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和名 トコフェロール酢酸エステル 英文名 Tocopherol Acetate CAS 7695-91-2 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB) 別名 酢酸トコフェロール,酢酸dl-α-トコフェロール,ビタミンE酢酸エステル 収載公定書 局方(JP17),外原規(2006) 用途 安定(化)剤 ,抗酸化剤 ■単回投与毒性
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット 10匹の雄のHoltzmanラットに(60 IUのdl-α-Tocopheryl Acetateを配合した)基本の餌に600あるいは 6000 IU/kgのTocopheryl Acetateを添加し,2.91×106 IU/kgの vitamin A(retinyl acetate換算)を添加あるいは添加しない餌で8週間飼育した。 その結果,基本食群に比較して,基本食にTocopheryl Acetateを添加した群では,体重増加量及び摂餌量が有意に増加した。基本食にTocopheryl Acetate及びvitamin Aを添加した群では,体重増加量及び摂餌量は基本食群と同等であった。Tocopheryl Acetateのみ摂取した群では,血漿中のグロブリンの減少,血中コレステロールの増加が認められ,血漿中アルブミン,血中へモグロビンは変動したかった。血漿中及び肝臓中のvitamin A量は増加した。Tocopheryl Acetateにより,副腎重量は有意に減少した。5) (Jenkins and Mitchell, 1975) 1群雌雄各60匹のCharles River CDラットに500,1000及び2000 mg/kg/day のdl-Tocopheryl Acetateを104週間混餌投与した。対照群は通常食とした。24,25及び26週には,観察されたうっ血症状を和らげるため,飲水にvitamin K1を添加した。残りの試験期間には,食餌にvitamin K1を添加した。 試験の結果,体重増加量及び摂餌量は対照群と投与群で差はなかった。8週目の高用量群の雌雄では,ヘマトクリット,ヘモグロビン濃度及び赤血球数が統計学的有意に減少した。同群で,アルカリフォスファターゼの有意な上昇が試験期間中しばしば見られたが,これらは投与に関連した反応ではないと考えられた。4-26週では,alanine aminotransferaseの上昇が投与量に従って認められた。 52週で屠殺した雌の高用量群では,肝臓の絶対重量が対照群に比較して増加した。104週では,肝臓の絶対重量及び相対重量とも対照群に比較して有意な差は認められなかった。雌の全群比較をしたとき,中用量群では,肝臓の相対重量が有意に増加した。 雄の低用量群の18週,中用量群の16週,高用量群の15週で,腸,尿管,眼窩及び髄膜に出血が見られ,爪と鼻孔の僅かな外傷のあとの所にも出血が見られた。4週及び16週の雄の全群で,プロトロンビン時間は延長したが,vitamin K添加後には回復した。顕微鏡観察の結果,肝小葉中心付近に空胞化(泡沫状)マクロファージの集簇が投与群に認められることがあった。6) (Wheldon et al., 1983) 2群の雄のSDラット(18匹/群)に,vitamin E不含の基本食に200 ppmのdl-α−Tocopheryl Acetate添加,あるいはそれに更に1000 ppmのNaNO2を添加した食餌で9週間飼育した。22匹のラットには1000 ppmのNaNO2添加食,18匹の対照群には基本食のみで飼育した。その結果,飼育開始5週後,dl-α-Tocopheryl Acetate非摂取群の溶血が85 %以上で見られたのに対し,摂取群の溶血は5%未満であった。基本食にNaNO2を添加した群の9匹は試験期間中に死亡した。対照群及び他の群に死亡例は見られなかった。dl-α-Tocopheryl Acetate不含NaNO2添加群では,塊状の肝細胞壊死,中等度の筋変性,尿細管上皮変性及び好酸性腸炎が認められ,好酸性腸炎及び中等度の筋変性は対照群にも認められた。しかし、dl-α-Tocopheryl Acetate摂餌群には異常は認められなかった。 dl-α-Tocopheryl Acetate非摂取群では,血清クレアチニンホスフォキナーゼ,乳酸デヒドロゲナーゼ,GOT及びピルビン酸キナーゼ活性の上昇が認められた。dl-α-Tocopheryl Acetate非摂取群では,NaNO2添加によりこれらの酵素活性が上昇した。