日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 フタル酸ジブチル
英文名  Dibutyl Phthalate

CAS 84-74-2 (link to ChemIDplus)
別名 ジブチルフタレート、DBP ; di-n- butyl phthalate ; 1, 2-benzenedicarboxylic acid dibutyl ester ; phthalic acid dibutyl ester
収載公定書  薬添規(JPE2018),  外原規(2006) EP(5)
用途 可塑剤,コーティング剤


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重) 文献
マウス 腹腔内 4,140mg/kg 1) 4) 20) 39)
ラット 経口
腹腔内
8,000mg/kg
3,050mg/kg
1) 4) 20) 39)



反復投与毒性 (link to TOXLINE)
マウス
雄のICR マウス(週齢不明)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0又は20,000 ppm (0又は2,600 mg/kg/day 相当)を7 日間混餌投与した実験では、2,600 mg/kg/day 群で体重の減少、肝臓重量の増加、腎臓量の減少、精巣及び肝臓での亜鉛濃度の減少がみられている。32)(Oishi & Hiraga, 1980b)2) (ATSDR, 1990)

CD-1 マウス(11 週齢)にDBP 0、0.03、0.3、1.0% (0、52.5、525、1,750 mg/kg/day 相当)を126 日間混餌投与した実験では、1,750 mg/kg/day 群で体重の減少、肝臓重量の増加がみられている。33)(Reel et al., 1984)、6) (CERHR, 2000)

マウスに(系統・週齢不明) DBP 0、628、1,248 mg/kg/day を21 日間混餌投与した実験では、1,248 mg/kg/day 群で体重の減少がみられている。2) (ATSDR, 1990)

B6C3F1 マウス(6 週齢)にDBP 0、1,250、2,500、5,000、10,000、20,000 ppm (雄: 163、353、812、1,601、3,689、雌: 238、486、971、2,137、4,278 mg/kg/day 相当)を13 週間混餌投与した実験で、雄812 mg/kg/day 以上の群で体重増加抑制、肝臓重量の増加、雌238 mg/kg/day 以上の群で腎臓重量の増加、雄の1,601 mg/kg/day 以上の群、雌の4,278 mg/kg/day 群で肝臓の肝細胞の好酸性顆粒、細胞質の染色性増加、リポフスチン顆粒の増加がみられている。26)(Marsman, 1995)、6) (CERHR, 2000)

ラット
ラット(系統及び週齢不明)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0又は348 mg/kg/day 相当を21 日間混餌投与した実験では、348 mg/kg/day 群で血中コレステロールの減少、肝臓重量の増加がみられている。5)(Bell, 1982)、2) (ATSDR, 1990)

雌雄のWister ラット(週齢不明)にDBPの0又は250 mg/kg/day 相当を34-36 日間混餌投与した実験では、250 mg/kg/day群で体重の減少、肝細胞壊死がみられており、肝臓のミトコンドリアのエネルギー代謝が阻害されることも報告されている。29)(Murakami et al., 1986a)、 2) (ATSDR, 1990)

雌雄のWisterラット(週齢不明)にDBP の0又は2,500 mg/kg/day 相当を35-45 日間混餌投与した実験では肝臓のミトコンドリア酸化が減少したほか、脾臓の重量増加がみられている。30)(Murakami et al., 1986b)、2)(ATSDR, 1990)

ラット(系統及び週齢不明)にDBP 0、628、1,248 mg/kg/day 相当を21 日間混餌投 与した実験では628 mg/kg/day 以上の群で肝臓重量増加、1,248mg/kg/day 群で腎臓 重量の増加がみられている。2) (ATSDR, 1990)

雌雄のWistar ラット(6 週齢)に、DBP 0、400、2,000、10,000 ppm(雄: 0、27、142、688、雌: 0、33、161、816 mg/kg/day 相当)を3 ヵ月間混餌投与した実験で、雄688 mg/kg/day 群で、肝臓のペルオキシソーム増生、組織学的変化、甲状腺ホルモン(T3)量の減少、貧血、雌816 mg/kg/day で肝臓と腎臓の重量増加、甲状腺ホルモン(T3)量の減少がみられているが、甲状腺に組織学的変化はみられていない。また、神経毒性を検索するための機能検査(行動、反射、聴覚、視覚、嗅覚、痛覚等)及び組織学的検査が行われているが、いずれの投与群においても異常はみられていない。従って、これらのパラメータも含めて本試験における最小副作用量(NOAEL) は雄で142 mg/kg/day、雌で161 mg/kg/day と判断されている。4)(BASF, 1992)、6)(CERHR, 2000)

