日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 ウルソデオキシコール酸
英文名 Ursodeoxycholic Acid

CAS 128-13-2 (link to ChemIDplus), (link to JAN DB), (link to JANe DB)

別名 
収載公定書  局方(JP17)
用途 溶解剤

単回投与毒性 (link to ChemIDplus)


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
高橋英彦らの論文「Wistar系ラットに対するUrsodeoxychol酸腹腔内投与による亜急性毒性について」を参照。1) (Takahashi et al., 1975)

高橋英彦らの論文「Wistar系ラットに対するUrsodeoxychol酸経口投与による亜急性毒性について」を参照。2) (Takahashi et al., 1975)

高橋英彦らの論文「Wistar系雄ラットに対するUrsodeoxychol酸3ヶ月間経口投与による毒性について」を参照。3) (Takahashi et al., 1975)

高橋英彦らの論文「Wistar系雄ラットに対するUrsodeoxychol酸6ヶ月間経口投与による慢性毒性について」を参照。4) (Takahashi et al., 1975)


遺伝毒性 (link to CCRIS)
(Toxinet 資料)

試験

試験系

濃度

結果

文献

復帰突然変異

サルモネラ菌 TA98

20-50μg/mL in ETOH
fluctuation test

陽性

Watabe & Bernstein, 1985 5)

復帰突然変異

サルモネラ菌 TA100

20-50μg/mL in ETOH
fluctuation test

陰性

Watabe & Bernstein, 1985 5)

復帰突然変異

サルモネラ菌 TA100

20-500μg/plate in

陰性

Watabe & Bernstein, 1985 5)

復帰突然変異

サルモネラ菌 TA100
代謝活性化(ラット肝、
S-9、Aroclor 1254)

20-500μg/plate in
ETOH standard plate

陰性

Watabe & Bernstein, 1985 5)


ウルソデオキシコール酸(UDCA)及びそのタウリン抱合体(TUDCA)のヒトリンパ球培養に及ぼす影響について、遺伝毒性としての小核形成、細胞分裂サイクルの変化及びアポトーシスを指標に検討した。UDCAでは10μg/mL以上で用量に依存した小核形成の増加が認められたが、TUDCAでは1000μg/mLでも有意な増加は見られなかった。細胞分裂サイクルの進展は、UDCAでは100μg/mLで、TUDCAでは300-1000μg/mLで抑制された。アポトーシス誘導に関しては両者共に影響は認められなかった。結論的にはUDCAには強い遺伝毒性があると考えられるが、その生理学的な代謝抱合体を考慮するとUDCAの長期投与は安全であるかもしれない。6)Fimognari et al., 2001)


がん原性 (link to CCRIS)

生殖発生毒性 (link to DART)
Sラット
Wistar系ラットに、雄には交配前63日間、雌には交配前14日間と交配後妊娠7日までウルソデオキシコール酸(UDCA)の250、1000又は2000mg/kgを経口投与した。最高用量の2000mg/kgで交配率と妊娠率に低下傾向が見られたが、3回の交配実験で交配しなかった雌雄を繰り返し交配させると殆ど全て交配した。黄体数、着床数には異常はなかったが、2000mg/kg群では吸収胚数の増加と生仔数の有意な減少がみられた。しかし、胎仔の外形、骨格所見では全ての群で異常は観察されなかった。7)(Toyoshima et al., 1978)

Wistar系妊娠ラットに、妊娠7日から17日までの器官形成期にウルソデオキシコール酸(UDCA)の250、1000又は2000mg/kgを経口投与し、母獣、F1及びF2に対する影響を検討した。母獣の体重増加、摂餌・摂水量に変化は見られなかったが、最高用量の2000 mg/kgで吸収胚を主とする死亡胎仔の有意な増加が見られた。新生仔(F1)には外形、骨格及び内臓の異常はなく、また、その後の発育、一般分化、機能的所見、自発運動、学習能力、生殖能及びその胎仔(F2)所見には2000mg/kg群においても特記すべき異常は認められなかった。8)(Toyoshima et al., 1978)

