日本医薬品添加剤協会 |
和名 食用黄色5号 英文名 Food Yellow No.5 CAS 2783-94-0 (link to ChemIDplus) 別名 2-ヒドロキシ-6-スルホナートナフタレン-1-アゾ-(4’-ベンゼンスルホン酸)二ナトリウム 収載公定書 食添(JSFA-IX) 用途 着色剤 ■JECFAの評価 (link to JECFA) JECFAの評価:(FAS 17, (1964)) 毒性作用を示さない用量 ラット:1%混餌(500 mg/kg体重に相当)1) イヌ:2%混餌(500 mg/kg体重に相当)1) ヒトの1日摂取許容量(ADI)の推定値 0〜2.5 mg/kg体重1) ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus)1)
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) マウス マウス 80週間反復投与毒性試験 マウス雌雄各30匹の群に、本色素を0.2、0.4、0.8、1.6%で80週間混餌投与した。マウス雌雄各60匹から成る1群を対照群とした。本色素を投与しても、群内の死亡率、体重増加率、臓器重量、あるいは血液学的所見に有害な影響はみられなかった。病理組織学的所見の発生率および重症度は、投与群および対照群において同様であり、本色素を投与したマウスにおいて、腫瘍発生率の上昇は認められなかった1,2) (Gaunt et al., 1974)。 ラット ラット 3日間反復投与毒性試験 未成熟雌ラット10匹の群に、本色素を1日2回3日間皮下投与し、4日目にラットを屠殺した。1回に250 mg/kg体重となるように本色素水溶液を注射した。エストロゲン活性(子宮重量)は認められなかった1) (Graham & Allmark, 1969)。 ラット 14日間反復投与毒性試験 飼料に5%の本色素を添加して未成熟の雄ラットに摂食させた場合、通常飼料に5%添加では何の影響も観察されなかったが、精製飼料では、成長の著しい遅延を引き起こし、半数以上のラットが14日間の実験期間内に死亡した。この毒性は、ハーブの種子、人参の根の粉末、アルファルファの葉肉、小麦粉の添加により防御されたが、精製セルロースの効果は中程度であった2) (Ershoff, 1977)。 ラット 90日間反復投与毒性試験 ラット雌雄各15匹の群に本色素を0(対照)、0.5、1.0、2.0、3.0%で90日間混餌投与したが、成長あるいは摂餌量に対する有害な影響は誘発されなかった。しかし、3%群では試験期間中を通して、2%群では最初の数週間において、わずかな下痢が認められた。血液学的検査あるいは試験終了時の肝および腎機能検査で異常は認められなかった。剖検では、2%群および3%群において盲腸の腫脹が認められ、3%群では精巣の腫脹が認められた。本色素に起因する組織学的変化は認められなかった1,2) (Gaunt et al., 1967)。 ラット 7ヶ月間反復投与毒性試験 ラット20匹に1%の本色素水溶液1 mLを7ヶ月間にわたって週2回皮下投与した。合計55回注射した。1匹に腹腔内腫瘍が認められた(観察期間の報告なし)1) (Deut. Forsch., 1957)。 ラット 10ヶ月間反復投与毒性試験 本色素の2%水溶液を飲水としてラット16匹の群に10ヶ月間投与した。これらのラットに投与する飼料のビタミンB2は最小必要量とした。本色素の非投与群と比較したところ、本色素は若齢ラットの成長を促進し、これら動物の生存率を改善することが明らかになった。肝臓に病理組織学的変化は認められなかった1,2) (Manchon & Lowy, 1964)。 ラット 64週間反復投与毒性試験 雌雄各15匹の4群に対して、本色素を0、0.03、0.3および1.5%として64週間混餌投与した。ラットの死亡率は対照群と同様であった。摂餌量、発育、臓器重量、組織学的所見および血液学的所見に影響は認められなかった。腫瘍発生率に有意差はみられなかった1)(Mannell, 1958)。 ラット 18ヶ月間反復投与毒性試験 ラット雌雄各5匹に対して本色素を4%で最高18ヶ月間混餌投与した。腺胃および小腸にいくらかの染色が認められた。