日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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名 エデト酸カルシウム二ナトリウム
英文名 Calcium Disodium Edetate

CAS 62-33-9(無水物)(link to ChemIDplus)

別名 エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム、Calicium Disodium Ethylendiaminetetraacetate,
収載公定書  薬添規(2003) USP/NF(28/23)
用途 安定(化)剤

JECFAの評価 (link to JECFA)
CaNaEDTA,腸管吸収はほとんどない。本化合物の代謝は認められず,生体内蓄積も見られない。金属中毒処置における膨大な臨床使用経験から、ヒトでは安全であることが示されている。ラットでの長期摂取実験およびイヌにおける1年間の実験において、両動物種における鉱質代謝を妨害しないことが判明した。鉱質代謝への有害作用や腎毒性は、高用量の経口投与後にのみ認められた。毒性作用を生じない用量:ラット 食餌中 50,000ppm、250 mg/kg/日相当。 ヒトに対する一日摂取許容量の概算: 条件なしの許容量 0−1.25 mg/kg; 条件付の許容量 1.25−2.5mg/kg


単回投与毒性 (link to ChemIDplus)

動物種

投与経路

LD50(mg/kg体重)

文献

ラット

経口

10000+740

Oser et al. (1963)a

ウサギ

経口
腹腔

7000
500

Oser et al. (1963)a
Buer
 et al., (1952b)

イヌ

経口

12000

Oser et al. (1963)a

ラット経口投与のLD50は、胃内の食餌の存在、またはCa, Fe, CuまたはMnの予めの不足状態による影響を受けなかった.Oser et al.1963a)。 250 mg/動物以上の経口投与により、若齢ラットに下痢が起こった(Foreman et al., 1953)。CaEDTAの過量の非経口投与による腎臓障害が引き起こされたとする文献は多い。Lachinit (1961)c)による総説がある。ヒトでのEDTAネフローゼに類似する腎障害は、ラットでも生じた。EDTA二ナトリウムを400−500 mg腹腔内21日間投与で、腎臓の近位曲尿細管の重篤な水疱性変性を引き起こした。Ca,NaEDTAは、58%の動物に極微小の水疱性変化が生じたが、注射の中止により2週間後には消失した(Reuber and Shamieller, 1962)e)。        


反復投与毒性 (link to TOXLINE)
ラット
各群5匹のラット群にCaNaEDTA250または500 m/kgを腹腔内に毎日3-21日間投与し、数匹はさらに2週間観察した.体重増加は良好で、肺、甲状腺、腎臓、肝臓、副腎、小腸および心臓は、組織学的に正常であった。500mg投与で、糸球体ループ被膜下の弱から中等度の巣状膨潤と増殖のある水疱性変化が認められた。250mg では極微小な変化で、完全に回復した。コルチゾンの同時投与で障害の程度は、少なかった。(Renber and Schmeller,1962)d)

雌雄3匹のラット群に通常の塩分混合物の半量含有低鉱質食(2.5%に対し1.25%)にCaNa2EDTA0%および1.5%添加餌を4ヶ月与えた。試験群は、体重増加が減少したが、一般的な動物の状態には明確な相違はなかった(Yang,1964)e)。

雌雄8-13匹のラット3群にCaNa2EDTA0%、0.5%および1.0%含有低鉱質食を205日間与えた。対照群に比べ、体重増加、死亡率、組織全体の病理、肝臓、腎臓および脾臓の組織病理学に関しては明確な相違はなかった。しかし、肝臓の類洞のわずかな肥大が見られた。血液凝固時間、全骨灰および血中カルシウムレベルには悪影響はなかった。臼歯の明らかなう食は認められなかった。基礎代謝は正常の範囲であった(Chan,1964)f)。

雌雄25匹のラット4群に0、50、125、および250 mg/kgのCaNa2EDTA含有食を2年間投与した。投与は4世代に渡って成功した。ラット各群は、12週間投与後交配させ、そして3週間授乳させ、次世代胎児を作る前の1週間は授乳を休止した。各群の雌雄10(F1世代)および同様なF2およびF3世代は、胎児を2回産ませた。F1,F2およびF3の胎児は、対照と250 mg/kg群のみが、F0世代の2年間の実験の最後まで継続した。F3,F2,F1およびF0世代にそれぞれ、0,0.5,1.5または2年間試験食を摂取したラットについて、最後の所見を観察するJことが出来た。全ての世代で、離乳期間の12週間後は、外見や行動に重要な異常は何もなかった。経口投与実験は、体重増加、食餌効率、血球合成、血糖、非タンパク製窒素、血清カルシウム、尿、臓器重量および肝臓、腎臓、脾臓、心臓、副腎、甲状腺および性腺の組織病理学的について統計的に有意な差異は認められなかった。繁殖力、授乳および離乳は交配に影響しなかった。死亡率およびがん発生率は、投与量とは何の関係もなかった。プロトロンビン時間は、正常であった。骨および歯の石灰化におけるキレート作用に対する知見は何もなかった。肝臓キサンチンオキシダーゼおよび血中炭酸脱水酵素は変化しなかった(Oser et.. al.,1963 ) a)