dl-α-Tocopheryl Acetate摂取あるいは非摂取にかかわらず亜硝酸塩摂取群では,メトヘモグロビンが増加し,ヘマトクリット値及び赤血球数が減少した。dl-α-Tocopheryl Acetate非摂取亜硝酸塩摂取群では,他の群と比較して,白血球,好中球,リンパ球,単球及び好酸球数が増加した。7) (Chow et al., 1984) 1群雌雄各30匹のFischer 344ラットにコーンオイルを溶媒として,125,500及び2000 mg/kg のd-α-Tocopheryl Acetateを3.5 mL/kg,90日間強制経口投与した。対照として,溶媒3.5 mL/kg投与群及び非投与群を設けた。その結果,高用量群10匹中7匹の雄が死亡あるいは9-11週に瀕死状態となり,屠殺した。死因は被験物質投与に関連したもので,体内に出血が認められた。平均体重と摂餌量は溶媒対照群と同様であった。500及び2000 mg/kg群の雌で肝の相対重量が有意に増加した。高用量群の雄で,下痢,頻呼吸,鼻からの出血,暗色便及び(死亡前日に多く)目の周りに赤色の痂皮が認められた。中高用量群の雄では,用量依存的に血液化学的パラメータが有意に上昇した。この変化は出血性素質による血液減少による。被験物質投与に関連した変化は雌では認められなかった。 投与に関連した臨床化学的変化は認められなかったが,甲状腺刺激ホルモンの有意な上昇が被験物質投与全例で認められた。2000 mg/kg群の雄で,トロンボプラスチン時間,APTTの延長及びフィブリノーゲンの増加が認められた。500 mg/kg群の雄でAPTTの延長が認められた。雌では,APTTの延長が用量依存的に見られ,高用量群でのみ有意差が認められた。被験物質投与に関連した出血性素因として,雄の7匹及び雌の2匹では出血あるいは出血性炎症が鼻,食道,唾液腺,気管,縦隔,精巣上体あるいは髄膜に認められた。顕微鏡観察の結果,被験物質投与に起因した肺腺腫様過形成及び慢性間質性炎症,細胞増生,うっ血,肺胞壁の肥厚及び泡沫状マクロファージの出現が投与全例に認められた。発生率及びその程度は用量依存的であった。高用量の雄の4匹で,骨髄造血が見られた。8) (Abdo et al., 1986) ラット及びイヌにおけるTocopheryl Acetateの4週間反復経口投与毒性試験では,2500,5000,10000あるいは20000 ppm のTocopheryl Acetate投与により毒性変化は認められていない。3) (BASF, 1993) ウサギ 新生仔のウサギにTocopheryl Acetateを静脈内投与し,Low-energy(10匹)あるいはHigh-energy(5匹)の食餌を与えた。Low-energyの食餌とは新生仔に与えられる標準小児用液であり,high-energyの食餌とは成熟ウサギのミルクと同等の液である。 Tocopheryl Acetateは25mg/mL濃度の4mL/kg bwを1回/日,7日間静注した。その結果,Tocopheryl Acetateを静脈内投与したLow-energyの食餌群では試験期間中死亡は見られなかったが,High-energyの食餌群では,投与後6日に1匹が死亡した。死亡原因は不明だが,操作上のミスではないと考えられた。Tocopheryl Acetate投与した場合,肝臓及び肺にTocopheryl Acetateの分布が増大し,組織中γ-Tocopheryl Acetateも上昇した。Tocopheryl Acetate投与動物の血液化学検査及び組織学的検査結果はTocopherol投与動物の結果と同様であった。 High-energyの食餌でTocopheryl Acetateを静脈内投与した群では,1匹に僅かな肝細胞リピドーシス,3匹に中等度の胆汁うっ滞,2匹に脾細胞リピドーシス及び全例に副腎のリピドーシスが認められた。9) (Rivera et al., 1990) ブタ 1-2日齢新生ブタを用いて,水溶性polysorbate 80 (90 mg/mL) 及びpolysorbate 20 (10 mg/mL)を溶媒としたTocopheryl Acetateの毒性試験を実施した。6匹はdl-α-Tocopherol,50 IU/kg/dayを13日間にわたり静脈内にボーラス投与した。その際の静注速度は毎回90秒間である。別の4匹には1回7時間の点滴静注を6日間行った。 また、別の6匹には筋肉内注射を13日間行った。溶媒投与群としては、2ないし4 mL/kg/day の溶媒のみを夫々各群6匹に投与したほか,対照群としては5匹に生理食塩液を投与した。