雌雄のF344 ラット(5-6週齢)に、DBP 0、2,500、5,000、10,000、20,000、40,000 ppm (雄: 0、176、359、720、1,540、2,964、雌: 0、177、356、712、1,413、2,943 mg/kg/day 相当)を13 週間混餌投与した実験で、雄359 mg/kg/day 以上の群でヘモグロビン量と赤血球数の減少、血小板数、血清アルブミンの増加、肝臓のパルミトイルCoA 酸化酵素(PCAO)の増加、肝臓、腎臓重量の増加、720 mg/kg/day 以上の群で体重増加抑制、肝臓の組織学的変化、2,964 mg/kg/day 群で肝臓のペルオキシソーム増生、雌356 mg/kg/day 以上の群で肝臓のPCAO の増加、712mg/kg 以上の群で肝臓、腎臓重量の増加、1,413 mg/kg/day 以上の群で体重増加抑制、2,943mg/kg/day 群で肝臓のペルオキシソーム増生がみられている。26)(Marsman, 1995)、6) (CERHR, 2000)

雄のWister ラット(4 週齢)をDBP 0、0.5、50 mg/m3 (0、0.044、4.4 ppm)に6 時間/日×5 日/週×3-6 ヵ月間吸入暴露した実験では、50 mg/m3 (4.4 ppm)群で体重減少、肺の相対重量増加がみられている。21) 22)(Kawano, 1980a、1980b)、2)(ATSDR, 1990)

ラット(系統及び週齢不明)をDBP 0、2.5 ppm に6 時間/日×5 日間吸入暴露した実験では、2.5ppm 群で肺のチトクロームP-450 含量の減少がみられている。36)(Walseth & Nilsen, 1984)、 2) (ATSDR, 1990)

ウサギ
ウサギ(系統及び週齢不明)にDBP 0、4,200 mg/kg/day を90 日間経皮投与した実験では腎臓に障害(詳細不明)がみられている。25)(Lehman, 1955)、2) (ATSDR, 1990)


遺伝毒性 (link to CCRIS),  (link to GENE-TOX)
ネズミチフス菌を用いた復帰突然変異試験では陰性の報告が多いが、陽性の報告もある。陽性は代謝活性化系を含まない系において報告されているが、溶媒対照の2 倍程度で用量相関もない。20) (IPCS、1997)

マウスリンパ腫細胞を用いる遺伝子突然変異試験については2つの報告があり、1つは代謝活性化を含まない系で陽性を示しているが、細胞に毒性が出ている用量での陽性である20) (IPCS, 1997)。  また、他の1つは代謝活性化系において陽性となっている3) (Barbar et al., 2000)。

染色体異常試験ではいずれも陰性と報告されている20) (IPCS, 1997)。 また、ALB/3T3 細胞を用いるトランスフォーメーション試験においても陰性を示している3) (Barbar et al., 2000)。しかし、ヒトの上部気道から採取した粘膜細胞におけるDNA 損傷試験で陽性が報告されている24) (Kleinsasser et al., 2000)。DBP のin vivo 試験の報告はない。


がん原性
Wistar ラットにフタル酸ジブチル(DBP)の 0又は55 mg/kg/day を1 年間混餌投与した実験では、投与に関連した腫瘍の発生はみられていない。また、ラット(系統及び週齢不明)にDBP 0、100 - 500mg/kg/day を15 ? 21 ヵ月間投与した実験及び2,500 ppm を18 ヵ月間以上混餌投与した実験では、投与に関連した腫瘍の発生はみられていない。 16)(German Chemical Society, 1987)、2) (ATSDR, 1990)


生殖発生毒性 (link to DART)
マウス
雌のICRマウス(8-16週齢で交配)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0、0.05、0.1、0.2、0.4、1.0% (0、80、180、350、660、2,100 mg/kg/day相当)を妊娠0-18日まで混餌投与した実験では、2,100 mg/kg/day群で死胚の増加、外脳症、脊椎二分症、母動物の体重減少がみられている。34) (Shiota et al., 1982)

