみられたが,生化学的パラメータに大きな変動は認められなかった。1) Wistar系雄性ラットにPVC粒子の10及び50 mg/kgを単回気管内投与した。投与2,7,28及び90日後に各6例/群を剖検し,LDH活性,BALF中たん白濃度及び細胞数,肺重量の測定並びに病理組織学的検査を行い,肺の障害及び炎症の有無について検討した。投与2日後の検査では肺の炎症及び障害がみられたが,90日後には回復が認められた。PVC中の残留成分の影響について明らかにすることはできなかった。2) 生理食塩液に懸濁したポリ塩化ビニル粉体の 25 mg を雌ラットの気管内に単回投与し,肺組織中の酵素活性及び肺の病理組織学的変化について,投与180日後まで経時的に検査した。2種類のエネルギー関連酵素(コハク酸デヒドロゲナーゼ(SDH)及びATPase)活性は投与30日をピークに上昇し,その後徐々に低下し,投与150日には対照群と同等の値を示した。3種類の加水分解酵素 (酸性ホスファターゼ,βグルクロニダーゼ及びRNase) 活性はそれぞれ投与60日,60日及び30日をピークに上昇しその後低下したが,投与180日においても完全には回復しなかった。病理組織学的検査では,粉体投与初期に急性の炎症性変化がみられ,その後,肉芽腫形成病変が認められた。 3) ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) PVC粉末の13 mg/m3をラット及びモルモットには12ヵ月間,サルに22ヵ月間,吸入投与(1日6時間,週5日間)した。投与期間終了後,剖検を行った。サルでは肺機能検査を投与9,14,22ヵ月に実施した。病理組織学的検査では,すべての動物の肺でPVC粒子を捕捉した肺胞マクロファージの集簇がみられたが,線維化,細胞浸潤は認められなかった。肺機能検査において,PVC投与の影響は認められなかった。本試験条件下において,PVC粉末の吸入投与により良性の塵肺が誘発された。4) ■遺伝毒性 (link to CCRIS) ■がん原性 (link to CCRIS) ■生殖発生毒性 (link to DART) ■局所刺激性 ■その他の毒性 ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 誤用 その他 スウェーデンとノルウェーにおいて,同じ試験デザインを用いてプラスチック工場に勤務する女性を対象とした妊娠に関する患者対照研究を実施した。プラスチック工場に勤務する妊婦において,死産,胎児死亡,低体重児,奇形が認められた。オッズ比の増加がPVCプラスチック工場でみられたが,オッズ比は低温プラスチック製造で熱処理プラスチック製造より高かった。スチレンプラスチック,ポリウレタンプラスチック工場ではオッズ比の増加は認められなかった。すべての工場がこの調査に参画しているわけではなく,標本数も少ないことから,この結果は慎重に評価しなければならない5)。 プラスチック工場における職業的曝露と自然流産との関連性について,患者対照研究を実施した。塩化ビニルもしくはスチレンを原料とした重合プラスチックもしくは熱処理プラスチック製造に係わる従業員において,自然流産発現リスクの増加は認められなかった6)。 ニュージャージーの2つのPVC工場の周辺の住民を対象に,選択した先天異常について患者対象研究を実施した。工場からの距離が遠い住民において,中枢神経系先天異常発生率のオッズ比の低下が認められ,塩化ビニルの排出が多い施設周囲の住民においてオッズ比の増加がみられたが,統計学的有意差は認められなかった7)。 職業的曝露と精巣癌発生率との関連性についての患者対照研究を実施した。患者において精上皮腫及び胎生期精巣癌がみられ,PVC曝露の増加に関連したオッズ比の増加が認められた。停留精巣及び精巣炎患者を除外すると,さらに発癌リスクが増加するものと推察された8)。 ■参考文献 OECD database (link to SIDS) 1) Jaeger RJ et al: Thermal decomposition products of PVC plastics: effects on guinea pig lung mechanics and pulmonary mixed function oxidase activity; Am Ind Hyg Assoc J 43(12), 900-907, 1982. 2) Xu H,et al: Pulmonary toxicity of polyvinyl chloride particles after a single intratracheal instillation in rats. Time course and comparison with silica; Toxicology and Applied Pharmacology 194, 111-121, 2004. 3) Agarwal DK et al: Some biochemical and histopathological changes induced by polyvinyl chloride dust in rat lung. Environmental Research 16, 333-341, 1978. 4) Groth DH, et al: Pneumoconiosis in animals exposed to poly(vinyl chloride) dust. Environmental Health Perspectives 41: 73-81, 1981. 5) Ahlborg G Jr et al: Delivery outocome among women employed in the plastics industry in Sweden and Norway. Am J Ind Med 12: 507-17, 1987. 6) Lindbohm R et al: Spontaneous abortions among women employed in the plastics industry. Am J Ind Med 8:579-86, 1985. 7) Rosenman KD, Rizzo JE, Conomos MG, Halpin GJ: Central Nervous System Malformations in Relation to Two Polyvinyl Chloride Production Facilities. Arch Environ Health 44: 279-282, 1989. 8) Hardell L, Ohlson CG, Fredrikson M: Occupational exposure to polyvinyl chloride as a risk factor for testicular cancer evaluated in a case-control study. Int J Cancer 73:828-30, 1997. 参考 ポリ塩化ビニル製医療用具の使用について: 平成14年10月31日付医薬品・医療用具等安全性情報182号
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