イヌ
1
頭のオスおよび3頭のメス4群の雑種犬(mongrel)に、0,50,125および250 mg/kgのCaNa2EDTA含有食を毎日、12ヶ月間与えた。全体的に良好な健康状態で、血液細胞、ヘモグロビン、尿(pH、アルブミン、糖、沈査)に特に変化はなかった。血糖、非タンパク性窒素およびプロトロンビン時間は正常であった。肋骨および長骨のレントゲン写真は、250mg群では変化は何ら認められなかった。全てのイヌは1年間生存した。全体的および微視的知見は正常であった(Oser,1963a)


遺伝毒性 (link to CCRIS)


がん原性 (link to CCRIS)


生殖発生毒性 (link to DART)

 
局所刺激性


その他の毒性
14C
標識CaNa2EDTAを、50mg/kgで食餌としてラット群に与えたとき、わづかに2−4%の範囲で吸収された。投与量の80-90%が、24時間以内に糞中に排泄された.吸収は48時間たっても行われていた。胃の低いpHではカルシウムキレートは解離し、遊離酸の沈殿になり、これは腸で緩やかに再度溶解する(Foreman et al., 1953)g)。

摂取実験において、ラット各群にEDTA2Na0.5、 1.0および5%で混餌により与えると、糞中の排泄物として各99.4、 98.2および97.5%が含まれていた(Yang, 1964e)。 

同様にラット用いた実験では、実質的にほぼ同様な結果が得られた。95 mgEDTA2Na/ラットの単回投与32時間後に93%が結腸から回収された。EDTA2Na47.5、95.0および142.5mgを投与した後、尿中に回収したEDTA量は、投与量に正比例していた。このことはEDTAは胃腸管から受動拡散により吸収亜sれたことを示唆している.腸の固有運動性は本化合物により影響を受けなかった(Chan,1964)f)。

総ては未変化体で体内を通過した.最大血症中レベルは、投与後約50分に見られた.本物質の0,1%以下は、酸化されてCO2となり、どの臓器においても本物質を濃縮しなかった。静脈内注射後、CaNa2EDTAは、急速に系血管を通過し、約90%が体液と混ざったが、赤血球へは侵入せず、糸球体ろ過と同様に尿細管排泄によって腎臓からろ過された(Foreman et al., 1953)g)。

ラットに非経口投与後、注射した14C標識CaNa2EDTA95-98%が、6時間以内に尿中に出現した。同様なことは、14C標識CaNa2EDTAを用いてヒトでも認められた。2人の被験者に3,000 mgを静脈内投与したとき、12-16時間以内にほとんど全部排泄された(Srboa and Teisinger1957)h)。

14C
標識CaNa2EDTAを皮膚に塗布後、尿中の最大放射能活性は、わずかに10ppmであった(Foreman and Trujillo,1954i

生物学的系では、カルシウムイオンは通常EDTAに最も接近し易いであろう。一般的に亜鉛がそれに続くと思われる。他の生理学上重要な金属の全利用率は、おそらく順序がある;Cu>FeMn>CoChenoweth1961)j)。

EDTA
は鉄キレートを形成することから、pH7.4でフェリチンから全鉄イオンの1.4%を除去する (Westerfield,1961)l)。

In
 vitroでのFe-トランスフェリンからEDTA鉄の移行は、24時間で1%以下の割合で起こる。ウサギを用いたin vivo実験で、鉄の移行はFeEDTAからトランスフェリンにのみ起こり、逆は起こらないことが明らかなった。組織鉄がEDTAを含めて各種キレート剤と反応するのは、鉄が過剰に存在するのみと見られる (Cleton et al., 1963)m)

EDTA
とシデロフィリン混合液の均一分布はEDTA:シデロフィリンが20−25:1の比のときにのみ得られた (Rubin,1961)n) 

