日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 モノエタノールアミン
英文名 Monoethanolamine

CAS 141-43-5 (link to ChemIDplus)
別名 エタノールアミン(102223)、β-アミノエチルアルコール、2-Aminoethanol、2-Hydroxyethylamine、Ethanolamine

収載公定書  薬添規(JPE2018),  外原規(2006)  USP/NF(28/23)
用途 安定(化)剤 ,緩衝剤,pH調節剤,溶解補助剤


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
ラット 雄 経口 1.2-2.5 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)
ラット 雄 経口 1.1-2.7 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)
ラット 混餌 2.740 g/kg Smyth, 19514)
マウス 経口 0.7-15.0 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)
ウサギ 経口 1.0-2.9 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)
ウサギ 経皮 1.0-2.5 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)
モルモット 経口 0.6 g/kg CIR, 19831) BIBRA, 19932) UCC, 19883)



反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
1群各10匹のラットにモノエタノールアミン 160-2670 mg/kg相当(詳細な用量設定は記載がなかったため不明)を摂取するよう飼料に混合して30日間投与した。640mg/kg以上の投与で、肝臓または腎臓の器官重量の変化がみられた。1280 mg/kg以上の投与で死亡例があり、病理組織学的所見が肝臓・腎臓・脾臓または精巣のいずれか認められた(詳細は引用論文中に記載がなかったため不明)。無影響量は320 mg/kgであった。4) (Smyth, 1951)

雌雄各20匹の4-5週齢CFWラットにモノエタノールアミン 5 ppmを24 hr/day、7day/weekの条件で40日間吸入暴露させたところ、外表の脱毛のみが認められた。
1群45匹の8週齢CFW雌ラットに12 ppmを24 hr/day、7 day/weekの条件で90日間吸入暴露させたところ、活動性の減少に続いて嗜眠がみられた。対照群に比較して体重増加が10%抑制され、摂水量が40%増加した。
同じく、66 ppmを上記条件で30日間吸入暴露させたところ、死亡例がみられた。一般状態では活動性の増加、摂水量増加および呼吸深大がみられ、後に活動性の消失が認められた。さらに、外表の各所に脱毛や黒色痂皮の形成がみられ、投与期間の経過と共に潰瘍の形成が認められた。途中死亡例を含めた病理組織学的変化として、肝臓では散在性の脂肪変性がみられ、肺においては、散在的な肺炎および間質のリンパ球集簇がみられた。
以上より、最小毒性濃度は5 ppmと考えられた。5) (Weeks, 1960)

モルモット
6週齢の雄Hartley系モルモット22匹にモノエタノールアミン 15 ppmを24 hr/day、 7 day/weekの条件で90日間吸入暴露させたところ、活動性の減少に続いて嗜眠がみられた。対照群に比較して体重増加が10%抑制され、摂水量が40%増加した。

6週齢の雄Hartley系モルモット30匹にモノエタノールアミン蒸気 75 ppmを24 hr/day、7 day/weekの条件で24日間吸入暴露させたところ、死亡例があり、一般状態では活動性の増加、摂水量増加および呼吸深大がみられ、後に活動性の消失が認められた。さらに、外表の各所に脱毛や黒色痂皮の形成がみられ、投与期間の経過と共に潰瘍の形成が認められた。途中死亡例を含めた病理組織学的変化として、肝臓における散在性の脂肪変性、腎尿細管上皮の腫脹や肺におけるリンパ球浸潤がみられた。骨髄では赤芽球数および顆粒球数の増加が見られ、精巣においては精子形成の低下がみられた。無影響量に関する記載はなかった。5) (Weeks, 1960)

イヌ
1群各3匹の雄ビーグル犬にモノエタノールアミン 3 ppmを24 hr/day、7 day/weekの条件で60日間吸入暴露させたところ、活動性の軽度な減少、体重減少、脱毛および痂皮形成がみられた。
同じく12または26 ppmを上記条件で90日間吸入暴露させたところ、活動性の減少、軽度の振戦、脱毛および痂皮形成が認められた。
同じく102 ppmを上記条件で30日間吸入暴露させたところ、投与25日に1例が死亡した。一般状態として、嘔吐や活動性の増加として不隠および攻撃性がみられた後、不活発、振戦や軟便がみられ、外表面の各所に痂皮や潰瘍形成が認められた。途中死亡例を含めた病理組織学的所見は、102 ppm暴露群でのみ認められ、肝臓では中心静脈の鬱血と肝実質細胞で細胞質内の空胞形成がみられた。脾臓では、マルピーギ小体内のリンパ球の枯渇や赤脾髄内の赤血球数の減少がみられた。腎臓においては、タンパク尿排泄を示唆するガラス滴が尿細管にみられ、近位尿細管局部上皮の腫脹が認められた。精巣においては、精子形成の低下がみられた。肺においては全体に鬱血がみられ、限局的な肺胞の出血が認められた。また、死亡例では気管支炎を伴う肺炎が認められた。無影響量に関する記載はなかった。5)(Weeks, 1960)



