日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 トラガント
英文名 Tragacanth

CAS 9000-65-1 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 トラガントガム
収載公定書  局方(JP17) 食添(JSFA-IX)(トラガントガム) 外原規(2006) USP/NF(28/23)  EP(5)
用途 粘稠剤,懸濁(化)剤,結合剤,基剤,粘着剤


JECFAの評価 (link to JECFA)
ラットにおける無毒性量は混餌投与で6000ppmであり、これは3000mg/kg bw/dayに相当する。ヒトにおける1日許容摂取量(ADI)は規定されていない。1)(WHO Food Additive Series 20, 1985)


単回投与毒性 (link to ChemIDplus),
種々の動物種を用い、食品グレードの12種のガム(カラゲニン、トラガント、アラビアゴム、グアーゴム、カラヤゴム、アルギン酸塩、寒天等)について、強制経口投与によるLD50を求めた。夫々動物数は1群雌雄各5匹で、5群を設けた。被検物を懸濁・溶解する溶媒には水、鉱物油、コーンオイル、ダイズ油を用いた。動物は投与前18時間絶食し、投与後は自由に摂取させて14日間観察した。LD50は2.6-18.0g/kgの範囲にあり、殆どは5-10g/kgであった。一般的にウサギが最も感受性が高く、ラット及びマウスが最も低かった。1) (Bailey, personal communication to WHO, 1976)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
1群10匹の離乳直後のラットに、2%のトラガントガムを含有する大豆―トウモロコシ食を37日間与えた。食餌の消化性及びラットの成長に有意な影響は見られなかった。1) (Vohra et al., 1979)

ラットに、無線維食に0、10、20又は40%のトラガントガムを含有する食餌を6-7週間与えた。一般的に多糖類の大量投与はエネルギー摂取の低下に伴う成長率の低下が見られるが、トラガントゴムではいずれの動物においてもエネルギー効率を減じることはなかった。投与ラットの小腸重量は、単位長さ当りの粘膜の蛋白及びDNAに変化を与えることなく、約30%まで増加した。盲腸重量にも著明な影響が見られ、対照群に比し10、20、40%群では夫々1.8、2.0及び4.2倍であった。これらの影響の程度は、食事中のトラガントガムの濃度及び腸管内の細菌による分解のされ易さに依存する。1) (Elsenhaus et al., 1981)

ニワトリ
1群7匹の孵化直後のブロイラーに、2%トラガントガム混入大豆-トウモロコシ食を24日間与えた。トラガントガム混入食により体重及び食餌の消化性は有意に低下した。1) (Vohra et al., 1979)

ウズラ
1群10匹の孵化直後の日本鶉に、2%トラガントガム混入大豆-トウモロコシ食を36日間与えた。トラガントガム混入食は鶉の成長及び食餌の消化性に影響を与えなかった。1) (Vohra et al., 1979)


遺伝毒性
Salmonella typhimuriumのTA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538株及びSaccharo- myces cerevisiaeのD4株を用い、突然変異原性を検討した結果、代謝活性化の有無に拘らず変異原性は見られなかった。1) (Litton Bionetics, 1977)

ラット及びマウスを用いた宿主経由試験(Host Mediated Assay)で、Salmonella typhimuriumのTA1530、G46に突然変異は見られなかった。Saccharomyces cerevisiae D4のレック試験(Rec-Assay)でも異常は見られなかった。ラット骨髄細胞を用いたin vivoの系及びヒト肺細胞(wt. 38)の組織培養系においても染色体異常は認められなかった。1) (Litton Bionetics, 1972)


がん原性 (link to CCRIS)


生殖発生毒性 (link to DART)
マウス
妊娠マウスに、ペルシャトラガントの1%粘稠液の1mL(1回又は0.2mLを5回)を、妊娠11-15日に腹腔内投与した結果、全ての胎仔は死亡した。経口又は皮下投与では全く異常は見られなかった。投与検体が腸内細菌(Enterobacter spp)に汚染されており、この影響である。1) (Frohberg et al., 1969)

妊娠マウスに、コーンオイルに懸濁したトラガントガムを最高1200mg/kg bw/dayまでを妊娠6-16日に経口投与した。その結果、母獣に影響は見られず、催奇形性も認められなかった。1) (FDRL, 1972)

