日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 マクロゴール400
英文名 Macrogol 400

CAS 25322-68-3 (link to ChemIDplus),  (link to JAN DB), (link to JANe DB)
別名 ポリエチレングリコール400 (110357)、Polyethylene glycol 400、PEG 400
収載公定書  局方(JP17),  外原規(2006) (ポリエチレングリコール400)  USP/NF (28/23) (Polyethylene glycol)  EP(5)(Macrogols) 
用途 安定(化)剤,界面活性剤,可塑剤,滑沢剤,基剤,結合剤,光沢化剤,コーティング剤,湿潤剤,乳化剤,粘着剤,粘着増強剤,賦形剤,粘稠剤,崩壊剤,溶剤,溶解補助剤

JECFAの評価 (link to JECFA)
(分子量10000以下のマクロゴール全体として)
ラットにおける無毒性量; 混餌投与で20,000ppm (2%)、これは1,000mg/kg bwに相当する。
ヒト1日許容摂取量(ADI)は0-10mg/kg body weightである。


単回投与毒性性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 経口 35.6 g/kg Smith et al., 1941  1)
マウス 腹腔内 12.9 g/kg Union Carbide, 1965 1)
ラット 経口 43.6 g/kg Union Carbide, 1965 1)
ラット♂ 経口 32.6 g/kg Smith et al., 1941  1)
ラット♀ 経口 32.5 g/kg Smith et al., 1941  1)
モルモット♀ 経口 21.3 g/kg Smith et al., 1941  1)
ウサギ♂ 経口 22.3 g/kg Union Carbide, 1965 1)


難溶性化合物の溶解性改善のために、毒性実験に使用される種々の溶媒のLD50をマウス及びラットで検討した。試験した溶媒はethanol、dimethylacetamide、dimethylformamide、dimethylsulfoxide、glycerine、N-methylpyrrolidone、polyethylene glycol 400 (PEG 400)、1,2- propandiol 及びTween 20である。これらの溶媒を1群雌雄各5匹の動物に投与した。用量は少なくとも3用量がLD16とLD84に含まれるようにし、LD50を算出した。その結果、薬理や毒性の実験に使用するこれらの溶媒は、LD50の1/4以下の用量で用いるべきである。でなければ被検化合物による死亡と溶媒による死亡との区別が困難になる。2) (Bartsch et al., 1976)

3種の近交系マウス(CD2F1, B6D2F1, C57BL/6N)を用いて、dimethyl sulfoxide(DMSO)、 polyethylene glycol 400 (PEG 400)、 dimethylformamide(DMF)、ethanol(EtOH)、benzyl alcohol (BeOH) の静脈内投与による急性毒性実験を行い、in vitroの溶血能、血液凝固能と比較した。各溶媒の投与量は、DMSO 1.0-5.66mL/kg, PEG 400 2.0-8.0mL/kg, DMF 1.0-4.0mL/kg, EtOH 0.75-4.24mL/kg, BeOH 0.025-0.4mL/kgである。いずれも最低用量は安全用量であり、最高用量は半数以上が死に至る用量である。3系統のマウス間で急性毒性はDMSO(CD2F1系統でより毒性は弱い)、BeOH及びEtOH(B6D2F1でより弱い)を除き大差なかった。In vitroの結果を加味すると、BeOH(in vivoで他の溶媒より毒性が強い)及びDMSOの使用は避けるべきであり、PEG 400、EtOH又はDMFの使用を示唆している。結論として、これらの溶媒は水で希釈することにより血液への適合性を高め、また、今回用いた最低用量を超えない範囲での使用が推奨される。3) (Montaguti et al., 1994)


反復投与毒性(link to TOXLINE)
ラット
雌雄各5匹のラットに種々のpolyethylene glycol (PEG)を、それぞれ0, 2, 4, 8, 16および24%の濃度で90日間混餌投与した。死亡率、摂餌量、体重増加、肝・腎の重量及び組織学的検索を行った。それらの概要は以下の通りである。1) (Smyth et al., 1955)

ポリプロピレングリコール2000の主な類似体のLD50
化合物 無作用量 有害作用 発現用量
PEG 200 8 % 肝重量増加 (16 %)
PEG 300 4 % 体重減少 (8 %)
PEG 400 8 % 体重減少 (16 %)
PEG 600 8 % 体重減少 腎重量増加 (16 %)
PEG 1000 8 % 体重減少 (16 %)
PEG 1500 4 % 体重減少 (8 %)
PEG 1540 4 % 体重減少 (8 %)
PEG 4000 4 % 体重減少 (8 %)
PEG 6000 16 % 体重減少 腎重量増加 (24 %)