その結果,静脈内ボーラス投与群で脾臓への影響が顕著であり,細胞の空胞化がellipsoid及び脾洞(sinus)における細胞で認められた。 この所見は7時間の点滴静注群,筋肉内注射群,溶媒投与群及び対照群には認められなかった。静脈内ボーラス投与群では,Tocopheryl Acetateの脾臓への分布が顕著であったが,肺及び肝臓には比較的僅かであった。7時間の点滴静注群ではTocopheryl Acetateの組織への分布は多くなかった。そのなかで最も高く分布を示したのが肺であった。筋肉内注射群でも,Tocopheryl Acetateは脾臓で有意に高く分布した。組織中のTocopherol濃度に関しては、静脈内ボーラス投与群では,脾臓内濃度が上昇し,肝臓や肺では比較的僅かな上昇に留まった。 また、7時間点滴静注群では肺に有意なTocopherol濃度の上昇が、筋肉内注射群では脾臓及び肝臓で有意な上昇が認められた。Tocopheryl Acetate投与による組織中のTocopherol濃度に関しては、フリーのTocopherol濃度の方が Tocopheryl Acetate濃度に比較して高かった。10) (Hale et al., 1995) ■遺伝毒性 0.1 または0.5mMアスコルビン酸と結合した0.1mM のdl−α−Tocopheryl AcetateのCHO-K1-BH4チャイニーズハムスター卵巣細胞に対する高酸素で引き起こされる突然変異誘発性の影響を,20%,90% 酸素下で検討した。90% 酸素下では,0.1mMアスコルビン酸は変異細胞率を増加させ,0.5mMは抗有糸分裂性があった.Tocopheryl Acetateは両方の影響を変化させなかった。 20% 酸素下では,突然変異誘発性および抗突然変異誘発性はみられなかった。11) (Gille et al.1991) ■がん原性 マウス 1群雌雄各10匹のNFS/Nマウスに20 mg のdl-α-Tocopheryl Acetate+0.1 mL ダイズ油を皮下投与する群,1群雌雄各5匹の同系マウスにdl-α-Tocopheryl Acetate+0.1 mL ヤシ油,dl-α-Tocopheryl Acetate,ダイズ油あるいはヤシ油をそれぞれ皮下投与する群を設定し,癌原性を検討した。 皮下投与はマウスの8週齢から60週齢に至るまで週1回投与部位(背部4箇所)を変えて行い、腫瘍の直径が10mmに達した時,あるいは68週齢になった時に屠殺した。その結果,dl-α-Tocopheryl Acetate+0.1 mL ダイズ油投与群では雄の20%,雌の40%に腫瘍が認められた。dl-α-Tocopheryl Acetate+0.1 mL ヤシ油群及びdl-α-Tocopheryl Acetate 群では,雄の20%に腫瘍が認められた。他の雌の群には腫瘍は認められなかった。12) (Nitta et al., 1991) 1群雌30匹のSPF BALB/cAnNTacfBR(H-2d)マウスに12.5,25及び50 mgのdl-α-Tocopheryl Acetate/ 0.2 mL acetone を3回/週 経皮投与した。3週間経皮投与した後,紫外線照射を行った。塗布は紫外線照射後30分に行った。照射条件は6連のフィルターなしFS-40 Westinghouse fluorescent sunlamps を用い,6.44 J/m2/sec,波長は313 nmにピークをもつ(280-320 nmの範囲の75%相当)UVB領域270-390 nmを用いた。照射距離は動物の背部から20 cm,照射時間は30 min/day,5回/週 18週間照射及び被験物質を経皮投与した。対照群には溶媒を投与した。 その結果,UV照射単独群に対して,12.5 mg dl-α-Tocopheryl Acetate投与群では光発癌性が高くなったが,用量相関性は認められなかった。投与群間で発癌率に差異は認められなかったが,Tocopheryl Acetate投与により,光発癌性誘発の可能性ありと結論された。15) (Gensler et al., 1996) ラット F344ラットを用いて,17匹に40 mg dl-α-Tocopheryl Acetate,15匹にdl-α-Tocopheryl Acetate+ダイズ油,18匹にdl-α-Tocopheryl Acetate+ヤシ油,12匹にダイズ油あるいはヤシ油を投与する群を設定し,9-11週齢から52週間皮下投与した。腫瘍の直径が20mmに達したとき,あるいは投与終了後8週に屠殺した。