日本医薬品添加剤協会 |
和名 ヒマシ油 英文名 Castor oil CAS 8001-79-4 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB) 別名 収載公定書 局方(JP17), 外原規(2006) USP/NF(27/22) EP(4) 用途 可塑剤,可塑剤,光沢化剤,コーティング剤,糖衣剤,軟化剤,粘稠剤,防湿剤,溶剤,溶解剤,溶解補助剤 ■JECFAの評価 (link to JECFA) ヒトに少量投与したとき直ちに吸収される。経口投与の量の増加に伴って吸収は減少し、便通が誘引される。ヒマシ油は長い間、緩下剤として利用されてきた。便通が起こるレベルのひヒマシ油は油溶性の栄養素、特にビタミンA、Dの吸収を阻害する。従って、食品にはこれらの吸収を阻害しないレベルで添加しなくてはならない。成人で4gの投与では完全に吸収されるため、無作用量と思われる。しかしながら、適当な長期試験がないため、委員会は安全性の限度を慎重に提言している。 ヒトでの無毒性量は70mg/kg bwであり、1日許容摂取量(ADI)は0-0.7mg/kg bw と推定される。1) ■単回投与毒性 ヒマシ油は88-90%のレチノール酸グリセロール(Glycerol Ricinoleate)を含む。このレチノール酸グリセロールのマウスでのLD50は25.0mL/kg以上である。5) (Anonymous, 1988) ■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット及びマウス 1群雌雄各10匹のF344系ラット及びB6C3F1マウスに、ヒマシ油を0, 0.62, 1.25, 2.5, 5.0又は10.0%含む飼料を13週間 与えた。実験開始5及び21日目に採血した。ラットでは高用量群で血液学的検査、臨床生化学検査あるいは臓器重量に多少の変動を認めることがあったが、生物学的に意味あるものとは思われなかった。10%混餌群の雄ラット及び5、10%混餌群マウスでは肝重量の増加、雌では腎重量増加が見られた。しかし、形態学的には各臓器に何ら異常は認められなかった。2) (Irwin, 1992)NATL TOXICOL PROGR TECH REP SER 1992 MAR;12:1-25) ■遺伝毒性 (link to CCRIS) 変異原性試験 3) (Zeiger et al., 1988)
チャイニーズハムスターの卵巣細胞の染色体異常、13週試験後のマウスの末梢血液赤血球の小核試験は陰性であった。2) (Irwin, 1992) ■がん原性 ヒマシ油の主成分であるレチノール酸グリセロール(Glycerol Ricinoleate)に含まれるリチノール酸(Ricinoleic acid)には発癌性はない。5) (Anonymous, 1988) ■生殖発生毒性 (link to DART) 精子の数や運動能を含めた雄の生殖期間のスクリーニングテストにおいて重大な変化は無かった。また、ラット、マウス共に発情期に変化は見られなかった。2) (Irwin, 1992) ■局所刺激性 ヒトではアレルギー反応が引き起こさることもあるが、明らかな皮膚刺激作用はない。ウサギでは、眼に対して緩和作用が、皮膚に対しては緩和な刺激作用がある。4) (BIBRA working group, 1990) レチノール酸グリセロール(Glycerol Ricinoleate)はウサギの非洗浄眼 に対して緩和な刺激性がある。しかし、皮膚刺激剤ではない。ヒトで5.6%のレチノール酸グリセロールを含有する二つの製品の閉塞性のパッチテストを行った結果、皮膚刺激性はなかった。2) (Anonymous, 1988) ■その他の毒性 細胞毒性 リチノール酸(Ricinoleic acid)はハムスターから単離した腸上皮細胞に対して3-O-methylglucose輸送の抑制やトリパンブルー排泄不能等、in vitroで細胞毒である。細胞毒性は0.1mM以上の濃度で現れ始める。1) (Gaginella et al., 1977) 腸組織への影響 ヒマシ油0.3mL/dayを12週間経口投与したマウスの小腸の絨毛構造に組織学的な変化は認められなかった。1) (Gibbins & John, 1970) 8mMのリチノール酸ナトリウム存在下にin vivoで環流したハムスター小腸粘膜細胞では実質構造の変化が光顕及び電顕レベルで認められた。