日本医薬品添加剤協会 |
和名 カロチン液 英文名 Carotene Solution CAS 7235-40-7 (link to ChemIDplus) 別名 収載公定書 食添(7) 用途 着色剤 ■JECFAの評価 Algae (link to JECFA), Natural (link to JECFA), Vegetable (link to JECFA) 第18回会議 (1974);成分規格:第31回会議(1987)2)及び第59回会議 (2002)3),一日許容摂取量(ADI) 5mg/kg体重、と評価されている。 その後実施・公表されたβ−カロテンの動物およびヒトでの試験結果を含めて概要を記す。但し、化学発がん物質の変異原性ならびに発がん性に対するβ−カロテンの影響に関する研究(抑制的に作用するとの知見が多い)、ならびに喫煙による肺がん発症へのβ−カロテン投与の影響に関する研究(期待と異なり、肺がんの発症をむしろ促進させるとの知見がある)については掲載を省略した。 ■単回投与毒性
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット β−カロテンはラットおよびイヌにおける数種の短期動物試験においてヒト試験と同様の結果が得られた(ビタミンA過剰症は認められない)。1) SDラット(雌雄)を用いたβ−カロテンの混餌投与(250, 375および500mg/kg体重/日)による4週間の反復投与試験において臨床症状、血液・血液生化学および尿検査に異常は観察されなかったが、解剖時に赤色糞および500mg/kg体重/日群で相対肝および腎重量の増加が認められた。糞の着色および臓器重量の変化は投与終了後2週間以内に回復した(Woutersen. et al, 1999)。4) Wistarラット(雌雄1群16匹)を用いたβ−カロテンの混餌投与(250, 500および1000mg/kg体重/日)による90日間の反復投与試験において臨床症状、血液・血液生化学および臓器重量に異常は観察されなかった。解剖時に多くの雌の投与群において橙色若しくは黄色の脂肪組織若しくは肝臓を観察したが、投与終了後は回復した。病理組織学的異常は認められなかった(Woutersen. et al, 1999)。4) イヌ ビーグルイヌを用いたβ−カロテンの混餌投与(0, 50, 100および250mg/kg体重/日による1週間の反復投与試験が実施された。1群8頭のうち2頭は、投与後52週において途中計画屠殺に供し、3頭は88〜104週まで検体投与を中止して回復性を観察した。摂餌量、飲水量、血液・血液生化学、尿検査、眼科学的検査および臓器重量において投与に関連した変化は認められなかった。全ての検査時期において検体投与群で肝表面に橙色斑が認められた。病理組織学的検査では、肝臓の伊東細胞に脂肪と考えられる軽度な空胞化が52週時に投与群で散見された。104週後においても各群で認められたが、用量依存性は認められなかった。また大部分の投与動物の肝臓クッパー細胞に褐色色素を入れる空胞化が観察され、休薬による回復は認められなかった。しかしこれらの群では、肝臓の変性など肝障害は認められなかった(Heywood. et al, 1985)。5) ■遺伝毒性 (link to CCRIS), (link to GENE-TOX) in vitro β-カロテンはS. typhimuriumのTA98他5株を用いた復帰変異試験において、代謝活性系の有無にかかわらず陰性の結果が得られた。6) β-カロテンはチャイニーズ・ハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験において偽陽性6)若しくは陰性の結果が得られた。8) 天然由来のβ-カロテンはヒト培養リンパ球細胞を用いた小核試験及び染色体異常試験では、いずれも陰性の結果が得られ、合成品では小核出現頻度が用量依存的に増加する傾向が見られた。但し、その出現頻度は0.2%と軽微であった)。10) in vivo β-カロテンのマウス骨髄染色体異常試験では、200 mg/kgの強制経口投与で陰性の結果が得られた。また、マウス骨髄小核試験では、飲水による2.5 mg/dayの15日間投与及び100 mg/kgの7日間混餌投与で、いずれも陰性の結果が得られた。11) ラットにβ-カロテンを飲水混入(0.15 %)で2、4、6、8週間与えた後、脾臓T-リンパ球の突然変異を調べた試験(6-チオグアニン抵抗性を指標として)において、2週間投与で対照より若干高い値が得られたが、4〜8週間投与ではいずれも差はなく陰性と判断された。12) ■がん原性 (link to CCRIS) ラット SDラット(雌雄1群60匹)を用いたβ−カロテンの混餌投与(250, 500および1000mg/kg体重/日、ほか、無処置対照群、溶媒対照群(水分散性のマイクロカプセル))による雄116週間、雌114週間の慢性毒性・発がん性併合試験が実施された。溶媒対照群を含めて各群の増体重は無処置対照群に較べて低かった。解剖時、血液・血液生化学および眼科学的検査に異常は観察されなかった。解剖時に橙色若しくは黄色の被毛、脂肪組織を呈する個体が1000mg/kg群でほとんどで、500mg/kg群では少数例認められたが、腫瘍の検索を含めた病理組織学的検査において投与に関連する変化は認められなかった。(Heywood. et al, 1985)。5) マウス CD-1マウス(雌雄1群60匹)を用いた混餌投与(100, 250, 500および1000mg/kg体重/日、ほか、無処置対照群、溶媒対照群(水分散性のマイクロカプセル))による慢性毒性・発がん性併合試験が実施された。中途死亡、ならびに最終的に屠殺した全ての個体について、肉眼的ならびに病理組織学的検査を行った。全ての検体投与群において赤色糞、大多数の個体において被毛の黄色化、胃内容物及び脂肪組織の橙色化が認められ、肝臓伊東細胞の空砲化が観察された。最高投与群を含めて、自然発生頻度を越える腫瘍の発生は認められなかった。(Heywood. et al, 1985)。5) ■生殖発生毒性 (link to DART) ウサギ 1群20匹のFullinsdorf系白色ウサギに妊娠7日から19日までβ−カロテンを連日反復経口(100, 200, 400mg/kg/日、β−カロテン結晶を菜種油に懸濁)投与した。対照群には菜種油を与えた。動物は毎日一般状態を観察し、試験開始日、投与期間中ならびに妊娠20日及び30日の各日に体重を測定した。