一部のラットのこれら臓器に粒状の沈着物が認められた。腫瘍は認められなかった1)(Willheim & Ivy, 1953)。 ラット 79または102週間反復投与毒性試験 ラット(雌雄)20匹から成る4群を用いた。2.0、1.0、0.5、0.0%で混餌投与した。79週目および102週目に生存動物を屠殺し、剖検した。雌ラットで、わずかな、しかし有意ではない発育遅延が発生した。摂餌量および生存率に影響はなかった。病理組織学的検査によると、肝臓には高齢動物に認められる一般的な変化しか認められなかった。ラットにおいて腫瘍変化は認められず、発がん性も認められなかった1)(Kanisawa, 1967)。 イヌ イヌ 2〜3ヶ月間反復投与毒性試験 イヌによる混餌投与試験を実施した。ビーグル4匹に本色素を1.0、5.0%で混餌投与した。5.0%群のイヌ4匹のうち2匹、および1.0%群の1匹で体重漸減がみられ、2〜3ヶ月後に屠殺しなければならなくなった。一般に、5.0%混餌投与群は中等度毒性、1.0%混餌投与群は軽度毒性を示した。体重減少および下痢が、結果としてみられた主要な臨床所見であった。肉眼および病理組織学的検査で病理学的変化が認められたが、特徴的なものではなかった1) 。 イヌ 7年間反復投与毒性試験 雌のビーグル犬5匹に対して本色素を2.0%で7年間混餌投与した。病理組織学的所見は何も報告されなかった1) 。 ハムスター ハムスター 330日間反復投与毒性試験 離乳前のGraffiまたはLakeview(LVG)ハムスター各11匹に、本色素(1.0 mg)を皮下注射あるいは腹腔内注射したところ、死亡率の上昇はみられず、330日間にわたって腫瘍は認められなかった1) (Price et al., 1978)。 ミニブタ ミニブタ 98日間反復投与毒性試験 ブタ雌雄各3匹の群に対して、本色素を0(対照)、250、500および1000 mg/kg/日で98日間混餌投与した。体重増加、血液学的指標、尿成分、臓器重量あるいは血清トランスアミナーゼ濃度および尿素濃度について、試験群と対照群に差は認められなかった。剖検あるいは組織の病理組織学的検査において異常は認められなかった。このような結果からブタに本色素を約3ヶ月経口投与した場合の無作用量は、1,000 mg/kg/日以上であると考えられた1,2) (Gaunt, 1969)。 ■遺伝毒性 (link to CCRIS), (link to GENE-TOX) 復帰突然変異試験 Escherichia coliの培地を用いて、変異原性の有無について本色素0.5 g/100 mLを試験した。変異原性作用は認められなかった1) (Luck & Rickerl, 1960)。 復帰突然変異試験 本色素は、代謝活性の有無にかかわらず、Salmonella typhimurium TA1538、TA98、TA100株に対して変異原性を示さなかった。様々なスルホン化ナフチルアミン類にも変異原性は認められなかった(すなわち、1-amino-2-naphthol-4-sulfonic acid)1) (Garner & Nutman, 1977)。 復帰突然変異試験 本色素を、フェノバルビトン処理したラットから得た肝ミクロソーム(S9)分画添加および無添加で試験したところ、Salmonella typhimurium 4株(TA1535、TA1538、TA98、TA100)において復帰突然変異は発生しなかった1) (Viola & Nosotti, 1978)。 遺伝子転換試験 本色素によって、2倍体酵母B2 34(S. cerevisiae)で有糸分裂による遺伝子転換はまったく増加しなかった1) (Sankaranarayanan & Murthy, 1979)。 Rec assay 本色素のDNA損傷能を調べるため、E. coli Rec assayを行った。E. coli WP 2 uvrAおよびS. typhimurium TA1538における復帰突然変異をほうこう試験(fluctuation assay)にて調べた。いずれの試験も代謝活性の有る場合と無い場合について行ったが、本色素には遺伝毒性は認められなかった1) (Haveland-Smith & Combes, 1980)。 