日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 ヨウ化カリウム
英文名 Potassium Iodide

CAS 7681-11-0 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 

収載公定書  局方(JP17) ,USP/NF(29/24)  EP(5.3)
用途 安定(化)剤,可溶(化)剤,崩壊補助剤,溶解剤,溶解補助剤


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
Swissマウス 経口 1862 mg/kg
金網ケージでの絶食
Webster et al., 1957 1)
Swissマウス 経口 1982 mg/kg
鉋屑床敷での絶食
Webster et al., 1957 1)
Swissマウス 経口 2068 mg/kg
非絶食
Webster et al., 1957 1)
Swissマウス 腹腔内 1117 mg/kg Webster et al., 1957 1)
CDF1 マウス 皮下 1.9 g/kg Primack, 1971 2)
ラット 静脈内 167 mg/kg RTECS, 1923
ウサギ 経口 0.6-0.7 g/kg Greenbaum et al., 1927 3)



反復投与毒性 (link to TOXLINE)


遺伝毒性
試験 試験系 濃度 結果 文献
細胞遺伝性
(in vitro)
腹水由来腫瘍細胞
(MTK肉腫III)
500 mg/kg 分裂中期阻害 Kimura et al. 1963 4)



がん原性 (link to CCRIS)
N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine (DHPN)を280mg/100g体重腹腔内に投与したWistar系ラットにヨウ化カリウムを飼料に1000 ppm混入して19週間与えた。投与終了時,甲状腺腫の発現頻度は85%(20例中17例)であった。甲状腺癌の発現頻度は65%(20例中13例)であった。前処置しないヨウ化カリウム群,無処置群では甲状腺腫瘍の発現は認められなかった。甲状腺濾胞ホルモン(TSH)の平均値は前処置したヨウ化カリウム群で9.40±16.0 ng/mLであった。このことは,ヨウ化カリウムはDHPN前処理ラットの甲状腺腫瘍を促進(プロモート)させるとみなされた。5) (Hiasa et al., 1987)

F344系ラット雄にヨウ化カリウム1000,100,10,0 ppmを飲水に混入して2年間投与した結果,唾液腺の扁平上皮癌が1000 ppm群雄40例中4例,雌40例中3例に認められた。高用量群では,顎下腺の小葉萎縮を伴う小道管増殖が高頻度にみられ,扁平上皮化生が増殖性の小導管,比較的大きな導管間質に認められた。異形成から扁平上皮癌までの移行所見が明らかであった。これらのことから,増殖性の小導管の扁平上皮化生は,ヨウ化カリウムの二次的な小葉障害を招き,扁平上皮癌にいたると考えられ,非遺伝毒性の増殖性変化による機序とみなされた。6) (Takegawa et al., 1998)

F344系ラット雄にヨウ化カリウム1000,100,10,0 ppmを飲水に混入して104週間与えた。別途に2段階発癌性試験として,N-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine (DHPN)の単回投与後,ヨウ化カリウム1000,0 ppmを83週間投与した。前者の試験では,1000 ppm群の唾液腺で扁平上皮細胞癌の誘導が認められたが,甲状腺では腫瘍はみられなかった。2段階発癌性試験では,濾胞上皮由来の甲状腺腫瘍の頻度,重量が,DHPN単独群に比べてDHPN・ヨウ化カリウム群では有意に増加した。これらの結果から,過剰なヨウ化カリウムの摂取は甲状腺腫瘍を誘発するが,ヨウ化カリウム自体はラットに甲状腺腫瘍を惹起させないことが示唆された。唾液腺では,ヨウ化カリウムは後成的な機序による発癌能を有することが示唆されたが,高用量のみとみなされた。7) (Takegawa et al., 2000)



生殖発生毒性 (link to DART)
ラット,ハムスター,ウサギ,ブタに過量のヨウ化カリウム,ヨウ化ナトリウムを餌に混入して影響を調べた。雌は無処置の雄と交配させ,混餌投与は妊娠後期に行い, 出生仔には制限を加えなかった。妊娠期間,分娩時間,授乳,出生仔の生存率を観察した。ウサギにヨードを飼料に250〜1000 ppm混入して2〜5日間与えた結果,出生仔の死亡率が増加した。ハムスターでは,2500 ppm与えても軽度な摂餌量の減少,離乳時出生仔体重の減少以外変化は認められなかった。妊娠期間はラット,ハムスター共に変化はみられなかったが,ラットでは分娩時間の遅延が認められた。ヨードの混餌を停止してラット雌,ウサギ雌を再度交配した結果,出生仔には変化が認められなかった。ブタはラットとウサギで毒性の認められた用量で変化はみられなかった。8) (Arrington et al., 1965)