Wistar系妊娠ラットに、妊娠17日から分娩後21日までの周産期及び授乳期にウルソデオキシコール酸(UDCA)の250、1000又は2000mg/kgを経口投与し、母獣、F1及びF2に対する影響を検討した。最高用量の2000mg/kgで母獣の体重増加の有意な抑制が見られたが新生仔(F1)には外形及び骨格異常は見られず、また、その後の発育、分化、一般行動、生殖能及びその胎仔(F2)所見には特記すべき異常は認められなかった。9)(Toyoshima et al., 1978)

妊娠ラットに、ケノデオキシコール酸(CDCA)又はウルソデオキシコール酸(UDCA)の3用量を投与した結果、胚毒性及び母獣の肝臓における脂肪浸潤はCDCAの方が頻度が高かったが形態学的な異常は認められなかった。母獣の肝臓の光顕レベルでの観察では変化はCDCA、UDCA共に最高用量群でのみ見られた。10)Celle et al., 1980)

妊娠ラットに、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の1000mg/kgを妊娠及び授乳期間中  投与し、その後F1世代の雌雄ラットの数群にも1、2又は3ヶ月間投与した。残りのF1世代には溶媒(ポリエチレングリコール400)のみを投与した。対照群の母獣及びF1世代には溶媒を投与した。その結果、繁殖性、妊娠、母獣への毒性、生仔数にはUDCA投与による影響は見られなかった。また、胚致死作用及び催奇形作用も認められなかった。UDCAを投与したF1世代では授乳期間中の体重増加は有意に低下し、摂水量は最初の4週間は増加した。血液及び尿検査には異常はなかった。生化学検査ではクレアチニンの軽度上昇、数匹のラットではALT(GOT)、AST(GPT)の上昇が見られた。臓器の重量及び肉眼所見には異常なかった。組織形態学的には肝細胞の単細胞壊死の頻度がわずかに高かった。11)Stitinova et al., 2003)

ウサギ
1群11匹のNew Zealand(白色)系の妊娠ウサギに、妊娠6日から18日までの器官形成期にウルソデオキシコール酸(UDCA)の5、10又は20mg/kgを経口投与した。いずれの群においても母獣及び胎仔に対する影響は見られず、外形、骨格及び内臓の奇形は認められなかった。12)(Toyoshima et al., 1978)


局所刺激性
該当文献なし


その他の毒性
肝に対する作用
30匹の雄性ハムスターを用い、15匹にはウルソデオキシコール酸(UDCA)を投与し、残り15匹を対照としてUDCAの肝組織に対する影響を検討した。30日後に全動物を屠殺し、肝組織を光顕及び電顕レベルで観察した。UDCA投与群では小葉中心部の肝細胞の核に空胞が見られた。空胞は一様であり、青白い塩基性物質を含んでいた。炎症性の変化及び壊死は認められなかった。電顕では空胞に一致して核膜の折りたたみ(folding)が観察された。13)Mamianetti et al., 1981)

胆石溶解剤であるケノデオキシコール酸(CDCA)及びウルソデオキシコール酸(UDCA)の肝毒性をウサギで検討し、リトコール酸(LCA)と比較した。New Zealand whiteウサギにCDCA、UDCA又はLCAの0.5%混餌食を14日間与えた後、剖検した。死亡率はLCA群で最も高く(12匹中6匹死亡)、次いでCDCA群で(8匹中2匹死亡)、UDCA群では6匹中1匹の死亡も認められなかった。光顕での観察では、3群共に肝には線維化、炎症及び門脈域に胆管増生が見られた。LCA、CDCA両群では傷害はより強く現れ、肝実質の繊維化や巣状壊死は門脈周囲にまで及んでいた。電顕では細胆管の歪曲、中間サイズの顕著なフィラメント束、マイクロフィラメントの蓄積及びリソゾームの隆起による胆管周囲の細胞質マトリックスの拡張、粗面小胞体の槽の断片化が観察された。これらの超微細構造の変化はUDCA群では弱いか又は見られなかった。血清中のGOTは、LCA、CDCA両群では対照群の5〜6倍に増加していたがUDCA群では2倍以下に留まっていた。血清中のLCA濃度は全群で増加を示したのに対し、UDCA濃度はUDCA群では著増していたが他の2群では検出されなかった。以上の結果、@3種の胆汁酸の経口投与はウサギに肝障害を惹起するが、UDCAはLCA、CDCAに比し弱い。AUDCAのCDCAに対する優位性は絶対的というよりは相対的である。BUDCAから代謝変換されて生じるLCAが肝毒性の本体であろう。CUDCAとの共存がLCAの毒性を軽減している可能性がある。14)Miyai et al., 1982)

