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和名 臭化カリウム 英文名 Potassium Bromide CAS 7758-02-3 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB) 別名 臭化K 収載公定書 局方(JP17),EP(5) 用途 溶解剤 ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus) ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット ヨウ素及び臭素含量既知の標準飼料で飼育した雄ラットに臭化カリウムを与えた。飲水中10, 50又は100 mg のBr- / L を16及び66日間, 100, 200及び400 mg のBr-/L を100日間与え, 対照は臭化カリウムを与えなかった。処置動物の甲状腺は, 低濃度(10〜100mg のBr-/L 飲水中) においても, 上皮性濾胞構成部位の成長促進があり, コロイドの減少を付随した高い濾胞細胞を有し, 実質の散在性又は集簇性の微小濾胞の再配列も伴った。パラフィン標本での免疫組織学的検索によって算出したPCNA-LI 指数(PCNA陽性核, 切片中濾胞細胞核総数分の100) を用いると, 臭化物投与動物では有意に高く(P < 0.01) , 組織学的変化, 臭化物濃度及び濾胞細胞の分裂活性と良く相関した。1) (Velicky et al., 1997a) ヨウ素及び臭素含量既知の標準飼料で飼育した雄ラットに臭化カリウムを与えた。飲水中10, 50又は100mg のBr-/L を16及び66日間与え, 対照は臭化カリウムを与えなかった。甲状腺の濾胞上皮の成長, 微小濾胞組織の再配列, 濾胞内コロイドの減少, 濾胞上皮の高さ及び細胞分裂数の増加並びに濾胞血管新生の増加が生じた。画像解析では, コロイド容積の有意な減少にもかかわらず微小濾胞の増加が付随した。サイログロブリンの免疫組織化学的陽性度は, 暴露動物で微小濾胞内で減少し, より大きな濾胞内ではより低含量であった。甲状腺中の臭素濃度は, 臭素摂取量に応じて増加し, 同時にヨウ素/臭素比率は減少した。T4 の血漿中レベルは16及び66日投与の両者で低下し, T3 は66日投与でのみ低下した。TSHレベルには有意な変化を認めなかった。2) (Velicky et al., 1997b) ヨウ素及び臭素含量既知の標準飼料で飼育した雄ラットに臭化カリウムを与えた。飲水中100, 200及び400mg のBr-/L を133日間与え, 対照は臭化カリウムを与えなかった。甲状腺は, 濾胞細胞の成長亢進によって, コロイド含量が低いかゼロのごく小さい濾胞が増生し, 実質の微小濾胞再構成をもたらした。体型測定分析では, コロイド容積の有意な減少と微小濾胞(100μ2 及び100〜300μ2 の面積) の数の著しい増加を示した。甲状腺細胞の核の分裂数の増加も伴い, 血管新生も増加した。血漿中T4 濃度は臭素濃度依存性に有意に減少した。コロイド中のサイログロブリンの免疫反応性は400 mg のBr-/L 投与で減少した。3) (Velicky J. et al., 1998) ラットを6群及び対照群に分け, 臭化カリウム水溶液を15, 50又は100 mg /L の濃度で16日又は66日間摂取させ, 甲状腺微小血管新生について走査電子顕微鏡によって対照群と比較した。臭化カリウム摂取動物では, 濾胞の毛細血管網中のメッシュの密度と数の増加が見られた。末梢血管は血管壁の平滑化を示し, 濾胞の中心部の血管網の分布は, 形態学的変化を受けなかった。4) (Cozzolino et al., 2005) イヌ 正常なイヌに, 臭化カリウムを30 mg/Kg , 12時間ごとに115日間経口投与して薬物動態力学を検討した。血清, 尿, 脳脊髄液の臭素化合物濃度を, 投与開始時, 蓄積期間, 安定状態時及び後の投与量調整時に測定した。投与量維持の間は, 神経学的欠損は見られなかったが, 脳幹聴覚誘起反応においてI波及びV波の有意な潜伏期シフトが明瞭であった。続く投与量調整の後, 血漿中臭化物濃度の約400 mg/dL では, 尾の不全麻痺が2匹にみられた。7) (March et al., 2002) ■遺伝毒性 (link to CCRIS) ■がん原性 (link to CCRIS) ■生殖発生毒性 (link to DART) ■局所刺激性 ■その他の毒性 病態動物に対する作用 リウマチ性関節炎による慢性の後肢不自由と特発性てんかんである難治性発作のある4才齢のジャーマンシェパード犬の症例報告。関節炎はプレドニゾンとピロシカム, 発作はフェノバルビタールとクロナゼパムで治療したが, 発作は難治性であったので, クロナゼパムの代わりに臭化カリウムを用いた。4箇月後再入院し検査した。抑圧, 横倒及び意識朦朧までの経過をとる神経学的症状が見られた。瞳孔不同, 筋肉痛, 反射の低下が注目されたため, 血清臭素濃度を測定し, 2.7 mg/mL であったためブロム中毒と診断した。5) (Yohn. et al., 1992) 臭化カリウムの1日29 mg/Kg 体重の投与量でてんかん治療をしていた8才齢のラボラドールレッドリバーをブロム中毒と診断した。臨床症状は, 後肢虚弱, 運動失調及び指南力障害であった。内因性クレアチニンクリアランスの測定診断で腎不全もブロム中毒亢進に応じた。生理食塩水による利尿, 臭化物の停止及びフェノバルビタール処置によって, 異常な神経症状は寛快した。6) (Nichols et al., 1996) ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 後退性腎盂造影にラジオコントラスト剤として用いた臭化カリウムによる腎不全をきたした2症例。腎臓の上部尿管の線維化及び脂肪壊死による障害であった。8) (Joyce et al., 1985) 過度の疲労があり, 意識集中が困難な49才の女性の症例。早い会話により混乱し協調性に欠き, 不安と不眠症のために6週間, 臭化物含有の製剤混合物(毎日0.09 g の臭化カリウム及び1.8 g の臭化ナトリウム) を処方化された。合計摂取量は60 g となった。