ラット
妊娠ラットに、コーンオイルに懸濁したトラガントガムを最高1200mg/kg bw/dayまでを妊娠6-15日に経口投与した。その結果、1200mgkg群で有意な母獣の死亡が認められた。死亡例では小腸粘膜の著しい出血が見られた。しかし、生存母獣の胎仔には異常は見られなかった。1) (FDRL, 1972)

ハムスター
妊娠ハムスターに、コーンオイルに懸濁したトラガントガムを最高900mg/kg bw/dayまでを妊娠6-10日に経口投与した。その結果、母獣に影響は見られず、催奇形性も認められなかった。1) (FDRL, 1972)

ウサギ
  妊娠ラットに、コーンオイルに懸濁したトラガントガムを最高700mg/kg bw/dayまでを妊娠6-18日に経口投与した。その結果、150、700mgkg群で有意な母獣の死亡が認められた。死亡例では小腸粘膜の著しい出血が見られた。しかし、生存母獣の胎仔には異常は見られなかった。1) (FDRL, 1972)

ラットにおける世代試験
1群雌雄各50匹のOsborne-Mendelラット(約21日齢)に、0、0.006、0.06、0.6又は6.0%のトラガントガム混餌食を投与し、13週後に交配し、F1世代を得た。F1世代は生後21日で離乳した。夫々の試験食を、F0ラットには総計27週間、F1ラットの1群雌雄各50匹には約20週間は与え続けた。体重、摂餌量を測定すると共に、受精率、妊娠数、同腹仔平均胎仔数、生仔生誕数、生育性、生後4日及び21日の生存数、離乳率、離乳時体重をチェックした。投与終了時には血液、臨床化学検査、臓器重量、主要臓器の病理組織学的検索を行った。更に特殊検査として肝のDNA、RNA、蛋白レベル並びに核酸代謝等についても併せて検討した。最高用量の6%群では雌雄共に食餌効率の低下に伴う有意な体重低下が見られた。体重の低下はF1でも見られ、特に雄で顕著であった。血液学的検査には異常は見られず、臨床化学検査では極軽度の影響が見られる項目もあった。臓器の病理組織所見にも異常はなかった。肝の肥大が6%群で見られたが、DNA、RNA、蛋白等の分析結果や病理所見と関連したものではなかった。肝のATP/ADP比はF0では著しく低下したがF1では異常なかった。1) (Graham et al., 1985)

その他
0.12Nの塩酸で溶解したトラガントガム7mg/kgを、ニワトリの受精卵の空気嚢又は卵黄中に注入した結果、死亡胚の有意な増加は見られなかった。孵化したヒヨコは全て正常であった。孵化しなかった卵は投与群で22%、溶媒対照群で14%、通常のバックグラウンドは3.41%であった。1) (Bodder, 1974)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
感作性
トラガントガムは重篤な反応を惹起する強力なアレルゲンである。アレルギー反応は吸入又は経口摂取で現れる。1) (Gelfand, 1943, 1949)

トラガントガムには、マウスを用いたin vivoの足蹠腫脹試験(Food Pad Swelling Test)で免疫原性が認められた。しかし、トラガントを精製していくと免疫反応は著しく軽減した。1) (Strobel et al., 1982)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
5人の健常人に、7日間コントロール食を与えた後9.9gのトラガントガム(3.3gを200mLの水に溶かしたゲル状物を1日3回)を32日間与えた。コントロール食期間中及び試験終了時に、血中の糖、インシュリン及び脂質(総コレステロール、HDL-コレステロール、リン脂質、中性脂肪)、血液検査、臨床化学分析等を行った。尿については24時間尿を採取し、尿中の糖、蛋白及び血液をチェックした。糞便については5日間の糞便を実験開始2-6日(コントロール食)及び投与後16-20日に採取した。その結果、トラガンス投与による副作用は見られなかった。小腸輸送時間の短縮、糞便の乾燥及び湿重量の増加を除き、いずれのパラメーターにも異常は見られなかった。4名では糞便中の脂質濃度の上昇が見られた。1) (Eastwood et al., 1984)



この資料の一部は食品・医薬品共用添加物の安全性研究の成果を引用した.

引用文献
1) Tragacanth Gum (WHO Food Additives Series 20) The 29th meeting of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives(JACFA) World Health Organization, Geneva 1985 ;  (link to WHO DB)



   

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