母動物から卵巣のついた子宮を摘出して胎児を取り出し、体重を測定した後、孵卵器に入れ24時間の生存性をしらべた。次に、胎児の骨格、内臓および軟部組織を肉眼観察した後安楽死せしめ、骨格観察(X線撮影及び骨格染色)した。脳はウイルソン法で異常の有無を観察した。その結果、検体400mg/kg/日まで、胚胎児毒性ならびに催奇形性は認められなかった。また、母動物に対する毒性も認められなかった。5) ラット ラットにβ−カロテンを混餌(0, 100ppm)で110週間投与した4世代試験において、どの世代でも有害影響は認められなかった(Bagdon, et.al., 1960)。1) Fullinsdorf系白色ラットに妊娠6日から17日までβ−カロテンを混餌(250, 500, 1000mg/kg/日、β−カロテンを11.5%含むマイクロカプセルを餌に混入)投与した。対照として無処置及びマイクロカプセルのみ与えた群を設けた。妊娠21日に、各群の動物を帝王切開群と自然分娩群の二つに分けて、帝王切開による胎児観察ならびに自然分娩による分娩後23日までの母児観察を行った。その結果、1日当たり1000 mg/kgまで投与しても胚胎児毒性も催奇形性も認められなかった。母動物1000 mg/kg投与群は軽度な体重増加抑制が認められたが、哺育期間中いずれの用量群でも機能的な異常は認められなかった。5) ■局所刺激性 該当文献なし ■その他の毒性 該当文献なし ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) ヒトにβ−カロテンを長期間投与したが、ビタミンA過剰症*は認められなかった(Bagdon et al, 1960 ) 1) *ビタミンA過剰症: 急性症状: 腹痛、悪心、嘔吐、めまい慢性症状:全身の関節・骨の痛み、皮膚乾燥、脱毛、食欲不振、体重減少、肝脾腫など。被験者15人にβ−カロテン60mgを毎日3ヶ月与えた。血清カロテン濃度は128μg/100mLから1ヶ月後128μg/100mLに上昇したが、ビタミンAの濃度は変わりなかった。ビタミンA過剰の臨床症状は認められなかった(Greenberg, et al, 1959)1) 生のニンジンを毎日数ポンド摂取した人では皮膚の変色が見られ、乳(母乳)へのβ−カロテンの移行が認められた(Zbinden & Studer, 1958)。1) 骨髄性ポルフィリン症の患者にβ−カロテンを1日あたり20-180mg、一年間以上与えたが、有害な影響は認められず、血中ビタミンA濃度の異常な上昇も認められなかった。13) ■この資料の一部は食品・医薬品共用添加物の安全性研究の成果を引用した. ■引用文献 1) WHO Food Additive Series, No.6, 18th JECFA (1974) (accessed: Dec. 2006, ) 2) FAO Food Nutrition Paper 52, 31st JECFA (1987) 3) FAO Food Nutrition Paper 52, Add.10, 59th JECFA (2002) 4) Woutersen, R.A., et al., Safety Evaluation of Synthetic β-Carotene, Critical Reviews inToxicology, Vol.29(6), 515-542, 1999 5) Heywood, R., et al., Toxicity of Beta-Carotene, Toxicology, Vol.36, 91-100, 1985 6) 石館基ほか, 食品添加物の変異原性試験成績(その1)- 昭和54年度厚生省試験研究費による-変異原と 毒性、第12集, 82-90, 1980 7) Cozzi, R., et al., Ascorbic Acid and β-Carotene as Modulators of Oxidative Damage, Carcinogenesis, Vol. 18(1), 378-383, 1998 8) Salvador, D.M.F., et al., Effect ofβ-Carotene on Clastogenic Effects of Mitomycin C, Methyl Methansulphonate and Bleomycin in Chinese Hamster Ovary Cells, Mutagenesis, Vol. 9(1), 53-57,1994 9) Stich, H.F., et al., Relationship between Cellular Levels of β-Carotene and Sensitivity to Genotoxic Agents, Int. J Cancer, Vol. 38, 713-717, 1986 10) Xue, K.-X, et al., Comparative Studies on Genotoxicity and Antigenotoxiciy of NaturalandSynthetic β-Carotene Stereoisomers, Mut Res, Vol. 418, 73-78, 1998 11) Salvadori, D.M.F., et al., The Protective Effect ofβ-Carotene and Sensitivity to Genotoxicity induced by Cyclophosphamide, Mut Res, Vol. 265, 237-244, 1992 12) Aidoo, A., et al., In Vivo Antimutagenic Activity of Beta-Caotene in Rat Spleen Lymphocytes,Carcinogenesis, Vol. 16(9), 2237-2241, 1995 13) European Commission Scientific Committee on Food, Opinion on Food :The Safety of Use of Beta Carotene from all Dietary Sources, SCF/CS/ADD/COL/159 Final, 14 Sept. 2000 |メニューへ| |
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