遺伝毒性 (link to CCRIS)
試験 試験系 濃度 結果 文献
復帰変異 サルモネラ菌TA1535
TA1537, TA1538, TA98
TA100
125-4000 μg/plate 陰性 Dean, 1985 6)
復帰変異 サルモネラ菌TA1535, TA100 濃度記載なし 陰性 Hedenstedt, 1978 7)
復帰変異 サルモネラ菌(詳細不明) 濃度不明 「弱い」a)
変異原性
Arutyunyan, 1987 8)
復帰変異 大腸菌WP2 , WP2uvrA 濃度記載なし 陰性 Dean, 1985 6)
復帰変異 酵母 Saccharomyces
cerevisiae JD1
濃度記載なし 陰性 Dean, 1985 6)
形質転換 ハムスター胚細胞 25-500 μg/mL 陰性 Inoue, 1982 9)
染色体異常 ラット肝細胞 濃度記載なし 陰性 Dean, 1985 6)
染色体異常 ヒトリンパ球(詳細不明)
フタマタタンポポ属種子由来細胞
(詳細不明)
濃度不明 「弱い」a)
陽性
Arutyunyan, 1987 8)

a)ロシア語記載の文献報告であったため、英文抄録のみを参照したことから詳細不明


がん原性
該当文献なし.

生殖発生毒性 (link to DART)
ラット
1群40匹のWistar妊娠ラットにモノエタノールアミン 0、40、120、450 mg/kgを蒸留水に溶解して、妊娠6日から妊娠15日まで連日強制経口投与した。450 mg/kg投与群で母動物に摂餌量低下(妊娠6-8日、妊娠17-20日)、体重減少(妊娠15、17、20日)、および体重増加抑制(妊娠15-20日、妊娠0-20日)がみられた。胎児検査で投与に関連した所見はみられず、出生児にも異常はみられなかった。母動物に対する無影響量は120 mg/kgで、胎児および出生児に対する無影響量は450 mg/kgであった。10) (Hellwig, 1997)

1群10匹(対照群のみ34匹)のLong-Evansラットにモノエタノールアミン 0、50、300、500 mg/kgを蒸留水に溶解して、妊娠6日から妊娠15日まで連日強制経口投与した。500 mg/kg投与群で、興奮および自発運動量の減少、続いて嗜眠と反応性低下が認められたが、投与後1時間以内に回復した。11) (Mankes, 1986)

Mankesらの胎児データの処理方法は一般的なものと異なるため、Knaakらは、胎児データを標準的な集計単位である「腹単位」で集計し、一般的な分類に基づいて各所見に対する「異常/変異」の判定を行った。その結果、胎児毒性を示す集計結果は得られなかったことから、モノエタノールアミンは胎児毒性を有さないものと判断した。12)(Knaak, 1997)

1群30-45匹のCD系妊娠ラットにモノエタノールアミン 0、10、25、75、225 mg/kg相当を、妊娠6日から妊娠15日まで連日6 hr/dayの条件で経皮暴露した。225 mg/kgの暴露で、母動物にモノエタノールアミンによる皮膚刺激性および体重増加抑制がみられた。胎児においては何ら毒性がみられなかった。母動物に対する無影響量は75mg/kgであり、胎児および出生児に対する無影響量は225 mg/kgと結論された。13) (Liberacki, 1996)

ウサギ
1群15匹のニュージランドホワイト系妊娠ウサギにモノエタノールアミン 0、10、25、75mg/kg相当を、妊娠6日から妊娠18日まで連日6 hr/dayの条件で経皮暴露した。
25および75 mg/kgの暴露で、母動物にモノエタノールアミンによる皮膚刺激性がみられた。75 mg/kgの暴露で統計学的有意ではないものの体重増加抑制がみられた。胎児においては何ら毒性がみられなかった。母動物に対する無影響量は10 mg/kgであり、胎児および出生児に対する無影響量は75 mg/kgと結論された。13) (Liberacki, 1996)


局所刺激性
ウサギにモノエタノールアミンを0.005 mL点眼し、24時間後に点眼眼を観察したところ、1%液では重篤な障害性はみられなかった。5 %または100 %液の点眼では、角膜上皮障害が角膜全体の75%までを覆う程度の重篤な障害性が認められた。14) (Carpenter, 1946)


その他の毒性
該当文献なし.