雌雄のCD-1マウス(11週齢)にDBP 0、0.03、0.3、1.0 % (0、52.5、525、1,750 mg/kg/ day相当)を106日間(同居前7日間及び98日間の同居中)混餌投与したNTPプロトコール実験では、1,750 mg/kg/day群で妊娠率の低下、産仔数及び生存仔数の減少、組換え交配では、高用量の雌と対照群の雄の交配で妊娠率、産仔数、生存出生仔率、生存胎仔体重の減少がみられている。38) (Lamb et al., 1987)

雌のB6C3F1マウス(週齢不明)にDBP 0、20,000 ppm (0、2,600 mg/kg/day相当)を妊娠期間中混餌投与した実験では、2,600 mg/kg/day群で全胚吸収がみられている。23)(Killinger et al., 1988a)、2) (ATSDR, 1990)

ラット
雌のWistar ラット(10-14 週齢で交配)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0、750、1,000、1,250 mg/kg/day を妊娠7-9、10-12、13-15 日に強制経口投与した実験では、いずれの妊娠期間中の投与においても750mg/kg/day 以上の群で着床後吸収胚の増加がみられ、妊娠7-9 日の投与では、750mg/kg/day 以上の群で骨格奇形の増加、生存胎仔数の減少、胎仔体重の減少、妊娠10-12日の投与では750 mg/kg/day 以上の群で生存胎仔数の減少、750 mg/kg/day 群及び1,250mg/kg/day 群で胎仔体重の減少がみられているが奇形はみられず、妊娠13-15 日の投与では、750 mg/kg/day 以上の群で口蓋裂、胸骨癒合の増加、1,000 mg/kg/day 以上の群で生存胎仔数の減少がみられている。9) (Ema et al., 1995a)

上記実験では、胎仔の奇形は妊娠7-9日及び妊娠13-15 日の投与でみられており妊娠10-12 日の投与ではみられておらず、高用量を1,500 mg/kg/day とした類似の実験でも同様な結果が得られている。8) (Ema et al., 1994)

雌のWistar ラット(14 週齢で交配)にDBP 0、1,500 mg/kg/day を妊娠6-16日のうち1 日のみ単回強制経口投与した実験においても奇形は妊娠8、9、15 日の投与で明瞭な骨格奇形(頚椎、胸椎、肋骨など)、妊娠9 日の投与では外脳症、腎盂拡張、妊娠15 日の投与では口蓋裂がみられている。12) (Ema et al., 1997)

雌のWistar ラット(14 週齢で交配)にDBP 0、0.5、1.0、2.0% (0、331、555、661 mg/kg/ day相当)を妊娠11-21 日まで混餌投与した実験では、555 mg/kg/day 以上の群で母動物の体重増加抑制がみられ、胎仔に対する影響として555 mg/kg/day 以上の群で停留精巣、肛門−生殖突起間距離(Anogenital distance:AGD)短縮、661 mg/kg/day 群で胎仔体重減少、口蓋裂、胸骨癒合がみられているが、雌の生殖器には影響はみられていない。13)(Ema et al., 1998)

雌のWistar ラット(14 週齢で交配)にDBP 0、500 (妊娠15-17 日のみ)、1,000、1,500 mg/kg/day を妊娠12-14、15-17、18-20 日に強制経口投与した実験からDBP 誘発の停留精巣やAGD 短縮の発生に最も感受性が高い時期は妊娠15-17 日であることを報告している。14) (Ema et al., 2000)

雌のSD ラット(8 週齢で交配)にDBP 0、100、250、500 mg/kg/day、または0、0.5、5、 50、100、500 mg/kg/day を妊娠12-21 日まで強制経口投与した実験では、100 mg/kg/ day以上の群で雄出生仔に乳頭遺残、250 mg/kg/day 以上の群でAGD 短縮、500 mg/ kg/day 群の雄出生仔で尿道下裂、停留精巣、前立腺、精巣上体、精嚢、精管の発育不全、精細管上皮の変性、精巣間細胞の過形成、輸精管の萎縮、ならびに精巣、精嚢、精巣上体、前立腺、肛門挙筋重量の減少等がみられている。このことから、妊娠10 日間のDBP への暴露では最大無作用量(NOAEL)及び最小副作用量(LOAEL)はそれぞれ50、100 mg/kg/day と結論された。27) 28) (Mylchreest et al., 1999、2000)