慢性ブロム中毒の診断は, 著しく増加した血清臭素濃度(325 mg/L ) により確定した。9) (Steinhoff & Paulus, 1992) 臭化カリウムが重症の小児間代性筋痙攣性てんかんに著しく有効であることは知られているが, 熱性小結節性パニック(Weber-Christian 症候群) のような皮膚の副作用がまれに出現する。1993年に壊死性パニックの最初の3例を報告し “ハロゲンパニック” という言葉を導入した。これは, 皮下結節の集簇, 発熱, 赤沈亢進, 肝脾激痛及び腹痛を伴う全身性疾患である。後に皮膚及び皮下組織の強度の壊死が深い潰瘍を伴って発生する。本報告では5例の病歴と経過を示し, アレルギー性と毒性によるとする根拠を示唆している。10) (Diener W. et al., 1998) 1999年8月以来, 重度てんかんの3才の日本人女児を臭化カリウムにより治療していた。改善に乏しいため2000年5月に0.5 g/day から0.8 g/day に投与量を増やした。同時期細菌性肺炎による高熱もあった。6月11日突然, 背中と顔に赤色丘疹が出現, 視診では, 背中と顔の顆粒サイズの暗赤色紅斑性丘疹及び丘疹であった。背中のある部分では小膿胞性又は壊死性中心をもつ卵形ないし環状であった。中心に陥凹をもつ丘疹は, ヘルペス感染像を示したが, Tzank testは陰性であった。生検では好酸球と好中球の多量の細胞浸潤があり, 表皮内及び真皮内に膿瘍を形成した。5月25日の血漿中レベルは43.7 mEq/L (正常値0〜5 mEq/L ) であったが, 6月14日には114 mEq/L に増加した。11) (Anzai S. et al., 2003) ■引用文献 1) Velicky J, Titlbach M, Lojda Z, Jelinek F, Vobecky M, Raska I. Expression of the proliferating cell nuclear antigen (PCNA) in the rat thyroid gland after exposure to bromide. Acta Histochem. 1997 Nov; 99(4): 391-9. 2) Velicky J, Titlbach M, Duskova J, Vobecky M, Strbak V, Raska I. Potassium bromide and the thyroid gland of the rat: morphology and immunohistochemistry, RIA and INAA analysis. Ann Anat. 1997 Oct; 179(5): 421-31. 3) Velicky J, Titlbach M, Lojda Z, Duskova J, Vobecky M, Strbak V, Raska I. Long-term action of potassium bromide on the rat thyroid gland. Acta Histochem. 1998 Feb; 100(1): 11-23. 4) Cozzolino MF, Pereira KF, Chopard RP. Analysis of thyroid gland microvascularization in rats induced by ingestion of potassium bromide: a scanning electron microscopy study. Ann Anat. 2005 Mar; 187(1): 71-6. 5) Yohn SE, Morrison WB, Sharp PE. Bromide toxicosis (bromism) in a dog treated with potassium bromide for refractory seizures. J Am Vet Med Assoc. 1992 Aug 1; 201(3): 468-70. 6) Nichols ES, Trepanier LA, Linn K. Bromide toxicosis secondary to renal insufficiency in a epileptic dog. J Am Vet Med Assoc. 1996 Jan 15; 208(2): 231-3. 7) March PA, Podell M, Sams RA. Pharmacokinetics and toxicity of bromide following high-dose oral potassium bromide administrarion in healthy Beagles. J Vet Pharmacol Ther. 2002 Des; 25(6): 425-32. 8) Joyce DA, Matz LR, Saker BM. Renal failure and upper urinary tract obstruction after retrograde pyelography with potassium bromide solution. Hum Toxicol. 1985 Sep; 4(5): 481-90. 9) Steinhoff BJ, Paulus W. Chronic bromide intoxication caused by bromide-containing combination drugs. Dtsch Med Wochenschr. 1992 Jul 3; 117(27): 1061-4. 10) Diener W, Sorni M, Ruile S, Rude P, Kruse R, Becker E, Bork K, Berg PA. Panniculitis due to potassium bromide. Brain Dev. 1998 Mar; 20(2): 83-7. 11) Anzai S, Fujiwara S, Inuzuka M. Bromoderma. Int J Dermatol. 2003 May; 42(5): 370-1. |メニューへ| |
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