日本医薬品添加剤協会
Safety Data
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和名 アジピン酸ジオクチル
英文名 Dioctyl Adipate

CAS 103-23-1  (link to ChemIDplus)
別名 ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)
収載公定書  薬添規(JPE2018) 外原規(2006)
用途 可塑剤

単回投与毒性  (link to ChemIDplus)

動物種

投与経路

LD50

文献

マウス

経口

雄 15.0 g/kg
雌 24.6 g/kg

NTP, 1982 1)

マウス

腹腔内

5000 mg/kg

RTECS 2)

マウス

腹腔内

>100 mL/kg

Singh AR, 1975 3)

ラット

経口

雄 45.0 g/kg
雌 26.0 g/kg

NTP, 1982 1)

ラット

経口

> 6 g/kg

Andreeva GA, 1971 1)

ラット

経口

> 7.4 g/kg

CTFA, 1967 1)

ラット

経口

9.11 g/kg

Smyth HF, 1951 1)

ラット

経口

7392 mg/kg

RTECS 2)

ラット

腹腔内

46000 mg/kg

RTECS 2)

ラット

腹腔内

>50 mL/kg

RTECS 2)

ラット

静脈内

900 mg/kg

NTP, 1977 1)

ウサギ

腹腔内

38000 mg/kg

RTECS 2)

ウサギ

静脈内

540 mg/kg

NIOSH, 1977 1)

ウサギ

経皮

>8.7 g/kg/24h

CTFA, 1967 1)

ウサギ

経皮

16 mL/kg

RTECS 2)

ウサギ

経皮

8410 mg/kg/24h

RTECS 2)

モルモット

経口

12900 mg/kg

RTECS 2)




反復投与毒性 (link to TOXLINE)
マウス又はラット
B6C3F1マウス及びF344系ラットそれぞれに1群雌雄5例ずつアジピン酸ジオクチルを飼料に混入して14日間投与した。用量は雄では0,3100,6300,12500,25000,50000 ppm,雌では0,6300,12500,25000,50000,100000 ppmとした。体重増加抑制が雄性ラットでは50000 ppm群で,雌性ラットでは25000 ppm以上の用量群で認められた。100000 ppm群雌性ラットでは死亡例1例,体重減少がみられた。雌性マウス 100000 ppm群では全例死亡した。雄性マウス50000 ppm群,雌性マウス25000 ppm以上の用量群では体重減少が認められた。1) (NTP, 1982)

B6C3F1マウス及びF344系ラットそれぞれに1群雌雄10例ずつアジピン酸ジオクチルを0,1600,3100,6300,12500,25000 ppm 飼料に混入して13週間投与した。その結果,ラットでは高用量の2群の雄では体重増加抑制が認められたが,その他,被験物質投与に起因した変化はみられなかった。マウスでは3100 ppm以上の用量群の雄で体重増加抑制が認められた。その他,被験物質に起因した変化はみられなかった。1) (NTP, 1982)

ラットにアジピン酸ジオクチル 0.4,1.0,2.0 g/kgを6ヵ月間強制経口投与した結果,血中酵素に変化は認められなかったが,スフルヒドリル化合物濃度が上昇した。投与開始初期には肝代謝能は抑制されたが,6ヵ月後には亢進していた。1) (NTP, 1982)

ラットにアジピン酸ジオクチル 0.1 g/kgを10ヵ月間強制経口投与した結果,中枢興奮性が抑制された。1) (Andreena GA, 1972)


遺伝毒性  (link to CCRISGENETOX)

試験

試験系

濃度

結果

文献

復帰突然変異

ネズミチフス菌 TA98
TA100,TA1535
TA1537

直接法及び代謝活性化法
:100-10000 μg/plate

陰性

Zeiger E. et al.,19854)

優性致死

Swiss白色マウス腹腔内投与

0,0,0.47,0.93,4.7,9.3 g/kg

陽性

Singh AR et al.,1975 1,3)

優性致死

Swiss白色マウス腹腔内投与

1000mg/kg

陽性

Singh AR et al.,1975 5)

DNA Synthsis

F344系ラット肝細胞

378 μmol/kg

陰性

Busser MT et al.,1987 6)

染色体異常

ハムスター 卵巣細胞由来

400mg/L

-

RTECS 7)

Phage inhibition

大腸菌

25 μg/well

陰性

Rossman TG et al.,1991 8)

in vivo-in vitro
Replicative
DNA synthesis

B6C3F1マウス 経口

1000, 200 mg/kg

陽性

Miyagawa M et al., 1995 9)




