和名 クロルヘキシジングルコン酸塩液 英文名 Chlorhexidine Gluconate
Solution
CAS (link to
JAN DB), (link to
JANe DB) 55-56-1 (Chlorhexidine) (link to
ChemIDplus), 18472-51-0 (Chlorhexidine Gluconate) (link to
ChemIDplus)
別名 グルコン酸クロルヘキシジン液 収載公定書 局方( JP17), 外原規( 2006) USP/NF(28/23)
EP(4)
用途 防腐剤,保存剤
■単回投与毒性:(Chlorhexidine) (link to
ChemIDplus),
(Chlorhexidine Gluconate) (link to
ChemIDplus)
観察機関 14日
動物種 |
投与経路 |
LD50(mg/kg体重) |
文献 |
マウス雄10匹 |
経口 静脈内 皮下 |
2515mg/kg 25mg/kg 637mg/kg |
1)(Case DE..,
1977) |
マウス雌10匹 |
経口 静脈内 皮下 |
2547mg/kg 24mg/kg 632mg/kg |
1)(Case DE..,
1977) |
ラット雄5匹 |
経口 静脈内 皮下 |
>3000mg/kg 21mg/kg >1000mg/kg |
1)(Case DE..,
1977) |
ラット雌5匹 |
経口 静脈内 皮下 |
>3000mg/kg 23mg/kg >1000mg/kg |
1)(Case DE..,
1977) | ■反復投与毒性:(Chlorhexidine)
(link to
TOXLINE), (Chlorhexidine Gluconate) (link to
TOXLINE) ラット ラットに125または158mg/kgのクロルヘキシジンを2年間投与した結果、観察された唯一の変化は腸間膜のリンパ節における巨大細胞の出現であった。腫瘍、その他の毒性の兆候はいずれの組織にも認められなかった。1) (Case DE.., 1977)
■遺伝毒性:(Chlorhexidine)
(link to
CCRIS)
■がん原性 該当文献なし
■生殖発生毒性:(Chlorhexidine)
(link to
DART), (Chlorhexidine Gluconate) (link to
DART)
ラット
60匹の妊娠ラットに対して、10,
25または50mg/kgのグルコン酸クロルヘキシジンを経口投与し、催奇形性を検討した。同産仔の大きさ、吸収、胚の発達、死産は対照群と変わりなかった。ラットの分娩前後の試験、生殖及び不妊試験においても50mg/kgのクロルヘキシジン投与の影響は認められなかった。1) (Case DE.., 1977)
■局所刺激性 該当文献なし
■その他の毒性 グルコン酸クロルヘキシジンの聴覚毒性を調べる目的で、12匹の猫の耳腔中間部にグルコン酸クロルヘキシジン溶液を局所塗布した後、スキャンと電子顕微鏡とを用いて蝸牛を観察した。試験動物の右耳には0.05%または2%クロルヘキシジン水溶液を、左耳は対照とし生理食塩水を1日おきに投与した。7日後に9匹の動物を、4週後に残り3匹を屠殺した。2%群ではコルティ器官の有毛細胞が退化し、有毛束が広範囲に消失しており、4週時には障害は更に進行していた。臨床用量である0.05%の濃度においても細胞内変化が見られた。本試験の結果、クロルヘキシジンを耳に臨床的に使用した場合、聴覚を失う可能性があることを示唆している。2)(Igarashi Y et al.,
1985)
■ヒトにおける知見:(Chlorhexidine)
(link to
HSDB) 誤用 白内障手術後にクロルヘキシジンを誤って眼内洗浄液として3例に使用した。3例中2例に重篤な角膜上皮細胞がみられ、角膜移植手術が必要であった。また、著明な虹彩萎縮、anteriorchamber
applanation及びretrocorneal
membrane等の影響がみられた。1例に眼内圧上昇がみられた。網膜及び視神経に影響はみられなかった。眼内洗浄へのクロルヘキシジンの使用は、眼への影響があり、医療過誤を避けるために、びんにマークをつけておくべきである。3)(Anders N et al.,
1977)
67歳男性、大腸がんのための大腸切除施行し、誤って0.8mgのグルコン酸クロルヘキシジンを静脈内に投与され、急性呼吸窮迫症候群が発現した。手術はすぐに中止した。3回の清交換にもかかわらず、呼吸不全は悪化した。3日目より開始した72時間の体外膜酸素療法により劇的に回復がみられた。患者は知的機能も完全に回復し、その後、大腸がんのための大腸切除術を施行した。4)(Ishigami S. et al.,
2001)
80歳女性が痴ほう症のため看護施設で、誤ってMaskin
(5%グルコン酸クロルヘキシジン含有)を約200mL飲んだ。その際、胃内容物を吸引したようであった。患者は近くの病院で気道確保のため気管内挿管し、血圧低下と急速な意識障害の悪化のため我々の治療室に移送された。集中治療にもかかわらず、12時間後に患者は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のため死亡した。グルコン酸クロルヘキシジンは、吸収されにくいとされているが、グルコン酸クロルヘキシジンの血清濃度は明らかに高かった。グルコン酸クロルヘキシジンは、消化管からではなく、吸引された後肺胞から吸収されたのではないかと思われる。グルコン酸クロルヘキシジンは、吸引した場合、致命的なARDSを引き起こす可能性がある。5) (Hirata K et al., 2002)
その他 局所麻酔で手術をしていて,閉創前に0.05%グルコン酸クロルヘキシジンで創面の消毒を行なったところ,その20〜30秒後に心拍数が低化し,血圧は測定不能,呼吸停止をきたしたが,アンビューバッグによる呼吸補助と酸素投与により,3分後に自発呼吸を認め,意識が戻った。6) (今沢 隆ら,