雌のLE ラット(週齢不明)にDBPの0又は500 mg/kg/day を妊娠16-19 日まで強制経口投与した実験では、500 mg/kg/day 群で吸収胚の増加、雄出生仔でAGD の短縮、精嚢、前立腺、肛門挙筋重量の減少、乳頭遺残がみられ、同様な実験で雌のSD ラット(週齢不明)にDBPの0又は500 mg/kg/day を妊娠14 日から生後3 日まで強制経口投与した実験では、500 mg/kg/day群で出生仔数の減少、雄出生仔でAGD の短縮、尿道下裂、精巣及び精巣上体の萎縮あるいは発育不全、精嚢、前立腺、精巣上体、精巣、肛門挙筋、陰茎重量の減少、乳頭遺残がみられている。18) (Gray et al., 1999)

雌雄のLE ラットまたはSD ラットにDBP 0、250、500、1,000(雄のみ) mg/kg/day を離乳後から育成、交配及び第一世代(F1 )の哺育期間まで強制経口投与し、またF1 動物のDBP 投与動物と未処置動物を交配した実験では、F0 では250 mg/kg/day 以上の群で雌雄とも性成熟の遅延、500 mg/kg/day 群で繁殖能力の低下、500 mg/kg/day 以上の群の雄で精巣の萎縮、精子生産能の低下がみられ、1,000 mg/kg/day 群の雄で繁殖能力の欠損、F1 では250mg/kg/day 以上の群で奇形、受精能低下、精巣上体中の精子数減少がみられている。18)(Gray et al., 1999)

雌雄のSDラット(10週齢)にDBP 0、0.1、0.5、1.0 % (雄:0、52、256、509 mg/kg/day相当、雌:0、80、385、794 mg/kg/day相当)を混餌投与した連続交配試験において、F0に投与した結果、0.1% (52 - 80 mg/kg/day相当)以上の群でF1 生存仔数の減少、0.5% (256 ? 385 mg/kg/day相当)以上の群でF1 生存仔体重の減少、さらに1.0%(509 - 794 mg/kg/day相当)群ではF0母動物に体重増加抑制が認められている。F0親世代の組換え交配の結果、高用量群の雌と対照群の雄の組み合わせで出生仔体重の減少がみられている。しかし、逆の組み合わせでは影響はみられていない。また、F0世代では1.0%(509 - 794 mg/kg/ day相当)群の雌雄で肝臓、腎臓重量増加がみられたが、雌雄生殖器系の肉眼的変化、精子の数及び運動性、性周期等に影響はみられていない。一方、F1世代では、0.1% (52 - 80 mg/kg/day相当)以上の群でF2の生存仔体重減少が、1.0% (509 - 794 mg/kg/day相当)群で交尾率、妊娠率の顕著な低下、雌雄F1親動物の体重減少がみられた。また、F1世代では、0.5%(256 -385 mg/kg/day相当)以上の群の雄で腎臓重量増加、1.0%(509 - 794 mg/ kg/day相当)群の雄で肝臓重量の増加、前立腺、精嚢、精巣重量の減少、精巣上体精子数及び精巣精子細胞数の減少、精細管の変性、間細胞過形成、精巣上体発育不全がみられている。この結果から、親世代よりも仔世代の方が作用が強く現れるとしている。37) (Wine et al., 1997)

代謝物の作用(ラット)
DBP の代謝物であるフタル酸モノブチル(MBP) を雄のSD ラット(4-6 週齢)に0、2,000 mg/kg/day を強制経口投与した実験では、2,000 mg/kg/day 群で精巣重量の減少、精細管の広範な萎縮がみられている。17) (Gray et al., 1982)

MBP を妊娠期間中のWistar ラットに経口投与した場合、出生仔に骨格奇形、口蓋裂、腎盂拡張、停留精巣等がみられている。10) 11)(Ema et al., 1995b、1996)、19)(Imajima et al., 1997)、6) (CERHR, 2000)