1群雌雄各10匹のFischer-344系ラットにpolyethylene glycol 400 (PEG 400) を1.0、2.5及び5.0mL/kg(夫々1.1、2.8及び5.6g/kgに相当)、週5日間、13週間、胃管を用いて経口投与し、腎毒性を中心に評価した。対照群には5.0mL/kg の水を投与した。別に雌雄各10匹の6週間回復群を設けた。PEG 400に起因する死亡例はなく、血液学的及び臨床化学的検査に異常は見られなかった。2.5mL/kg以上の投与群では雌雄共に軟便が見られたが、これはPEG 400の緩下作用による。これらの中及び高投与群では摂餌量及び体重増加に軽度の低下が見られたが、これも小腸内にPEG 400が大量存在することによる物理的なものと思われる。摂水量の増加はPEG 400吸収に伴う血液浸透圧の上昇によるものだろう。尿濃度の増加、尿pHの低下は少なくとも部分的にはPEG 400の吸収・代謝・排泄に関与する減少と思われる。多くの群で認められた腎重量の増加(絶対重量and/or相対重量)はPEG 400の浸透圧効果又は代謝物によるものであろう。回復実験群においても雌では腎相対重量の軽度上昇が見られたが原因は不明である。組織の顕微鏡的観察では、腎や膀胱に変化は認められなかった。しかし、可逆性の軽度の腎毒性が2.5mL/kg群の雄及び5.0mL/kg群の雌雄で見られたが、これは蛋白、ビリルビン濃度の上昇、腎脈管系細胞の所見及びN-acetyl-β-D-glucosaminidase活性に基づく。4) (Hermansky et al., 1995)

イヌ
イヌに、PEG 400, PEG 1540又はPEG 4000を2%濃度で1年間混餌投与して何ら異常は認められなかった。1) (Smith et al., 1955)

PEG400,1540及び4000をイヌに1年間混餌投与した。1群4例のイヌ(フォックスハウンド(雄1例),ドーベルマン(雌雄各1例),ビーグル(雄1例))に2%濃度にPEG400を混合した飼料を1年間投与した。1群4例のイヌ(ビーグル(雄4例),コッカースパニエル(雌雄各3例)から無作為抽出)に, 2%濃度にPEG1540もしくは4000を混合した飼料を1年間投与した。いずれも,標準飼料供与群を対照とした。体重,血液学的検査,ブロムスルファレイン試験,プロトロンビン時間,剖検,病理組織学的検査に異常は認められなかった。5) (Smyth et al., 1955)



遺伝毒性 (link to CCRIS), (link to GENE-TOX)


がん原性
ラットに、PEG 1540,及びPEG 4000を4%濃度で2年間混餌投与したが、何ら影響はみられなかった。PEG 400の2%混餌投与においても影響はみられなかった。これらのラットに更に高濃度のPEGを与えた場合には、非特異的に成長に多少の影響がみられ、肝に軽度の混濁腫脹(cloudy swelling)がみられた。1) (Smyth et al., 1955)


生殖発生毒性 (link to DART)
本試験では3種類の新規の媒体候補品と当研究室で通常使用している0.5% methylcelluloseとを比較した。妊娠SD系ラット及び妊娠New Zealand Whiteウサギを1群10例4群に割り付けた。ラットでは妊娠6〜17日に、ウサギでは妊娠6〜18日に、0.5% methylcellulose、PEG 400、cremophor及び0.1% carboxy-methylcelluloseの1mL/kg(ラット)もしくは2 mL/kg(ウサギ)を強制経口投与し、ラットでは妊娠21日、ウサギでは妊娠28日に帝王切開した。被検物質の濃度はPEG 400、cremophor及びmethylcelluloseは0.5%、carboxy-methylcelluloseは0.1%とした。被検物質投与に関連した死亡はみられなかった。ウサギでは、PEG 400、cremophor及びcarboxy-methylcellulose群で軟便が観察された。体重、摂餌量及び生殖パラメーター(黄体数、着床数、吸収胚数)に変化はみられなった。軽度の奇形の発生頻度にわずかな群間の差が認められたが、外形、内臓及び骨格検査の結果を考慮すると、いずれも生物学的に意義のあるものではなかった。今回の結果は、新規化合物の毒性試験において、これらの媒体の使用を推奨するものであった。6) (Gupta et al., 1996)

1群10例の妊娠SD系ラットの妊娠6〜17日に0.5% methylcellulose,PEG 400,cremophor及び0.1% carboxy-methylcelluloseの1mL/kgを強制経口投与し,妊娠21日に帝王切開した。被検物質投与に関連した一般状態の異常はなく、死亡もみられなかった。体重、摂餌量及び生殖パラメーター(黄体数、着床数、吸収胚数)に差は認められなかった。対照群と比較して、外形及び内臓奇形の群間の発生率に生物学的に有意な差はみられなかった。これらの結果は、新化合物の安全性試験におけるこれらの媒体の使用を支持するものである。7) (Gupta et al., 1996)