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
46歳のアトピーの既往のない男性が両手の湿疹で来院した。患者が働いていない時は、数週で湿疹は回復する。職業性接触皮膚炎を疑い、切削液を0.1、1、10%水溶液に調整し、パッチテストを実施したところ、20分後は全濃度陰性、1日後は10%水溶液が陽性、2日後は1、10%水溶液が陽性、3日後は全濃度陽性であった。切削液に含まれる8成分のパッチテストを実施し、1%モノエタノールアミン、6%オレイルアルコール水溶液が陽性であった。残り5成分とエタノールは陰性であった。同じプロトコールで健常人ボランティア10名によるパッチテストを実施したところ、オレイルアルコールは全員陰性であったが、モノエタノールアミンは10名中1名で2日後、3日後に弱い陽性反応が見られた。15) (Patrick, 1995)

65歳男性が3.3%のモノエタノールアミンと数種の低毒性の成分を含むアルカリ性洗剤(pH 11.7)を約600mL自殺目的で摂取した。数回息が詰まるような症状を伴った嘔吐があり、摂取95分後に救急センターに搬送された。入院時、患者は喘息の既往はなかったが、肺からの喘鳴を伴う呼吸困難を訴えた。患者は腐食性食道炎と喘息の診断をされ、アルカリ性洗剤の吸引をされた。呼吸機能は悪化し続け、人工呼吸が必要とされた。その後の検査より、急性呼吸窮迫症候群と診断された。その後、急性呼吸窮迫症候群が進行し、入院4日目に死亡した。16) (Kamijo, 2004)


引用文献
1) Cosmetic Ingredient Review (CIR) Expert Panel Final report on the safety assesment of triethanolamine, diethanolamine and monoethanolamine. Cosmetic Fragrance Ingredient Review J Am Coll Toxicol 1983; 2: 183-235

2) BIBRA Ethanolamine toxicity profile, 2nd edition British Industrial Biological Research Association Carshalton Survey, U.K. 1993

3) UCC (Union Carbide Corporation) Monoethanolamine: Acute toxicity and primary irritancy studies. Project 51-86 Union Carbide Corporation Bushy Run Research Center, Export, PA, 1988

4) Smyth H. F. Range finding Toxicology data: List IV A.M.A Arch Ind Hyg Occup Med 1951; 4: 119-122

5) Weeks M. H. et al. The effect of continuous exposure of animals to ethanolamine vapor Am Ind Hyg Assoc J 1960; 21: 374-381

6) Dean D. J. et al. Genetic toxicology testing of 41 industrial chemicals. Mutat Res 1985; 153: 55-77

7) Hedenstedt A. Mutagenicity screening of industrial chemicals: seven aliphatic amines and one amide tested in the salmonella/microsomal assay (abstract) Mutat Res 1978; 53: 198-199

8) Arutyunyan R. M. et al. Tsitol Genet 1987, 21: 450-454

9) Inoue K. et al. Mutagenicity tests and in vitro transformation assays on triethanol amine Mutat Res 1982; 101: 305-313

10) Hellwig J. et al. Evaluation of the pre-, peri-, and postnatal toxicity of monoethanolamine in rats following repeated oral administration during organogenesis Fundam Appl Toxicol 1997; 40: 158-162

11) Mankes R. F. Studies on the embryopathic effects of ethanolamine in Long-Evans rats; preferential embryopathy in pups contiguous with male siblings in utero Teratog Carcinog Mutagen 1986; 6: 403-417

12) Knaak J. B. et al. Toxicology of mono-, di- and triethanolamine Rev Environ Contam Toxicol 1997; 149: 1-86

13) Liberacki A. B. et al. Evaluation of the developmental toxicity of dermally applied monoethanolamine in rats and rabbits Fundam Appl Toxicol 1996; 31: 117-123

14) Carpenter C. P. et al. Chemical burns of the rabbit cornea Am J Opthalmol 1946; 29: 1363-1372

15) Patrick K. Occupational allergic contact dermatitis from oleyl alcohol and monoethanolamine in a metalworking fluid Contact Dermatitis 1995; 33: 273

16) Kamijo Y. et al. Acute respiratory distress syndrome following asthma-like symptoms from massive ingestion of a monoethanoleamine-containing dergent Vet Human Toxicol 2004; 46: 79-80




   



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