処置後、絨毛突起(villus tips)は崩壊した刷子縁を伴った空胞上皮細胞で覆われていた。tight junctionには変化はなかった。環流液にはDNAの出現に見られるように、粘膜細胞の剥脱の増加が認められた。膜の障害はsaccharase活性の上昇及び管腔液の無細胞部分にリン脂質の出現を伴っていた。また、イヌリン及び分子量16000のデキストランのクリアランス増加が見られた。1) (Cline et al., 1976) 0, 2.5, 5.0, 7.5及び10.0mMのリチノール酸で環流したウサギ結腸では濃度依存性の上皮細胞障害及び粘膜の透過性が認められた。2.5mMでは時に巣状の上皮細胞障害が、7.5mM以上では重篤な障害が見られた。また、尿素及びクレアチニンの血漿から管空へのクリアランスの増加が見られた。1) (Gaginella et al., 1976) リチノール酸のリン脂質への取り込み 成獣ラットに48%ヒマシ油含有餌を25-40日間与えた。ヒドロキシ含有脂肪酸の不在から判断して、ヒマシ油中のリチノール酸は肝、骨格筋及び小腸のリン脂質に取り込まれることはなかった。ラットは実験開始数日間は実験餌を拒み体重は減少したが、殆んどの場合、実験餌を食べるようになり初期体重も回復した。実験期間中瀉下作用は見られなかった。1) (Stewart & Sinclair, 1945) 胃腸管運動及び水分吸収への影響 2mMのリチノール酸ナトリウムは単離ハムスターのjejunumによる水の吸収を48%減少させた。ナトリム及び塩素の吸収も有意に抑制したが、カリウム吸収は抑制しなかった。1) (Stewart et al., 1975a) 胃管を用いて45mLのヒマシ油を経口投与したイヌの実験では、腸の環状平滑筋の活動低下が見られた。1) (Stewart et al., 1975a) リチノール酸は、ラット結腸、ウサギjejunum及びモルモットtaenia coli、ileumから単離した平滑筋標本での自発及び誘発収縮能を抑制した。1) (Stewart et al., 1975b) ヒトでの環流実験では、管腔内濃度0.5mM以上のリチノール酸はileumによる水分吸収を抑制し、2mMではjejunumでの水分分泌を亢進した。還流実験でリチノール酸の吸収速度はオレイン酸の約半分であった。1) (Ammon et al., 1974) ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) ヒマシ油は緩下剤として使用されているが、高用量を摂取すると嘔吐、吐き気、疝痛を引き起こし、一人には昏睡を来たした。4) (BIBRA working group, 1990) ■引用文献 1) WHO Food Additives Series 14 CASTOR OIL (link to WHO DB) 2) Irwin R. Toxicity Studies of Castor Oil (CAS No.:8001-79-4) in F344 Rats and B6C3F1 Mice(Dosed Feed Studies) National Toxicology Program, U. S. Department of Health and Human Services, Research Triangle Park, North Carolina, NTP TOX 12, NIH Publication No. 92-3131, 32 pages, 20 references, 1992 3) ZEIGER,E, ANDERSON,B, HAWORTH,S, LAWLOR,T AND MORTELMANS,K; SALMONELLA MUTAGENICITY TESTS: IV. RESULTS FROM THE TESTING OF 300 CHEMICALS; ENVIRON. MOL. MUTAGEN. 11(SUPPL.12):1-158, 1988 4) BIBRA working group, Toxicity profile. The British Industrial Biological Research Association (1990) 4 p 5) Anonymous J. Am. Coll. Toxicol., 1988: 7; pp 721-39 |メニューへ| |
Japan Pharmaceutical Excipients Council |