日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 ホウ砂
英文名  Sodium Borate

CAS 1303-96-4(水和物)  (link to ChemIDplus), (link to JAN DB) , (link to JANe DB)
   1330-43-4(無水物) (link to ChemIDplus)
別名 ホウ酸Na、Borax
収載公定書  水和物/局方(JP17) 外原規(2006) USP/NF(28/23)(Borax) EP(5)(Borax) 
用途 安定


単回投与毒性:  (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) ホウ素aLD50(mg/kg体重) 文献
ラット 経口 3493 396 Wang et al. (1984) 1)
ラット 経口 4500 510b Weir & Fisher (1972) 2)
ラット 経口 4980 560b Weir & Fisher (1972) 2)
ラット 経口 5660 642 Smyth et al. (1969) 3)
ラット 経口 6080 690b Weir & Fisher (1972) 2)



反復投与毒性 (link to TOXLINE), 無水物 (link to TOXLINE)

ホウ砂を食餌に混入し、雄のSprague-Dawleyラット(18匹/dose)に0, 500, 1000, 2000 mgホウ素/kg体重の濃度で30日または60日間摂取させた(0, 30, 60, 125-313 mg ホウ素/kg体重/日に相当)。体重は投与により影響がみられなかった。臓器重量は、30 mg/kg/日群では影響がみられなかった。 60及び125-313 mg/kg/日群では、60日間投与後の絶対的肝臓重量が有意に低かった。精巣上体重量は、60日間投与後で優位に低かった(それぞれ37.6%, 34.8%)が、30日間投与後では有意差はみられなかった。前立腺、脾臓、腎臓、心臓、肺の重量は、どの投与量でも変化がみられなかった。5)(Lee et al., 1978)


遺伝毒性 (link to CCRIS)
Salmonellaを用いてラット肝S9フラクション存在下及び非存在下で突然変異原性を調べたところホウ砂には突然変異原性は認められなかった。6)(Benson et al., 1984 )

ほ乳類細胞培養により精製ホウ砂及びホウ砂鉱石の細胞毒性及び遺伝毒性を検討した。V79チャイニーズハムスター細胞、C3H/10T1/2マウス胚線維芽細胞、ヒト複相包皮線維芽細胞では、ホウ砂粗鉱、ケルナイト鉱、精製ホウ砂は全て細胞毒性があった。ホウ砂鉱石がC3H/10T1/2とヒト複相包皮線維芽細胞で細胞毒性がみられた最も低い濃度は、それぞれ0.02 mg/ml と0.1 mg/mlであり、精製ホウ砂では、どちらの細胞でも0.1mg/mlであった。細胞毒性は、これらの濃度以上では用量依存的であった。相対プレート効果50%まで減量したホウ砂鉱石、精製ホウ砂の濃度はヒト複相包皮線維芽細胞で、およそ3.2と0.8 mg/mlであり、C3H/10T1/2 細胞ではどちらも0.8 mg/mlであった。
ヒト複相包皮線維芽細胞及びC3H/10T1/2細胞におけるウアバイン耐性の突然変異試験において、これらのホウ酸サンプルには、有意な突然変異原性はみられず、V79チャイニーズハムスター細胞での8、-アザグアニン耐性の突然変異試験において最も弱い突然変異がみられたのみであった。精製ホウ砂は、C3H/10T1/2細胞において悪性形質転換を引き起こさなかった。ホウ砂粗鉱とケルナイト鉱石は、弱い転換を引き起こしたが、用量依存的ではなく、他の試験においては再現性がみられなかった。従って、ホウ砂及びその鉱石は、高濃度でほ乳類細胞に細胞毒性を引き起こし、また最も弱い突然変異原生があるが、細胞転換試験では有意な発ガン性はみられなかった。7) (Landolph JR., 1985)


がん原性
該当文献なし


生殖発生毒性 (link to DART), 無水物 (link to DART)



局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
該当文献なし





ヒトにおける知見 (link to HSDB), 無水物 (link to HSDB)
ホウ砂と蜂蜜でコートされたおしゃぶりを4-10週使用していた7例の新生児(週齢6-16週) の報告。暴露範囲は4から30gであり、1日平均摂取量は0.143-0.429 gであった。毒性として全身性又は交代性焦点発作、興奮性、消化管障害が発現した。そのほか、炎症、うっ血、浮腫、粘膜剥離、混濁腫脹、細管細胞の萎縮、剥離性皮膚炎がみられた。8)(O'Sullivan & Taylor, 1983)

呼吸器症状、肺機能とホウ砂粉塵暴露者の胸部X線異常との関連性をホウ砂労働者629名で横断的研究を行った。労働者のうち93%を試験に組み込み、暴露量は、1.1 mg/m3 to 14.6 mg/m3であった。口腔、鼻腔、咽頭の乾燥、空咳、鼻出血、咽頭痛、喀痰を伴う咳、息切れ、胸苦しさ等の急性呼吸器刺激症状は、4.0 mg/m3以上の暴露と関連していたが、1.1 mg/m3でもまれにみられた。慢性気管支炎にあてはまる持続的な呼吸器刺激症状は、非喫煙者の暴露と関連していた。FEV1(1秒間の努力呼気肺活量)の減少は、ホウ砂の高蓄積暴露者で喫煙者にみられ、低暴露者の喫煙者及び非喫煙者にはみられなかった。胸部X線異常は、まれであり、ホウ砂粉塵暴露とは関連性がみられなかった。ホウ砂粉塵は、呼吸器刺激を引き起こし、恐らく高暴露者のうち喫煙者にFEV1の小さな変化を引き起こすものと思われる。9) (Garabrant DH et al., 1985)


引用文献
1)Wang E. et al.; Zhonghua Yufangyixue Zazhi, 18(1): 20-22(1984)
2)Weir RJ & Fisher RS; Toxicol Appl Pharmacol, 23: 351-364(1972)
3)Smyth HF Jr et al.; Am Ind Hyg Assoc J, 30: 470-476(1969)
4)Verbitskaya GV.; Gig i Sanit, 7: 49-53(1975)
5)Lee IP. Et al.; Toxicol Appl Pharmacol, 45: 577-590 (1978)
6)Benson WH. Et al.; Environ Toxicol Chem, 3: 209-214(1984)
7)Landolph JR.; Am J Ind Med. 7(1):31-43(1985)
8)O'Sullivan K & Taylor M; Arch Dis Child, 58: 737-739(1983)
9)Garabrant DH et al.; Br J Ind Med. 42(12):831-7(1985)



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