日本医薬品添加剤協会 |
和名 ミリスチン酸イソプロピル 英文名 Isopropyl Myristate CAS 110-27-0 (link to ChemIDplus) 別名 IPM,イソプロピルミリステート,Isopropylis myristas,Tetradecanoic acid 1-methylethyl ester 収載公定書 薬添規(JPE2018), 外原規(2006) USP/NF(27/22) EP(5) 用途 可塑剤,基剤,懸濁(化)剤,光沢化剤,軟化剤,乳化剤,賦形剤,分散剤,溶剤,溶解剤,溶解補助剤 ■JECFAの評価 (link to JECFA) 香料添加剤として使用した場合の現状の摂取量では,安全性に関する懸念はない。1日許容摂取量(ADI)は推定できず規定していない。 ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ■遺伝毒性 突然変異試験 ミリスチン酸イソプロピルの遺伝毒性をサルモネラ5菌株(TA98,TA100,TA1535,TA1537,TA1538)を用いたsalmonella/microsome assay (エームス試験)により評価した。代謝活性化の有無に関わらず50mcg/plateでの遺伝毒性は陰性であった。4) (Blevins et al., 1982) ■がん原性 マウス 1群50例の7週齢雌性Swissマウスの刈毛した背部に10,50あるいは100%ミリスチン酸イソプロピル0.02mLを週2回,動物が斃死するまでの10-110週間滴下した。10及び50%ミリスチン酸イソプロピル群の各1例の背部皮膚,10%群の1例の腹部皮膚,50%群の1例の眼瞼に腫瘍がみられた。しかし,腫瘍の発生頻度に無処置群(n=150)あるいは溶媒群(アセトン,n=50)と有意差はみられなかった。5) (Stenback et al., 1974) 50%ミリスチン酸イソプロピル(溶媒:イソプロピルアルコール)は, 0.15%ベンゾ[a]ピレンのマウス皮膚に対する発がん作用を有意に増強した。3) (Anonymous, 1982) ウサギ 1群5例の8週齢ニュージーランドホワイト種ウサギの左耳介内側に10,50あるいは100%ミリスチン酸イソプロピル0.02mLを160週間塗布した。反復塗布による生存率の低下あるいは局所変化はみられず,また適用部位を含めた各組織に腫瘍は認められなかった。6) (Stenback, 1977) ■生殖発生毒性 (link to DART) ■局所刺激性 マウス 雄性白色マウスを用いて皮膚刺激性試験を実施した。週1回の休薬を設け28日間刈毛した背部皮膚に100%ミリスチン酸イソプロピルを閉鎖塗布(1.5×1.5インチ)し,塗布部位の肉眼的観察をするとともに塗布開始1,2,3,4週目,塗布期間終了後1,2週目に各2例の塗布部位の皮膚を剥離し,病理組織学的検査を実施した。その結果,ミリスチン酸イソプロピルの皮膚刺激性が認められ,肉眼的には紅斑が発現し,その後苔蘚化し皮膚亀裂が生じた。組織学的には,表皮肥厚,錯角化,角化症,巣状腐食,巣状出血がみられた。なお,塗布部位の変化は塗布期間中に回復する傾向が窺われた。7) (Fitzgerald et al., 1968)。 ウサギ ニュージーランドホワイト種ウサギを用いて皮膚刺激性試験を実施した。刈毛した背部皮膚に100%ミリスチン酸イソプロピル原液を1日2回2週間閉鎖塗布(2×3インチ)し,塗布開始1,2週目,塗布期間終了後1,2週目に各1例の塗布部位の皮膚を剥離し,塗布部位の肉眼的観察をするとともに病理組織学的検査を実施した。その結果,マウスと同様の刺激性が認められた。塗布部位の変化は休薬により経時的に回復した。7) (Fitzgerald et al., 1968) 10例のニュージーランドホワイト種ウサギを用いて皮膚刺激性試験を実施した。刈毛した背部皮膚(4ヵ所/匹)にエタノールで調製した100-2%ミリスチン酸イソプロピル85,23,6.3,1.7mg/cm2(8ヵ所/用量)を24時間間隔で1-5日間,23時間閉鎖塗布(20×20mm)し,適用部位の紅斑と浮腫の程度をFHSA(Draize)スケールで評価した。1.7mg/cm2群では明確な紅斑,6.3mg/cm2群では中等度の紅斑,85,23mg/cm2群では中等度−重度の紅斑がみられた。8) (Campbell et al., 1981) 刈毛したウサギ42例の背部皮膚に100%ミリスチン酸イソプロピルを3日間塗布(2×2インチ)した。塗布部位では浮腫,重篤な紅斑,鱗屑がみられた。3) (Anonymous, 1982) 5例の白色ウサギの腹部皮内にミリスチン酸イソプロピル0.3mL投与したが,刺激性はみられなかった。3) (Anonymous, 1982) モルモット 腹部を刈毛したモルモット3例を体温に調節したミリスチン酸イソプロピル0.5%分散液に1日4時間,3日連続腋窩部まで浸漬した。最終浸漬2日後に腹部皮膚の変化を10段階にスコアー化した(10:正常,1:最も重篤な皮膚反応)。各動物の反応はスコアー8-7で,中等度の鱗屑,軽度のふけがみられた。3) (Anonymous, 1982) ■その他の毒性 抗原性 雄性モルモットを用い, 0.1%ミリスチン酸イソプロピル懸濁液の皮内投与よる皮膚感作性試験を行った。ミリスチン酸イソプロピルに感作性はみられなかった。