標識FeEDTAの85%が糞中に排泄され、尿中には存在しなかったけれども、ヒトの鉄欠乏性をFeEDTA処置し、治療に成功した。しかし、赤血球は標識鉄を含有しており、網内系取り込みが起こっていた。静脈内投与したFeEDTAは、定量的に尿中に回収されるので、FeEDTAを経口投与したときには、吸収される前に分解されると結論された(Lapinleimu and Wegelius, 1959)g)。

ウサギに経口投与したFeEDTAは、約10%が吸収され、残りは糞中に排泄された。貧血ラットでは、6mg/kgFeEDTAを経口投与すると50%吸収されたが、FeSO4では25%が吸収された(Rubin and Priciotto, 1960)o)。

鉄およびカルシウムを敵量以上に含有する餌に1%のFeEDTAを加えてラットに投与すると、鉄の吸収および貯蔵が低下し、血漿および尿中量が増加した。しかし、カルシウム代謝には影響しなかった(Larsen et al., 1960)p)。

ラットに0.15mg鉄、4.26mgカルシウムおよびTmgEDTA(餌に100ppm相当で)含有食を83日間投与すると、肝臓や血漿の鉄含量など、カルシウムや鉄代謝になんら影響はなかった(Hawkins, 1962)q)。 

CaNa2EDTA
は、亜鉛の排泄を促進した(Perry and Perry, 1959))。 

CaNa2EDTA
は、大豆含有食中の亜鉛の利用を増加した(Kratzer et al., 1959)s)。

CaNa2EDTA
は、Co, Hg, Mn, Ni, Pb, TlおよびWの排泄を促進した。CaEDTAによる重金属中毒の治療は確立しているので、鉛などの通常の金属毒への使用は文献にはもはや報告されない(Foreman, 196)t)。 

EDTA
は、キレート中の90St, 101Ru, 141Baおよび226Raの蓄積を阻害しなかった。91Y, 239Puおよび238U,EDTAによく反応して、排泄は促進された(Catsh, 1961)u)。

EDTA
は、経口又は静脈内投与により血清コレステロール低下作用を示した。血清のコレスエロール輸送能が減少することによるかもしれない(Lelieve and Batz, 1961)v)。  

Na2EDTA
およびCaNa2EDTAの静脈内投与は、ネコの血圧に一定程度の薬理学的影響を与えた; 0−20mg体重CaNa2EDTACaとして)は僅かに上昇; 20−50mg/kgは2相性反応; 50mg/kgは明らかに低下(Marquardt and Schumacher, 1957)In vitroの作用については省略した。


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
CaNa2EDTAは、ヒトでも僅かしか吸収されなかった。投与した3gのうち2.5%が尿中に排泄された(Srbova and Teisinger, 1957))

健常人にゼラチンカプセルで1.5mgの14C標識CaNa2EDTAを投与すると5%程度が吸収された(Foreman and Trujillo, 1954)i)。


引用文献
1) Oser, B.L.Oser, M. and Spencer. Toxicol. Appl. Pharmacol., 5, 142 (1963) 
2) Bauer, R.O., Rullo, F.R., Spooner, G. and Woodman, E. Fed. Proc., 11, 321 (1952)
3) Lachnit, V., Arch. Gewerbepath. Gewerbehyg., 18, 495 (1961) 
4) Reuber, M.D. and Schmieller, G.C., Arch. Environ. Health, 5, 430 (1962) 
5) Yang, S.S., Food Cosmet. Toxicol., 2, 763 (1964) 
) Chan, M.S., Food Cosmet. Toxicol., 2, 763-765 (1964)  (link to the Journal)

7) Foreman, H., Vier, M. and Magee, M., J. Biol. Chem., 203, 1045 (1953)
) Srbrova, J. and Teisinger, J., Arch. Gewerbepathol., 15, 572 (1957) 
) Foreman, H. and Trujillo, T.T., J. Lab. Clin. Med., 43, 566 (1954) 
10) Chenoweth, M.B., Fed. Proc., 20 (Suppl.10), 125 1961)
11) Westerfeld, W.W., Fed. Proc., 20(Suppl. 10), 158 (1961)
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13) Rubin, M., Fed. Proc., 20  (Suppl. 10), 149 (1961) 
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19) PerryH.M. and Perry, E.F., J. Clin. Invest., 38, 1452 (1959) 
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21) Foreman, H., Fed. Proc., 20 (Suppl. 10), 191 (1961) 
22) Catsch, A., Fed. Proc., 20 (Suppl. 10), 206 (1961)
23) Lelievre, P. and Betz, E.H., C.R. Soc. Biol. (Pris), 155, 1890 (1961)

Abbreviation

ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature

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