ウルソデオキシコール酸(UDCA)の胆汁酸組成及び肝の組織形態に及ぼす影響を、Syrian goldenハムスターを用いて検討した。雄60匹を分け以下の群を設けた。I群;対照群、II群;0.5%UDCA食、30日間、III群;同60日間、IV群;1%UDCA食、30日間、V群;同60日間。UDCA投与群では全群で、胆汁中のケノデオキシコール酸(CDCA)及びリトコール酸(LCA)は有意に増加し、抱合型の比(glyco/tauro)は対照群に比し有意に上昇し、個々の胆汁酸の抱合比はLCAを除き1.0以上になった。光顕レベルでの観察ではUDCAの用量及び投与期間に応じた肝の障害、即ち、門脈への炎症性細胞浸潤、胆管増生、胆汁欝滞、脂肪浸潤、壊死等が見られた。電顕では微絨毛の浮腫、細胆管膜の破壊、壊死等が認められた。LAの抱合比(glyco/tauro)の変化は肝毒性を回避するための防御機構のためと思われる。UDCA投与による肝毒性は主としてLCA又はその代謝物によるものと推定される。15)Mamianetti et al., 1994)


ヒトにおける知見
ウルソデオキシコール酸(UDCAの400又は800mg/day)、 ケノデオキシコール酸(CDCAの375又は750mg/day)及びプラセボを用い、二重盲検法により有効性、安全性を検討した。治療12ヵ月後には胆石溶解作用はUDCAの方がCDCAに比し有意に優れていた。24ヵ月後においても胆石溶解作用はUDCA(完全溶解30%、部分溶解30%)の方がCDCA(完全溶解7%、部分溶解40%)より優れていたが、両者間に有意差は見られなかった。浮遊胆石であるにもかかわらず溶解しなかった3例はいずれもCDCA群であった(750mg/day 2例、375mg/day 1例)。UDCAによる胆石溶解は胆汁中のコレステロール飽和度に拘らず見られたことから非ミセル機序によると思われる。安全性の面で、血清GOTの3倍以上の上昇はCDCA群の2例にのみ認められた(375及び750mg/day群各1例)が投与中止により回復し、UDCA投与後それぞれ13週間及び8週間正常域に留まった。肝機能テストと胆汁中LCA濃度との相関性は見られなかった。全症状の中で改善が見られたのは便秘だけであり、CDCAの方がUDCAに比し有意に優れていた。総胆汁酸プールは、CDCA群では両用量群共に、UDCA群では800mg/dayで有意な拡大が見られた。胆汁中のCDCA又はUDCAの増加は、夫々の投与群で顕著であった。血中の中性脂肪、コレステロールには変化は見られなかった。以上、UDCAはCDCAに比べ胆石溶解作用が早期に見られ且つ副作用も少ない。また低用量から有効である。16)Fromm et al., 1983)

胆汁性肝硬変の治療におけるウルソデオキシコール酸(UDCA)の安全性を検討した。ステージI〜III段階の患者7名及びステージIVの患者2名にUDCA1g/dayを1年間投与した。その結果、臨床症状及び血清中のALP、γ-GTP、GOT、GPTは3ヶ月以内に有意に改善し、観察期間を通じて低値を維持した。ガラクトース除去能(4.7±1.4mg/min/kg)及びアミノピリン呼気試験(0.60±0.33%dose/kg/mmolCO2)は1年間変化しなかった。全ての患者において血清総胆汁酸は増加し、UDCAがメインの胆汁酸になった。ステージI〜IIIの患者では血清胆汁酸の増加は緩徐であったが、ステージIVでは血清胆汁酸の総量は140及び157mumol/Lに達し、その内UDCAは夫々90、103 mumol/Lであった。結論としてUDCA治療はステージI〜IIIにおいてのみ安全と思われる。胆汁酸レベルあるいは病態の組織学的レベルに基づく診断の階層化は臨床知見の観点から非常に重要である。17)Lotterer et al., 1990)