がん原性  (link to CCRIS)
マウス又はラット
C3H/AnFマウスにアジピン酸ジオクチルを含めて6種類の化合物を皮下及び経皮投与してがん原性を調べた。3種類はがん原性陽性物質を選択した。アジピン酸ジオクチルは1群雌雄50例に10 mgを皮下投与し,0.1,10 mgを剃毛した背部皮膚に貼付した。いずれの動物も寿命まで観察した。その結果,投与に起因した毒性所見はみられず,薬物に起因した催腫瘍性も認められなかった。1) (Hodges HC et al. 1976)

B6C3F1マウス雌雄にアジピン酸ジオクチルを飼料に25000,12000 ppm混入して雄では102-104週間,雌では105-106週間投与した。その結果,肝細胞腺腫,肝細胞癌の頻度増加が認められ,催腫瘍性は陽性と判断された。10) (Kluwe WM et al., 1982)

"B6C3F1マウス及びF344系ラットそれぞれに1群雌雄50例ずつアジピン酸ジオクチルを0,12000,25000 ppm 飼料に混入して103週間投与した。その結果,ラット25000 ppm群では体重増加抑制が認められた。生存率は対照群,12000,25000 ppm群のラットでそれぞれ,雄では68%,68%,80%で,雌では58%,78%,88%であった。腫瘍性・非腫瘍性病変の発生頻度は対照群,投与群で差は認められなかった。従って,ラットではアジピン酸ジオクチルに催腫瘍性はないとみなした。マウスでは,投与群の平均体重は対照群のそれと比較して低下がみられた。生存率は対照群,12000,25000 ppm群のマウスでそれぞれ,雄では72%,64%,82%で,雌では84%,78%,73%であった。肝細胞腺腫の発生頻度は雄では投与量に応じて増加し,高用量群では統計学的に有意差が認められた。しかし,肝細胞癌の発生頻度は投与群雄で増加がみられたが,統計学的有意差は認められなかった。雌では,肝細胞腺腫及び肝細胞癌ともに投与量に応じて増加し,統計学的有意差を伴っていた。従って,B6C3F1マウスではアジピン酸ジオクチルの催腫瘍性は陽性とみなした。1) (NTP, 1982)"

ラットにアジピン酸ジオクチルを0,0.1,0.5,2.5%飼料に混入して2年間投与した。その結果,合計33種類の腫瘍が観察され,リンパ腫,腺腫が主なものであったが,1例で線維腫が認められた。また,2例で乳腺癌,1例で腎臓の癌腫がみられたが,これらの腫瘍の発生頻度は対照群と投与群で差はなく,混餌投与による影響も認められなかった。これらのことから,ラットにアジピン酸ジオクチルの催腫瘍性はないとみなされた。1) (Hodges et al. 1976)

F344系ラット雌雄にアジピン酸ジオクチルを飼料に25000,12000 ppm混入して102-104週間投与した。その結果,催腫瘍性は認められなかった。10) (Kluwe WM et al., 1982)

イヌ
イヌにアジピン酸ジオクチルを0,0.07,0.15,0.2%飼料に混入して1年間投与した。その結果,腫瘍は認められなかった。1) (Hodges et al. 1976)


生殖発生毒性  (link to DART)
ラット
妊娠ラットにアジピン酸ジオクチルを妊娠5,10,15日に0,0.93,4.7,9.3 g/kg 腹腔内に投与した。妊娠20日目に屠殺して,胚・胎児毒性,催奇形性を調べた。投与群の胚吸収率は低用量から5.3,3.1,7.0%で対照群とほぼ同等か,わずかに高い値であった。胎児奇形が対照群1例,4.7g/kg群1例,9.3g/kg群2例に認められた。骨格異常が対照群6.3%,低用量群より3.6%,9.4%,7.1%であった。内臓異常は低用量群より0%,3.2%,4.0%であった。対照群には内臓異常は認められなかった。アジピン酸ジオクチルでは胎児体重の増加抑制がみられた。これらのことから,催奇形性はないとみなした。1,3)(Singh AR et al., 1975)

ラットにアジピン酸ジオクチルを妊娠5〜15日に腹腔内投与した試験では,30 g/kg群で特定の発育異常が認められ、15 g/kg群では胎児・胚への影響がみられた。7)


局所刺激性
白色ウサギ6例にアジピン酸ジオクチル原液 0.1 mLを片側の眼に点眼して24,48,72時間目に刺激性をDraize法で評価した。その結果,いずれの時点でも刺激性は認められなかった。1) (CTFA 1967)