2003)
グルコン酸クロルヘキシジン1%水溶液のパッチテストを3年間で551例に行った。14例に重篤かつ明らかな反応が認められた。10例に、クロルヘキシジン製剤による足の静脈部はたは外傷部潰瘍治療期間中にを伴う重篤な皮膚炎が発現した。また4例に顔面または頭皮に皮膚感染症が発現した。7) (Osmundsen PE..,
1982)
グルコン酸クロルヘキシジン1%水溶液のパッチテストを2061例に行った。48例(2.3%)に陽性反応がみられた。これらは、女性(1.9%)に比べ男性(3.2%)に多かった。また陽性反応は、足の湿疹(6.8%)、足の潰瘍(10.9%)の患者に多くみられた。パッチテストが陽性だった48例のうち14例にグルコン酸クロルヘキシジン0.01%または1%の再テストを行った。足潰瘍の患者1例のみが陽性であった。これらの所見は、「excited skin
syndrome」として知られている擬陽性反応が湿疹患者にみられることを示唆している。クロルヘキシジンの過敏反応は、とても低いが、足に湿疹または潰瘍のある患者では、さらに検査をする必要がある。8) (Bechgaard E et al.,
1985)
クロルヘキシジン製剤の局所塗布後に発現したアナフィラキシーショックの報告。患者の血清のpassive transfer
testでは、皮膚過敏性抗クロルヘキシジン抗体が認められた。またRASTでも抗クロルヘキシジンIgE抗体が検出された。クロルヘキシジン-HAS(ヒト血清アルブミン)を結合させたペーパーディスクは有意にIgE抗体と結合した。さらに、クロルヘキシジン製剤の局所塗布後にショック反応がみられた、他の7例からのすべての血清に高RASTが認められた。グルコン酸クロルヘキシジンおよびクロルグアニドは用量依存的にこの反応を抑制した。クロルヘキシジン局所塗布後のショック反応は、抗クロルヘキシジン抗体によるものであり、クロルヘキシジンとクロルグアニドが同じ抗原決定基を共有していることを示唆している。9) (Ohtoshi T et al.,
1986)
グルコン酸クロルヘキシジン溶液の局所塗布により蕁麻疹、呼吸困難、アナフィラキシーショックが発言した患者6例の報告。皮内テスト、スクラッチテストパッチテストでグルコン酸クロルヘキシジンがT型過敏症の原因物質であることが確認された。生命に危険を及ぼす有害反応を予防するためにグルコン酸クルルヘキシジン0.05%での傷への使用は重大な問題であり、グルコン酸クロルヘキシジンの粘膜への塗布はすべきでない。10) (Okano
M., 1989)
グルコン酸クロルヘキシジンマウスリンスの過量で口腔粘膜に変化がみられた報告。粘膜変化は、一般的に知られている粘膜障害とは異なり、患者は粘膜の肥厚、臨床的には白斑症に類似していた。粘膜変化は、用量を減らすことにより消失した。11) (Kenrad B., 1990)
14歳女性において、クロルヘキシジンにより遅延型及び即時型アレルギーの併発がみられた。患者は、ニキビ治療薬を長期間使用後、顔に湿疹様反応が発現した。前腕に行ったROAT試験では陽性であった。6ヵ月後、グルコン酸クルルヘキシジンによる皮膚洗浄後に、蕁麻疹様発疹が発現し失神した。スクラッチテストでは、0.05%グルコン酸クロルヘキシジンと0.01%酢酸溶液に陽性であった。また、30歳弾性が1%グルコン酸クロルヘキシジン含有デンタルジェル使用後にアナフィラキシーショックを起こした例がある。12) (Thune
P., 1998)
45歳女性、アカントアメーバー角膜炎の疑いで0.02%グルコン酸クロルヘキシジンとpropamidine0.1%点眼液による治療を行った。8週間の治療後、角膜上皮組織のほぼ全部がなくなり、潰瘍性角膜炎が進行し角膜移植を要した。角膜ボタン(corneal
button)の組織病理学的検査では、潰瘍とボウマン膜欠損、細胞消滅を伴う角膜細胞欠損、炎症細胞の付着を伴う内皮細胞の欠損がみられた。これらの組織病理学的所見は、Hibiclens角膜炎にみられたものと同じであった。Hibiclensは、クロルヘキシジンを4%含有する洗剤である。グルコン酸クロルヘキシジン0.02%の局所使用は、潰瘍性角膜炎を進行させた。13) (Murthy
S et al., 2002)
■引用文献 1) Case DE., J Clin Periodont. 1977; 4: 66-72 2) Igarashi Y et al., Arch Otorhinolaryngol 1985; 242(2): 167-76 3)
Anders N et al., 1997; 23(6): 959-62 4) Ishigami S. et al., J toxicol Clin Toxicol. 2001; 39(1): 77-80 5) Hirata K., Vet
Hum Toxicol. 2002; 44(2): 89-91 6)
今沢 隆ら:日形会誌, 23; 582-588, 2003 7) Osmundsen PE., Contact Dermatitis 1982; 8(2):
81-3 8) Bechagaard E et al., Contact
Dermatitis. 1985; 13(2): 53-5 9) Ohtoshi
t et al., Clin Allergy 1986; 16’(2): 155-61 10) Okano M et al., Arch Dermatol.
1989; 125(1): 50-2 11) Kenrad B., Tandlaegebladet. 1990; 94(12): 489-91 12)
Thune P., Tidsskr Nor Laegeforen 1998; 118(21): 3295-6 13) Murthy S
et al., Cornea. 2002;21(2):237-9
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