日本医薬品添加剤協会 |
和名 フェニルエチルアルコール 英文名 Phenylethyl Alcohol CAS 60-12-8 (link to ChemIDplus) 別名 フェネチルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、Benzyl carbinol、Benzylmethanol、1-Phenyl-2-ethanol、β-phenetyl alcohol、β-P.E.A.、2-Phenethyl alcohol、2-Phenylethanol 収載公定書 薬添規(JPE2018), 外原規(2006) USP/NF(28/23) 用途 防腐剤 ■JECFAの評価 評価は終了していない ■単回投与毒性 (link to ChemIDplus)
■反復投与毒性 (link to TOXLINE) ラット Wistar系ラット 1群雌雄各20匹にフェニルエチルアルコール120 mg/kg(0.12%)、エチルアルコール6000 mg/kg(6%)、酢酸エチル4 mg/kg(0.004%)、イソアミルアルコール120 mg/kg(0.12%)、イソブチルアルコール200 mg/kg(0.2%)及び酢酸200 mg/kg(0.2%)を飲料水に混入して56週間経口投与した。 対照群には飲料水を投与した。体重は週1回測定した。アルコール脱水素酵素、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、肝臓蛋白 は2-4週に1回測定した。試験終了時に病理組織学検査(肝臓、腎臓、心臓、脾臓、肺)を実施した。28-29週目の体重は53-56週目の体重と比較して,統計学的に有意差のない軽微な減少がみられた。肝臓重量は絶対重量,相対重量ともに対照群と差はなかった。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼの軽微な増加が28,56週目に認められた。臓器重量には変化はみられなかった。肺炎の認められた6例は廃棄した。いずれの群にも肺炎は認められた。被験液は いずれの検査項目にも影響はなかったとみなした1) (Johannsen & Purchase et al., 1969) ■遺伝毒性 (link to GENE-TOX)
■がん原性 該当文献なし ■生殖発生毒性 (link to DART) ラット CD-1マウス雌雄にフェニルエチルアルコール由来の加水分解生成物をフェニルエチルアルコールとして0.25,1.2,2.5%飼料に混入して18週間混餌投与した。このときの投与量は380,1900,3700 mg/kg/日に相当した。一腹の産児,生存出生児の性別などの生殖能には影響はみられなかった。一腹あたりの産児数,生存出生児数の減少が対照群及び低用量2群と比較して高用量群でみられ,投与量に応じた生存出生児体重の減少が高用量群2群で認められた。生存出生児雄(F1)の体重減少が,低用量群18週目の摂餌量の減少(F0)に応じてみられた。対照群と高用量群F0マウスの剖検で,投与群雄では体重減少(6%以下),肝臓絶対重量の増加(14%以上),投与群雌で肝臓の絶剃重量の増加が認められた。その他の臓器,精巣インデックスに影響はなかったと報告されている。 本試験のF0親動物と同用量のフェニルエチルアルコールをF1マウスに離乳後から与えた。F1世代の投与量に応じた体重減少は高用量群2群で生時から生後74日まで認められた。また,同時期には死亡率の増加も高用量群2群でみられ,最高用量群では交配までに6/56が生存したため,この群は試験を終了とした。F1世代の交配後は,F2一腹あたりの産児数,性比には投与に関連した変化は認められなかった。中間用量群のF2出生児体重は7%減少した。対照群と投与群の剖検では,投与群雄で体重減少(13%以下),精巣絶対重量の減少(16%以下),精嚢腺相対重量の減少(14%以下),雌で体重減少(7%)がみられた。精巣上体の精子濃度,運動性,形態には差はなかった。低用量群両親から生まれたF1雄の体重減少が統計学的に有意なわずかな差が認められたが,雄の出生児のみの変化であり,その生物学的意義は疑わしい。無影響量(NOEL)は0.25%混餌の380mg/kg/日と見積もられた。1)(National Toxicology Program, 1984) Long-Evans系ラットにフェニルエチルアルコールを4.3,43, 430mg/kgを妊娠6-15日に強制経口投与した。