白色ウサギ6例にアジピン酸ジオクチル原液 0.5 mLを健常皮膚,損傷皮膚に貼付して24時間閉塞した。24及び48時間目に皮膚の状態をDraize法で評価した結果,24時間目で軽微で僅かに認識できる紅斑が全例に認められた。これらの変化は72時間目には完全に消失または減弱がみられた。一次刺激性評点は0.83で極めてわずかな刺激性(very mild irritant)とみなされた。1) (CTFA 1967)

白色ウサギ雌6例を用いて,アジピン酸ジオクチルを0.175%含有する製剤の粘膜刺激性を調べた。製剤0.1 mLを性器粘膜に単回投与した。7日間観察したが,刺激性は認められなかった。1) (CTFA, 1982)


その他の毒性
抗原性
アジピン酸ジオクチルをオリーブ油に0.1%に希釈して,白色モルモット10例の皮内に投与して,感作能を調べた。投与は隔日,週3回,合計10回実施した。初回投与は0.05 mL,以後は0.1 mLとした。最終投与後2週目に0.05 mLを感作した。観察はいずれも投与24時間後に行い,評点をつけた。その結果,アジピン酸ジオクチルの感作能はないとみなされた。1) (CTFA, 1967)


ヒトにおける知見 (link to HSDB)
アジピン酸ジオクチルを0.01%含有する口紅の感作能及び刺激性についてSchwartz-Peckパッチ法を用いて調べた。100名の清浄した背部に24時間パッチを閉塞貼付した。同時に開放パッチも48時間貼付した。14日間の休薬後,第2回目の閉塞及び開放パッチを施した。48時間後に評価を行った。また,360nmの紫外光を12インチの距離から1分間照射した。この部位は照射後48時間目に評価した。100名中2名では,初回の開放パッチで軽度な紅斑が認められ,1例では第2回の開放パッチで重篤な紅斑,水疱がみられた。紫外線照射では変化は認められなかった。これらのことから,刺激性はなく,感作能及び光刺激性はないとみなされた。1)(CTFA, 1977)

アジピン酸ジオクチルを0.01%含有する口紅についてSchelanski and Shelanski Human Repeated Insult Patch Test法を用いて光刺激性を調べた。49名の皮膚に24時間開放及び閉塞パッチを10回貼付した。2-3週間の休薬後,11回目の感作パッチを48時間貼付し,パッチを剥離後評価した。また,360nmの紫外光を12インチの距離から1分間照射した。本試験では光刺激性は認められなかったが,3名では軽度な反応がみられた。重度な反応は第6回目の開放パッチ後1例,第11回目の感作開放パッチで1例に認められた。1)(CTFA, 1977)

アジピン酸ジオクチルを9.0%含有する化粧水についてDraize-Shelanski patch test変法で209名の男女を用いて感作能及び刺激性を調べた。化粧水は希釈することなく,週3回3週間背部皮膚に貼付した。パッチは除去後,次回のパッチ貼付前に評価した。2週間の休薬後,48時間感作パッチを2回貼付し,貼付後48,96時間目の反応を評価した。その結果,中等度ないし重度な紅斑が認められ,1例では,第2回目の感作後,貼付部分の25%以上に斑点を伴う紅斑がみられた。1)(CTFA, 1978)

アジピン酸ジオクチルを9.0%含有する化粧水についてDraize-Shelanski patch test変法を用いて151名の男女を用いて感作能及び刺激性を調べた。その結果,2例で刺激性が認められたが,意義ある感作能,一次刺激性とはみなさなかった。1)(CTFA, 1976)

アジピン酸ジオクチルを0.175%含有する化粧水について21日間の累積刺激性を調べた,化粧水0.2 mLをコットンパッチに含ませ11名の女性の背部に貼付した。貼付後23時間目に除去し,1時間後に評価した。その結果,評点は72/630であった。そのため,軽度な刺激性(slightly irritating)とみなされた。1)(HTR, 1978)

アジピン酸ジオクチルを9.0%含有する製剤を用いて光パッチテストをヒトで実施した。25名に製剤0.1 mLのパッチを施した。24時間後にパッチを除去して150WキセノンランプでUVA及びUVB(290-400 nm)を照射した。48時間後に照射部位の刺激性を評価した。これを週2回繰り返して,合計6回の光照射を行った。10日間後に感作パッチを24時間貼付して,その後に光照射を3分行った。この時の評点は照射後0.25,24,48.72時間後に実施した。その結果,25名全員,光毒性,光アレルギー性を認めなかった。1)(Hodge HC, et al., 1966)


引用文献
1)
J. