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和名 臭化ナトリウム 英文名 Sodium Bromide CAS 7647-15-6 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB) 別名 臭化Na 収載公定書 局方(JP17),EP(5) 用途 等張化剤 ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus), ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット 運動の挙動を記録するために特別に創作したフレームの中に設置した標準ケージで個別飼育した。マウスの各群に0, 400, 1200, 3600又は10,800 ppm の臭化ナトリウムを含む混餌飼料で36日間飼育した。完全自動装置を用いてマウスの夜間自発運動の記録と経過測定, 他の3つの変数(回避時間, 自発の踏み車の様子及び体重) とともに, 試験飼料投与前, 投与中及び投与後の全128日間測定した。得られたデータを分散の単変量解析と多変量解析により統計学的に分析した。その結果, 挙動と体重における効果限界は, 飼料中臭化ナトリウムの400 ppm と1200 ppm の間のマウスにあった。1) (Hansen & Hubner, 1983) 雄ラットに正常食と臭化ナトリウム過剰食を4週又は12週摂取させた。濃度は飼料中, 0, 20, 75, 300, 1200及び19,200 mg/Kg であった。実験終了時, 下垂体, 甲状腺及び睾丸について病理組織学的及び免疫細胞化学的手法で検索した。一方, 血清中のホルモンレベルをラジオイムノアッセイによって証明した。病理組織学的には, 最高濃度で甲状腺の活性化と睾丸の精子形成能の低下を示した。免疫細胞化学的手法では, 甲状腺中のサイロキシン量の減少が注目された。下垂体の成長ホルモン生成細胞には影響はなかったが, TSH, ACTHの免疫活性は増加した。血清中のサイロキシン, テストステロン及びコルチコステロン濃度は低下傾向にあった。2) (Loeber et al., 1983) ■遺伝毒性 該当文献なし ■がん原性 該当文献なし ■生殖発生毒性 (link to DART) ラット ラットに飼料中臭化ナトリウムの0, 75, 300, 1200, 4800及び19,200 mg/Kg の濃度で90日間摂取させると, 内分泌系の一連の変化と甲状腺の活性化が最も顕著に現れる。更に, 最高投与群では睾丸の精子形成能の低下, 前立腺の分泌活性の低下, あるいは, 卵巣の黄体数減少がみられた。同じ飼料濃度の3代の生殖試験では, 2つの高濃度群において, 臭化物を外すことで可逆性と考えられる繁殖力の低下がみられた。臭素イオンの無作用量は飼料中240 mg/Kg であった。3) (va Leeuwen et al., 1983) 雌親ラットに飲水中250 mg/% のNaBrの水溶液を自由摂取させることでラット胎仔にNaBr暴露させた。対照には水道水か生理食塩水のいずれかを与えた。親への投与は妊娠5日〜15日に限定した。血液及び脳ホモジネート中の臭素濃度の測定によって胎仔への移行が投与期間中に限定されていないことが示された。排出遅延が原因で濃度の低下にもかかわらず, 親は胎盤と乳を介して生後10日まで仔に臭素を供給した。出生後の有意な遅延が臭素処置したすべての動物で観察された。永続的な欠損は体重, 脳重量及び脳組織の蛋白含量にみられた。加えて, 脳の構造に変化があり, 例えば新皮質の層状構造が修飾された。発達不足に対して, 臭糸球体の大きさは出生後のラットに一貫して大きくなり, 臭糸球体の直径は3箇月齢で対照に比べ30 % 大きかった。ラットの出生前及び周産期における中等濃度のNaBr暴露は, 脳の発達を含めて出生後発達を妨げることを示した。4) (Disse et al., 1996) ■局所刺激性 該当文献なし ■その他の毒性 該当文献なし ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 健康ボランティア21人(経口避妊薬未使用又は非妊娠女性11名及び男性10名) に1日, 1 mg/Kg のNaBrを8週間投与し, 又1日許容摂取量の摂取で影響を受けるか否かを調べるために2サイクル投与した。特に内分泌系に注目した。すべての医学的経緯と生理学的検査の結果には, 試験の前後の間に相違はなかった。血液, 生化学及び尿分析の結果は, 試験中変化はなかった。血漿中臭素濃度は, 女性0.08±0.01 mmol/L 〜0.97±0.18 mmol/L , 男性0.08±0.01 mmol/L 〜0.83±0.09 mmol/L であった。血清中のサイロキシン, 遊離サイロキシン, サイロキシン結合グロブリン, トリヨードサイロニン, コルチゾール, テストステロン, エストラジオール及びプロゲステロン濃度に変化はなかった。また, TRH及びLHRH投与の前後もTSH, プロラクチン, LH, FSHの血清中濃度も変化はなかった。5) (Sangster et al., 1982) 健康ボランティアに, NaBrを0, 4又は9 mg/Kg/day の用量でカプセル服用による二重盲検試験した。各投与は7人の男性に12週, また7人の避妊女性(経口避妊薬未使用) に3サイクル行った。特に内分泌系と中枢神経系に注目した。試験開始と終了時に医学的経緯と生理学的検査, 血液検査, 標準臨床化学及び尿分析の結果を記録した。カプセル摂取と関連する吐き気がみられた。内分泌系では9 mg/Kg/day の女性群で, 血漿中サイロキシン, トリヨードサイロニンが有意に上昇したが, すべて正常域であった。神経生理学的分析(EEG及び視覚誘発反応) で, 9 mg/Kg/day 投与群で, デルタ1と2活性の減少とベータ活性及び平均頻度の増加があったが, すべて正常域の範囲内であった。6) (Sangster et al., 1983) 健康女子ボランティア45人に臭化ナトリウムの0, 4及び9 mg/Kg 体重を経口的に投与した。試験は6回の月経周期の間継続し, 最初の3回の月経周期にのみ投与した。試験開始時, 投与期間の最後及び試験終了時に, 生理学的検査及び血液学的臨床化学試験を行った。臭化物摂取に関係した吐き気を除き有害な作用はなかった。血漿中臭素濃度は4及び9 mg/Kg 体重で投与期間終了時に上昇した。甲状腺ホルモン濃度に変化はなかった。4及び9 mg/Kg 群の投与期間終了時アルファ1とベータバンドに有意な変化がみられた。視覚誘発反応には変化はなかった。NaBrのヒトでの無作用量は4 mg/Kg 体重であると提示した。7) (van Gelderen et al., 1983) 臭素疹(Bromoderma) とは, 臭素を含む製品の使用によって起こる皮膚反応である。本報告では当施設で臭化ナトリウムを含んだシロップの投与により顔面と頭に病変を認めた2箇月齢の女児について述べる。8) (Bel et al., 2001) ■引用文献 1) Hansen K, Hubner H. Effects of bromide on behaviour of mice. Food Chem Toxicol. 1983 Aug; 21(4): 405-8. 2) Loeber JG, Franken MA, van Leeuwen FX. Effect of sodium bromide on endocrine parameters in the rat as studied by immunocytochemistry and radioimmunoassay. Food Chem Toxicol. 1983 Aug; 21(4): 391-404. 3) van Leeuwen FX, den Tonkelaar FM, van Logten MJ. Toxicity of sodium bromide in rats: effects on endocrine system and reproduction. Food Chem Toxicol. 1983 Aug; 21(4): 383-9. 4) Disse M, Joo F, Schulz H, Wolff JR. Prenatal wxposure to sodium bromide affects the postnatal growth and brain development. J Hirnforsch. 1996; 37(1): 127-34. 5) Sangster B, Krajnc EI, Loeber JG, Rauws AG, van Logten MJ. Study of sodium bromide in human volunteers, with special emphasis on the endocrine system. Hum Toxicol. 1982 Oct; 1(4): 393-402. 6) Sangster B, Blom JL, Sekhuis VM, Loeber JG, Rauws AG, Koedam JC, Krajnc EI, van Logten MJ. The influence of sodium bromide in man: a study in human volunteers with special emphasis on the endocrine and the central nervous system. Food Chem Toxicol. 1983 Aug; 21(4): 409-19. 7) van Gelderen CE, Savelkoul TJ, Blom JL, van Dokkum W, Kroes R. The no-effect level of sodium bromide in healthy volunteers. Hum Exp Toxicol. 1993 Jan; 12(1): 9-14. 8) Bel S, Bartralot R, Garcia D, Aparicio G, Castells A. Vegetant bromoderma in an infant. Pediatr Dermatol. 2001 Jul-Aug; 18(4): 336-8. |メニューへ| |
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