その他
NTP のCERHR (Center for Evaluation of Risks to Human Reproduction)のエキスパ ート・パネルによる本物質の評価では、妊娠ラットにDBP を経口投与した際に、F1 雄に みられる種々の奇形はアンドロゲン受容体を介する作用ではなく、テストステロン生合成系の阻害によるものであると記述されている。しかし、根拠となる文献は示されておらず、詳細は不明である。6) (CERHR, 2000)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
性腺に対する作用
マウス
雄マウス(系統及び週齢不明)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0又は2,000 mg/kg/day を10 日間経口投与した実験で、2,000 mg/kg/day 群で精巣の重量減少と組織障害(詳細不明)を報告している。15) (Gangolli, 1982)。

ラット
雄のWistarラット(5週齢)にDBPの 0又は2% (0又は1,000 mg/kg/day相当)を1週間混餌投与した実験では、1,000 mg/kg/day群で精巣重量の減少、精母細胞減少、精巣中のテストステロン量の著明な増加、亜鉛含量の減少がみられている。31)(Oishi & Hiraga, 1980a)

雄のWistarラット(5週齢)にDBP 0、250、500、1,000 mg/kg/dayを15日間強制経口投与した実験では、250 mg/kg/day以上の群で精細管の変性、精巣における酸性ホスファターゼ活性の減少、LDH、γ-GTP、β-グルクロニダーゼ(β-G)、グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PDH)活性の増加、500 mg/kg/day以上の群で精巣重量減少、精巣の精子形成阻害、精巣におけるソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)活性の減少等の精巣毒性がみられている。35) (Srivastava et al., 1990)

雄のF344ラット(5-6週齢)にDBP 0、2,500、5,000、10,000、20,000、40,000 ppm (0、176、359、720、1,540、2,964 mg/kg/day相当)を13週間混餌投与した実験では、720 mg/ kg/day以上の群で精巣の限局性精細管萎縮、1,540 mg/kg/day以上の群で精巣重量減少、精巣中の亜鉛及び血清中のテストステロン量の減少、2,964 mg/kg/dayで血清中の亜鉛量の減少がみられている。26) (Marsman, 1995)、6) (CERHR, 2000)

雄のWistarラット(4週齢)をDBP 0、0.5、50 mg/m3 (0、0.044、4.4 ppm)に6時間/日、3または6ヵ月間吸入暴露した実験では、精巣重量に変化はみられていない。21) 22)(Kawano, 1980a、1980b)

モルモット
雄のモルモット(系統及び週齢不明)にフタル酸ジブチル(DBP)の 0又は2,000 mg/ kg を10 日間経口投与した実験では、2,000 mg/kg/day 群で精巣重量の減少とセルトリ細胞の変性が認められている。15) (Gangolli, 1982)

ハムスター
Gray らはDBP 0、2,000 mg/kg/day を7 - 9日間経口投与した実験で、2,000mg/kg/ day投与群で精巣重量の減少、精細管の毒性をTO マウス、SD ラット、Dunkin-Hartley モルモットに認めたが、シリアンハムスターでは異常がないことを報告している。17)(Gray et al., 1982)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
誤用
23 歳の男性労働者が約10 g を誤飲して、嘔吐、めまい、眼の痛み、流涙、結膜炎が みられ、尿は暗黄色を示し、尿沈渣中には多量の赤血球と白血球が確認されたが、1ヵ 月後に完全に回復した。20) (IPCS, 1997)

その他
フタル酸ジ-n-ブチル(DBP)を含む制汗剤を使用した30 歳の女性では皮膚炎が、DBP を含む消臭スプレーを使用した32 歳の女性でかゆみと発赤がみられ、いずれもパッチテストでDBP に対して陽性を示している。また、DBP を5%含む時計のベルトを使用した44 歳の人で湿疹がみられている。
フタル酸エステルの生産に従事した労働者38 人に対する調査では、DBP を含むフタル酸エステル類に暴露された群では、作業時間の増加に伴って四肢の感覚異常が多く報告されている。また手足の異常発汗、自律神経系障害による血管運動の異常がみられた例もある。多発性神経炎は57%にみられ、痛覚の低下、手足の感覚の低下がみられた例もある。しかしながら、本報告に記載された多発性神経炎等の所見は調査人数が少ないため、DBP による影響かどうか結論できなかったと報告されている。
なお、生殖器への影響として、DBP の職業暴露をうけた女性労働者189 人について調査した報告があるが、暴露量が不明であり、また他の不特定物質にも暴露されているため、結論できなかったと報告されている。20) (IPCS, 1997)