妊娠性の肝内胆汁欝滞患者(ICP)にウルソデオキシコール酸(UDCA)を投与した際の効果と安全性について検討した。ICP患者にUDCAを投与した全てのケースについて、1991年1月1日から1997年3月31日までのデータを解析した。ICP患者43名のうち19名がUDCAを投与されていた。胆汁欝滞の最初の徴候は平均妊娠29.7週で見られ、治療は平均32週で開始し平均28.5日間投与した。14名の患者はUDCA治療により臨床的な改善効果が現れ、11名では検査成績にも改善が見られた。2名は血清中の肝酵素上昇を伴って検査成績が悪化した。結論として、UDCAはICPに対し有効な治療ではあるが、妊娠中の安全性を確保するには更なる検討が必要である。  18)Berkane et al., 2000)


引用文献
1) 高橋日出彦、戸塚和男、宮下武美、薄井啓子、宮本甲生
Wistar系ラットに対するUrsodeoxychol酸腹腔内投与による亜急性毒性について基礎と臨床 1975; 9: 3183
2) 高橋日出彦、戸塚和男、宮下武美、薄井啓子、宮本甲生
Wistar系ラットに対するUrsodeoxychol酸経口投与による亜急性毒性について基礎と臨床 1975; 9: 3167
3) 高橋日出彦、戸塚和男、宮下武美、宮本甲生
Wistar系雄ラットに対するUrsodeoxy-chol酸3ヶ月間経口投与による亜急性毒性について基礎と臨床 1975; 9: 3203
4) 高橋日出彦、戸塚和男、宮下武美、宮本甲生
Wistar系雄ラットに対するUrsodeoxy-chol酸6ヶ月間経口投与による慢性毒性について  基礎と臨床 1975; 9: 3209
5)
Mutat. Res. 1985; 158(1-2): 45-51 (link to PubMed)

6) Mutat. Res. 2001; 495(1-2): 1-9 (link to PubMed)
7) 豊島 滋、藤田晴久、佐藤隆一、加島正明、佐藤七平 Ursodeoxycholic Acidの生殖に及ぼす影響に関する動物試験(第1報) 特にラットの妊娠前並びに妊娠初期に経口投与された時の母体並びに胎仔に及ぼす影響  応用薬理 1978; 15(5): 923-30
8) 豊島 滋、藤田晴久、桜井敏晴、佐藤隆一、加島正明 Ursodeoxycholic Acidの生殖に及ぼす影響に関する動物試験(第2報) 特にラットの器官形成期に投与された時の胎仔の発生並びに生後発育及び次世代に及ぼす影響  応用薬理 1978; 15(5): 931-45
9) 豊島 滋、藤田晴久、佐藤隆一、加島正明 Ursodeoxycholic Acidの生殖に及ぼす影響に関する動物試験(第4報) 特にラットの周産期・授乳期に投与した際の胎仔の発生並びに生後発育に与える影響について  応用薬理 1978; 15(7): 1141-55
10) Arch. Int. Pharmacodyn. Ther. 1980; 246(1): 149-58 (link to PubMed)
11) Stitinova V, Herout v, Kvitina J. Modified One-Generation Reproduction Study of Ursodeoxycholic Acid in Rats and its Subchronic Toxicity in the F1 Offspring. Toxicol. Lett. 2003; 144(Suppl 1): S109
12) 豊島 滋、藤田晴久、佐藤隆一、加島正明、佐藤七平 Ursodeoxycholic Acidの生殖に及ぼす影響に関する動物試験(第3報) 特に妊娠家兎の器官形成期に経口投与された時の胎仔に与える影響について  応用薬理 1978; 15(7): 1133-40
13) Acta Gastroenterol. Latinoam. 1981; 11(1): 195-201 (link to PubMed)
14) Lab. Invest. 1982; 46(4): 428-37 (link to PubMed)
15) Pharmacol.Res. 1994; 29(2): 187-95 (link to PubMed)
16) Gastroenterology, 1983; 85(6): 1257-64  (link to PubMed)
17) J. Hepatol. 1990; 10(3): 284-90  (link to PubMed)
18)  Acta Obstet. Gynecol. Scand. 2000; 79(11): 941-6  (link to PubMed)

Abbreviation

ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature


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