いずれ投与群も出生児の平均体重及び出生児数は対照群より有意に減少したが、用量の依存した変化はなかった。事実、中間 用量群の出生児の平均体重は対照群より重かった。高用量群の一腹の平均出生児数は他群より増加した。胎児死亡率は中間用量群18%、低用量群10%であったが、高投与群には 胎児死亡は認められなかった。奇形発生率には,明らかな用量依存性(高投与群100%、中間投与群93%、低投与群50%) が認められた。奇形は主に眼球の変化、神経管欠損、水腎症及び四肢欠損であった(Mankes et al., 1983)1)。Long-Evans系妊娠ラットに0.02%(LD50の24%)のフェニルエチルアルコールを経口投与した同じ著者の続報(Mankes et al., 1984, 1985) 1)において、胎児体重の低下及び胎児死亡が全用量群に認められており、これらの報告と一貫性がなかった。 ラットを用いて,ヒトの常用濃度の8000倍を超えるフェニルエチルアルコールを投与したが,催奇形作用は認められなかった。即ち,Sprague-Dawley系ラットに フェニルエチルアルコールをマイクロカプセル化した後,1000,3000,10000 ppmを飼料に混入して,1日投与量が50, 150又は500mg/kgとなる様に妊娠6-15日に混餌投与した。母体への影響は少なく,摂餌量の減少が一過性にみられ,結果として高用量群で 投与開始2日間にわずかな体重減少が認められた。胎児への影響は少なく、対照群3胎児、中間用量群2胎児に奇形が認められ、外表奇形の種類は対照群と投与群で 差はなかった。高用量群の胎児においてのみ化骨不全が増加したが、初期の母体の体重増加障害による可能性が考えられた。骨格変異、早期産児数、胎児致死率、着床数、一腹当りの胎児重量、胎児の平均体重及び性比に対照群と被験物質投与群の間に差はなかった。1) (Bottomley et al., 1987) Sprague-Dawley系ラットにマイクロカプセルに封入したフェニルエチルアルコール 0,1000,3000,10000 ppmを飼料 に混入して妊娠6-15日に混餌投与した。フェニルエチルアルコール投与量は83,270,800 mg/kgであった。妊娠20日に屠殺し、摘出胎児を検査した。最高 用量群では子宮の発達への有害な影響は無視できるものであった。投与初期に母体体重増加に明らかな阻害が認められたが、胎児に及ぼす影響は化骨遅延が認められたが以外に殆どなかった。 この化骨遅延も生後の発育過程で自己回復できる一過性の変化と考えられた。低用量の2群では、母獣にフェニルエチルアルコールによる症状は認められず、胎児の発育及び形態に影響は観察されなかった。1) (Bottomley et al., 1987) Sprague-Dawley系ラットに、フェニルエチルアルコール 0,0.14,0.43,1.4 mL/kgを妊娠6日から15日まで皮膚塗布した。 これは140,440,1400mg/kgに相当する。ラットを妊娠20日に屠殺し、摘出胎児を検査した。高投与群に母体毒性 (死亡率、摂餌量,体重増加の抑制)及び胎児毒性(胚吸収、流産、一腹胎児数の減少、胎児体重の低下、外形及び骨格の奇形、化骨遅延)が認められ、中間用量の近傍に母体毒性の閾値があると考えられた。低投与群では一腹胎児数に異常は認められなかったが、胎児の形態学的変化(頸肋、胸郭椎骨不整)の発生率が対照群よりわずかに高値であり、ラットにおける発生毒性の閾値を140 mg/kgとみなした。1) (Palmer et al., 1986). ■局所刺激性 該当文献なし ■その他の毒性 雄ラットにフェニルエチルアルコール51mg/kgを4ヶ月間強制経口投与した。投与40日後にコリンエステラーゼ及びアラニンアミノトランスフェラーゼの活性上昇、チオール基含量増加、血清蛋白量低下(7.2g/100mL)が認められた。チオール基含量及びコリンエステラーゼ活性への影響は投与後140日まで認められた。1) (Zaitsev & Rakhmanina, 1974) ■ヒトにおける知見 (link to HSDB) ■引用文献 1) WHO Food Additives Series No.50 Phenylethyl Alcohol, Aldehyde, Acid and Related Acetals and Esters and Related Substances. (link to WHO DB) |メニューへ| |
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