Sprague-Dawley系ラット雌雄にヨウ化カリウムを飼料に0.1,0.05,0.025,0 %(w/w)混入して交配前,交配期間中に与えた。母動物は妊娠期間,授乳期間,離乳(出生後21日目)後は出生仔とともに90日目まで混餌飼料を与えた。陽性対照群にはNDAメチル化阻害薬5-azacytidine 4 mg/kgを母動物妊娠17日目に腹腔内投与した。出生仔全例は本来の母動物が飼育し,3〜90日齢に標準的な行動試験をブラインド実施した。その結果,ヨウ化カリウムは母体重,摂餌量に有意な減少を惹起させることはなかったが,一腹の産仔数の減少,出生仔の死亡率の増加が最高用量群で,出生仔の体重増加抑制が高用量2群で出後90日間認められた。機能的には,ヨウ化カリウムは聴覚性驚愕の遅延が高用量2群で,嗅覚性帰巣反応の遅延が中間用量群で,雌では,回し車の運動能の低下がいずれの投与群でも認められた。生後90日齢で屠殺したラットでは,0.1 %群で体重及び脳重量の減少がみられた。0.05 %群では体重減少はみられたが,脳重量には影響は認められなかった。甲状腺重量は絶対重量,相対重量ともに90日齢では影響はみられなかった。ヨウ化カリウム低用量群では,いくつかの別途な行動変化がみられたが,用量に相関したものではなく,再現性もなかった。5-azacytidineはヨウ化カリウムより明らかな発生毒性能を示した。ヨウ化カリウムの発生毒性は甲状腺機能障害に伴うものとみなされた。この発生時の機能試験はヨウ化カリウムの発生毒性を捉える方法として追加することは有益と考えられた。9) (Vorhees et al., 1984)


以下については該当文献なし
局所刺激性
その他の毒性
ヒトにおける知見 (link to HSDB)


引用文献
1) Webster SH, Rice ME, Highman B, von Oettingen WF, The toxicology of potassium and sodium iodates: Acute toxicity in mice, J. Pharmacol. Exp. Ther. 1957; 120: 171-178
2) Primack A, Potassium iodide interaction with cyclophosphamide in mice (35630), Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 1971; 137: 604-606
3) Greenbaum FR, Raiziss GW, The elimination of iodine after oral or intravenous administration of various iodine compounds in single massive doses, J. Pharmacol. Exp. Ther., 1927; 30: 407-427
4) Kimura Y, Makino S, Cytological effect of chemicals on tumors. XVI. Effect of some inorganic compounds on the MTK-SARCOMA III in vivo (Plate XVIII), Gann, 1963; 54: 155-163
5) Hiasa Y, Kitahori Y, Kato Y, Ohshima M, Konishi N, Shimoyama T et al., Potassium perchlorate, potassium iodide, and propylthiuracil: Promoting effect on the development of thyroid tumors in rats treated with N-bis(2-hydroxypropyl)-nitrosamine, Jpn. J. Cancer Res., 1987; 78: 1335-1340
6) Takegawa K, Mitsumori K, Onodera H, Yasuhara K, Kitaura K, Shimo T et al., Induction of squamous cell carcinoma in the salivary glands of rats by potassium iodine, Jpn. J. Cancer Res., 1998; 89: 105-109
7) Takegawa K, Mitsumori K, Onodera H, shimo T, Kitaura K, Yasuhara K et al., Studies on the carcinogenicity of potassium iodide in F344 rats, Food Chem. Toxicol., 2000; 38: 773-781
8) Arrington LR, Taylor Jr. RN, Ammerman CB, Shirley RL, Effects of excess dietary iodine upon rabbits, hamsters, rats and swine, J. Nutrition, 1995; 87: 394-398
9) Vorhees CV, Butcher RE, Brunner RL, Developmental toxicity and psychotoxicity of potassium iodide in rats: A case for the inclusion of behaviour in toxicological assessment, Fd. Chem. Toxic., 1984; 22: 963-970




   



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