局所刺激性
ウサギ
20%に生理食塩水で希釈したPEG200,300及び400を6例の白色ウサギの背部及び腹部皮膚に4時間適用した.適用中及び適用24時間後に刺激性を示唆する変化は認められなかった。8) (Smyth et al., 1945)

PEG200,300及び400の2 mL/kg/日を,6例の白色ウサギの腹部皮膚に週5日,18週間にわたり投与した。死亡はみられず,体重に変化は認められなかった。副腎,腎臓,肝臓,脾臓,精巣の病理組織学的検査において異常は認められなかった。投与部皮膚に変化はみられなかった。8) (Smyth et al., 1945)


その他の毒性
カルバマゼパム、クロナゼパムのような抗癲癇薬は、固形製剤ではバイオアベイラビリティが低く、水に不溶である。このような薬剤を動物実験で使用する際には溶剤としてしばしばアルコールが使用されるが、2級及び特に3級アルコールには何らかの抗痙攣作用を有する可能性がある。そこでpolyethylene glycol 400 (PEG 400) の有効性(抗痙攣作用)及び毒性について評価した。サルを用い、水酸化アルミニウムで痙攣を惹起し、PEG 400を1mL/hrの速度で3-4週間静注した。60%濃度のPEG 400では痙攣発作の頻度を有意に抑制するが重篤な副作用も発現した。これらの結果は、抗痙攣薬の実験ではPEG 400又はこれに類似した溶媒を用いる時には評価を混同する可能性があることを示唆している。8) (Lockard et al., 1979)


ヒトにおける知見  (link to HSDB)
感作性に関して、Smithらの初期の報告では、或る種のpolyethylene glycolでモルモットや少数例のヒトで皮膚感作性のあること観察している1) (Smith et al., 1950)。 その後の報告では、最近製造のPEGには刺激作用、感作性のないことが示されている1) (Carpenter et al., 1971)。しかし、更に最近のFischerらの報告によると、4名の患者で低分子量液状PEGの局所投与によりアレルギー反応を示したことを報告している。そのうちの2名はPEG 400に対する即時型の蕁麻疹であり、他の2名はそれぞれPEG 200及び PEG 300による遅発性のアレルギー性湿疹であった。1) (Fischer, 1978)


引用文献
1) WHO Food Additives Series No.14 Twenty-third Report of the Joint FAO/WHO Expert Committee on Food Additives, Geneva, Wld Hlth Org. techn. Rep. Ser., 1980, No.648  (link to WHO DB)

2) Bartsch W, Sponer G, Dietmann K, Fuchs G. Acute toxicity of various solvents in the mouse and rat. LD50 of ethanol, diethylacetamide, dimethylformamide, dimethylsulfoxide, glycerine, N-methylpyrrolidone, polyrthylene glycol 400, 1,2-propandiol and Tween 20. Arzneimittelforschung. 1976; 26(8): 1581-3.

3) Montaguti P, Melloni E, Cavalletti E. Acute intravenous toxicity of dimethyl sulfoxide, polyethylene glycol 400, dimethylformamide, absolute ethanol. And benzyl alcohol in inbred mouse strains. Arzneimittelforschung. 1994; 44(4): 566-70.

4) Hermansky SJ, Neptun DA, Loughran KA, Leung HW. Effects of polyethylene glycol 400 (PEG 400) following 13 weeks of gavage treatment in Fischer-344 rats. Food Chem. Toxicol. 1995; 33(2): 139-49.

5) Smyth, H. F., Jr., Carpenter, C.P., and Well, C.S. The Chronic Oral Toxicology of the Polyethylene Glycols. J. Am. Pharm. Assoc. Sci. Ed. 1955. 44. 27-30.

6) Gupta U, Beaulieu J, Chapin HJ, Hagler AR, Hills-Perry P. Teratologic evaluation of alteranative vehicles: PEG 400, cremophor, carboxy-methylcellulose; comparisons with methylcellulose. Teratology 1996; 53(2): 111.

7) Gupta U, Beaulieu J, Hills-Perry P. Developmental toxicity testing of alteranative vehicles: PEG 400, cremophor, carboxy-methylcellulose; comparisons with methylcellulose. Toxicologist 1996; 30(1 Pt 2): 192.

8) Smyth, H. F., Jr., Carpenter, C.P., and Shaffer C.B. The Subacute Toxicity and Irritation of Polyethylene Glycols of Approximate Molecular Weights of 200, 300, and 400. J. Am. Pharm. Assoc. 1945. 34. 172-174.

9) Lockard JS, Levy RH, Congdon WC, DuCharme LL. Efficacy and toxicity of the solvent polyethylene glycol 400 in monkey model. Epilpsia. 1979; 20(1): 77-84.

参考
Fruijtier-Polloth C: Safety assessment on polyethylene glycols (PEGs) and their derivatives as used in cosmetic products. Toxicology. 2005 214(1-2) 1-38. Review.



   



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