その結果,Tocopheryl Acetate,Tocopheryl Acetate+ダイズ油及びTocopheryl Acetate+ヤシ油群における腫瘍発生率はそれぞれ,82.4%,66.7%及び22.2% であった。その腫瘍は移植可能であった。ダイズ油あるいはヤシ油のみを投与した群では,腫瘍は認められなかった。 12) (Nitta et al., 1991) 15匹の雄Fischerラットを用いて,40 mg Tocopheryl Acetate+0.2 mL ダイズ油を背部に週1回10から12ヵ月間皮下投与した。その結果,73%の動物に線維肉腫が認められた。その腫瘍は移植可能であった。原発及び移植後腫瘍のリン脂質成分は同様であり,そのうち,ホスファチジルコリン及びホスファチジルエタノールアミンはそれぞれ54-56%,25-26%であった。13) (Ishinaga et al., 1991) その他 データは示されていないが,Tocopheryl Acetateには癌原性がないと判断されている。14) (Hoffmann-LaRoche, 1995) ■生殖発生毒性 (link to DART) マウス 1群20〜22匹の白色CD-1系妊娠マウスに、トウモロコシ油に溶かした16,74.3,345及び1600mg/kg bwのdl-α-Tocopheryl Acetateを,妊娠6日から15日まで経口投与した。体重は0,6,11,15,17日に測定した。妊娠17日目にマウスを屠殺し,胎仔の検査を行った。最高用量の1600mg/kg群においても着床,母動物及び胎仔の生存率に明らかな影響はみられなかった。胎仔の骨格や内臓の異常は偽処置群の自然発生的な発症数の範囲内であり、特に差はなかった。16) (FDRL, 1973) 1群6〜7匹のICR系妊娠マウスに、0.4mL のdl-α-Tocopheryl Acetate(591IU)を妊娠7〜11日または10日目にそれぞれ投与した。無処置群には13の、生理食塩水群には8匹の妊娠マウスを用い、後者については投与群と同様に処置した。吸収胚は、投与群では夫々3.3と4.3%であり、無処置と生理食塩液群では5.1と3.4%であった。Tocopheryl Acetateの複数の投与量群では1例の仔に眼瞼開存及び小顎症が認められた。17) (Hook et al,1974) Tocopheryl Acetateは催奇形性を有さないと記載されている.14)(Hoffmamnn-LaRoche, 1995) ラット 1群14及び12匹のWalterReed-Crworth Farms系妊娠ラットに、それぞれ5及び10mgのdl-α- Tocopheryl Acetateを交尾成立後、20日間経口投与し、妊娠22日目に屠殺した。対照群、5mg 投与群及び10mg投与群で、1個以上の胚吸収の見られる母動物の%は夫々40.8%、71.4%及び41.7%であり、全体の胚吸収率は夫々10.6%、14%及び4.1%であった。即ち、10mg投与では胚吸収に対して良好な影響が見られたが、5mgの投与では見られなかった。18) (Telford et al., 1962) 1群21,23,21及び22匹のWistar系白色妊娠ラットに、それぞれ16,74.3,345または1600mg/kg bwのdl-α-Tocopheryl Acetateをトウモロコシ油に溶かし、妊娠6日から15日に胃内に経口投与した。母動物の体重測定は0,6,11,15,20日に行い、妊娠20日目に屠殺して胎仔を検査した。最高用量の1600mg/kg群においても着床,母動物及び胎仔の生存率に明らかな影響はみられなかった。胎仔の骨格や内臓の異常は偽処置群の自然発生的な発症数の範囲内であり、特に差はなかった。16) (FDRL, 1973) SD系妊娠ラットを用いて、dl-α-Tocopheryl Acetateの催奇形性について混餌投与により6種類の実験を行った。実験T:22.5,45,90,450及び900mg/kg/dayを妊娠期間中に投与。実験U、実験III:0,450,900及び2252mg/kg/dayを妊娠期間及び哺育期間に投与。実験W:0及び2252mg/kg/dayを妊娠期間に投与。実験X:実験Tで得られた仔同士を交配して得られた新生仔。実験Y:実験Vで得られた仔同士を交配して得られた新生仔。なお、実験IIIとIVでは実験終了時に母体及び胎仔又は新生仔の血漿及び肝中のビタミンE及び脂質量を測定した。 これらの実験結果の概略を下表に示した。19) (Martin and Hurley, 1977)
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