プエルトリコ在住の女児の間で乳房発育開始年齢の低下がみられ、症状がみられた女児(6 か月〜8 才)の血清サンプル41 件中28 件からDBP 及びDEHP(フタル酸ジ-(2-エチルヘキシル))を主としたフタル酸エステルが検出され、28 サンプル中DBP は13 件(15-276μg/L)、DEHP は25 件(187-2,098μg/L)検出されている。血清DBP 及びDEHP の濃度は、同年齢の健常女児の血清サンプル35 件の値に比して有意に高く、性成熟前乳房発育症の発生にDBP、DEHP を主とした含むフタル酸エステル類が影響を及ぼした可能性が考えられるものの、著者は本症の発生がフタル酸エステルの内分泌かく乱作用による影響と結論するには、さらにヒトでの疫学研究、動物実験での実証が必要であると報告している。7) (Colon et al., 2000)


引用文献
1)ACGIH (2001) American Conference of Governmental Industrial Hygienists. Documentation of the threshold limit values and biological exposure indices. Seventh Edition, Cincinnati, Ohio, 200.

2)ATSDR (1990) Toxicological profile for di-n-butyl phthalate. Agency for Toxic Substances and Disease Registry, U.S. Public Health Service.

3)Barber, E.D., Cifone, M., Rundell, J., Przygoda, R., Astill, B.D., Moran, E., Mulholland, A., Robinson, E., and Schneider, B. (2000) Results of the L5178Y mouse lymphoma assay and the Balb/3T3 cell in vitro transformation assay for eight phthalate esters. J. Appl. Toxicol., 20, 69 - 80.

4)BASF (1992) Study on the oral toxicity of dibutyl phthalate in wistar rats. Administration via the diet over 3 months. 31S0449//89020: Eastman Kodak Company. 5)Bell, F.P. (1982) Effects of phthalate esters on lipid metabolism in various tissues, cells and organelles in mammals. Environ. Health Perspect., 45, 41-50.

6)CERHR (2000) NTP-CERHR Expert Panel Report on di-n-butyl phthalate. Center for Evaluation ofRisks to Human Reproduction, USA.

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8)Ema, M., Amano, H., and Ogawa, Y. (1994) Characterization of the developmental toxicity of di-nbutyl phthalate in rats. Toxicology, 86, 163 - 174.

9)Ema, M., Kurosaka, R., Amano, H., Harazono, A., and Ogawa, Y. (1995a) Comparative developmental toxicity of n-butyl benzyl phthalate and di-n-butyl phthalate in rats. Arch. Environ. Contam. Toxicol., 28, 223 - 228. 10)Ema, M., Kurosaka, R., Amano, H., Harazono, A., and Ogawa, Y. (1995b) Developmental toxicity evaluation of mono-n-butyl phthalate in rats. Toxicol. Lett., 78 101-106.

11)Ema, M., Kurosaka, R., Harazono, A., Amano, H., and Ogawa, Y. (1996) Phase specificity of developmental toxicity after oral administration of mono-n-butyl phthalate in rats. Arch. Environ. Contam. Toxicol., 31, 170 - 176.

12)Ema, M., Harazono, A., Miyawaki, E., and Ogawa, Y. (1997) Developmental effects of di-n-butyl phthalate after a single administration in rats. J. Appl. Toxicol., 17, 223 - 229.

13)Ema, M., Miyawaki, E., and Kawashima, K. (1998) Further evaluation of developmental toxicity of di-n-butyl phthalate following administration during late pregnancy in rats. Toxicol. Lett., 98, 87 - 93.

14)Ema, M., Miyawaki, E., and Kawashima, K. (2000) Critical period for adverse effects on development of reproductive system in male offspring of rats given di-n-butyl phthalate during late pregnancy. Toxicol. Lett., 111, 271 - 278.

15)Gangolli, S.D. (1982) Testicular effects of phthalate esters. Environ. Health Perspect., 45, 77 - 84.

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