3) (Anonymous, 1982) ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) 刺激性 皮膚刺激性:12名の健常成人男子を用いて皮膚刺激性試験を実施した。背部皮膚(4ヵ所/匹)にエタノールで調製した100-2%ミリスチン酸イソプロピル85,23,6.3,1.7mg/cm2を24時間間隔で1-4日間,23時間閉鎖塗布(20×20mm)し,適用部位の紅斑と浮腫の程度をFHSA(Draize)スケールで評価した。何れの群においても軽微な紅斑がみられた。8) (Campbell et al., 1981) 皮膚一次刺激性:100%ミリスチン酸イソプロピルを15名に24時間閉塞塗布したが,刺激性はみられなかった。3) (Anonymous, 1982) 皮膚一次刺激性:ワセリンで調製した20%ミリスチン酸イソプロピルを48時間閉塞塗布したが,刺激性はみられなかった。3) (Anonymous, 1982) 皮膚累積刺激性:100%ミリスチン酸イソプロピルを25名に21日間連日塗布した。ミリスチン酸イソプロピルに軽微な刺激性がみられたが,その程度はベビーオイルより弱いものであった。3) (Anonymous, 1982) 感作性 感作性:Kligman Maximization法によりワセリンで調製した20%ミリスチン酸イソプロピルの感作性を25名で評価したが,感作性はみられなかった。3) (Anonymous, 1982) 感作性:ワセリンで調製した20%ミリスチン酸イソプロピル(8117名)あるいは10%ミリスチン酸イソプロピル(4554名)をパッチテストで評価した。何れの群においても8名(20%ミリスチン酸イソプロピル群:0.099%,10%ミリスチン酸イソプロピル群:0.18%)で陽性反応がみられた。9) (Uter, 2004) ■引用文献 1) Lewis R.J. Sax's Dangerous Properties of Industrial Materials. 9th ed. Volumes 1-3. New York, NY: Van Nostrand Reinhold. 1996: 1990 2) Platcow EL, Voss E. A study of the adaptability of isopropyl myristate for use as a vehicle for parenteral injections. J. Am. Pharm. Assn. 1954; 43: 690-92 3) Anonymous. Final report on the safety assessment of myristyl myristate and isopropyl myristate. J. Am. Coll. Toxicol. 1982; 1: 55-80(link to the Journal) 4) Blevins RD, Taylor DE. Mutagenicity screening of twenty-five cosmetic ingredients with the salmonella/microsome test. J. Environ. Sci. Health. 1982; A17: 217-39 5) Stenback F, Shubik P. Local of toxicity and carcinogenicity of some commonly used cutaneous agents. Toxicol. Appl. Pharmacol. 1974; 30: 7-13 6) Stenback F. Local and systemic effects of commonly used cutaneous agents: Lifetime studies of 16 compounds in mice and rabbits. Acta. Pharmacol. et Toxicol. 1977; 41: 417-31 7) Fitzgerald JE, Kurtz SM, Schardein JL, Kaump DH. Cutaneous and parenteral studies with vehicles containing isopropyl myristate and peanut oil. Toxicol. Appl. Pharmacol. 1968; 13: 448-53 8) Campbell RL, Bruce RD. Comparative dermatotoxicology. I. Direct comparison of rabbit and human primary skin irritation responses to isopropylmyristate. Toxicol Appl Pharmacol. 1981; 59: 555-63 9) Uter W, Schnuch A, Geier J, Lessmann H. Isopropyl myristate recommended for aimed rather than routine patch testing. Contact Dermatitis. 2004; 50: 242-44 |メニューへ| |
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