復帰突然変異試験 本色素を各種のげっ歯類に強制経口投与した際の胆汁、尿、糞便中の変異原性の有無をAmes試験で調べた結果、S9添加の有無にかかわらず、陰性であったことから、経口摂取による遺伝毒性はないと結論された2) (Wever et al. 1989)。また、S.typhimuriumのTA98株、TA100株を用いた変異試験でも、S9添加、無添加系共に陰性であった2) (Izbirak et al., 1990)。 ■がん原性 (link to CCRIS) マウス マウス 52週間がん原性試験 マウス30匹の群に本色素0.05%を52週間飲水投与した。動物は生存する限り飼育した。一週間当たりの本色素摂取量は約17 mgであり、摂取量合計は1匹あたり884 mgとなった。生存動物7匹において、リンパ腫9個および良性の腸腫瘍1個が認められた。対照群では、生存動物13匹においてリンパ腫5個および腸腫瘍1個が認められた。試験開始時、対照群のマウスは60匹であった1) (Bonser et al., 1956)。 マウス 80週間がん原性試験 マウス雌雄各30匹の群に、本色素を0.2、0.4、0.8、1.6%で80週間混餌投与した。マウス雌雄各60匹から成る群を対照とした。本色素を投与しても、群内の死亡率、体重増加率、臓器重量、あるいは血液学的所見に有害な影響はみられなかった。病理組織学的所見の発生率および重症度は、投与群および対照群において同様であり、本色素を投与したマウスにおいて、腫瘍発生率の上昇は認められなかった1) (Gaunt, 1974)。 マウス 2年間がん原性試験 本色素について2年間混餌投与試験を実施し、2系統のマウス(C57 blackおよびC3H)に対して本色素を1%および2%で混餌投与した。各系統100匹のマウスに両濃度の本色素をそれぞれ投与し、各系統200匹のマウスに対照飼料を投与した。腫瘍形成に対する影響は認められなかった1) 。 ラット ラット がん原性試験 Osborne-Mendelラット同腹児24群を交配させた群(雌雄同数にする)に、本色素を0、0.5、1.0、2.0および5.0%で混餌投与した。乳房腫瘍数に統計学的に有意な増加は認められなかった。認められた腫瘍数は、0%群で2個、0.5%群で1個、1.0%群で6個、2.0%群で3個、5.0%群で6個であった1) 。 ラット 癌がん性試験 Osborne-MendelおよびSprague-Dawleyラットを用いて追加混餌投与試験を実施した。各系統ラット100匹に対して本色素を1.0%および2.0%で混餌投与した。各系統のラット200匹を対照群とした。肉眼および顕微鏡による病理学的検査では腫瘍形成に影響はみられなかった1) 。 ラット 64週間がん原性試験 雌雄各15匹の4群に対して、本色素を0、0.03、0.3および1.5%として64週間混餌投与した。ラットの死亡率は対照群と同様であった。摂餌量、発育、臓器重量、組織学的所見および血液学的所見に影響は認められなかった。腫瘍発生率に有意差はみられなかった1) (Mannell, 1958)。 ラット 18ヶ月間がん原性試験 ラット雌雄各5匹に対して本色素を4%で最高18ヶ月間混餌投与した。腺胃および小腸にいくらかの染色が認められた。一部のラットのこれら臓器に粒状の沈着物が認められた。腫瘍は認められなかった1) (Willheim & Ivy, 1953)。 ラット 79または102週間がん原性試験 ラット(雌雄)20匹から成る4群を用いた。2.0、1.0、0.5、0.0%で混餌投与した。79週目および102週目に生存動物を屠殺し、剖検した。雌ラットで、わずかな、しかし有意ではない発育遅延が発生した。摂餌量および生存率に影響はなかった。病理組織学的検査によると、肝臓には高齢動物に認められる一般的な変化しか認められなかった。ラットにおいて腫瘍変化は認められず、発がん性も認められなかった1) (Kanisawa, 1967)。 ハムスター ハムスター 330日間がん原性試験 離乳前のGraffiまたはLakeview(LVG)ハムスター各11匹に、本色素(1.0 mg)を皮下注射あるいは腹腔内注射したところ、死亡率の上昇はみられず、330日間にわたって腫瘍は認められなかった1)(Price et al., 1978)。 ■生殖発生毒性 (link to DART) マウス マウス 生殖試験 F0マウスの5週齢からF1の9週齢まで、混餌投与(0.15、0.30、0.60%)した試験で、産児数、体重、性比に差異は認められなかったが、授乳後期の児マウスの体重は0.15%及び0.30%投与群で雌雄共に有意に増加した。一方、以下の神経行動学的指標について有意な異常が観察された。すなわち、授乳前期の児マウスにおける swimming direction test(濃度依存性、雌雄)、平面立ち直り反応 及び負の走地性(0.30%群、雄)、swimming head angle(濃度依存性、雌) 2) (Tanaka, 1996)。 ラット ラット 催奇形性試験 本色素100、300、1000 mg/kg/日を妊娠6日〜15日のラットに強制経口投与した。300 mg/kg/日群および1000 mg/kg/日群母動物の出生児の平均体重が減少したが、有意差には到らなかった。評価したその他の母動物(体重、黄体、胎芽を認めない着床痕(empty implantation site)、早期吸収、後期吸収、生存または死亡の満期胎児)あるいは胎児(性別、外部異常、内部異常、骨格異常)のパラメータに影響は認められなかった。これらの母動物の出生児に奇形は認められなかった1) (International Research and Development Corporation, 1972a)。 ラット 生殖試験 本色素を混餌投与した。投与量は、1日摂取許容量(ADI)あるいは過去に行われたラットおよびイヌによる長期混餌投与試験データから評価した推定安全摂取量の倍数(1倍、10倍、30倍、100倍)を基に決定した。しかし、1000 mg/kg/日以上の用量は試験されなかった。ヒトにおける本色素の使用濃度も混餌濃度決定のためのファクターとした。F2bの同腹児から得られたデータによると、生殖行動に対して有害な影響はみられなかった1) (Pierce et al., 1973 - available in summary only)。 ウサギ ウサギ 催奇形性試験 本色素100、300、1000 mg/kg/日を妊娠6日〜18日のウサギに強制経口投与した。評価した母動物(体重、黄体、早期吸収、後期吸収、胎児の生存期間または死亡時期)あるいは胎児(平均体重、性別、外部異常、骨格異常)のパラメータに影響は認められなかった。本色素とは無関係であると考えられる不完全な双生児(incomplete twin)が1000 mg/kg/日群で発生した1) (International Research and Development Corporation, 1972b)。 ■局所刺激性 モルモット モルモット 感作性試験 モルモットによる試験において、本色素には感作性は認められないことが確認された1) (Bar & Griepentrog, 1960)。 ■その他の毒性 細胞毒性 胚繊維芽細胞 細胞毒性 本色素は、F 1706 Fisherラット胚線維芽細胞に対して継代培養を10代行っても細胞形質転換を誘発しなかった。すなわち、典型的な形態的変化が認められず、細胞に重大な腫瘍化もみられなかった1) (Price et al.., 1978)。 ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) ヒト 皮膚試験 本色素を用いた皮膚試験では、p-phenyl-enediamineに過敏性反応を示す患者で交差性感作により湿疹性過敏症が誘発された。本色素はキノン構造を有する化合物に容易に変換されること、およびキノン化合物はある種の生体成分と結合できることから、このような反応が発生したと説明できる1) (Baer et al.., 1948)。 ■引用文献 1) WHO Food Additive Series No.17 Sunset Yellow FCF, 1964 (link to WHO DB) 2) 第7版食品添加物公定書解説書 |メニューへ| |
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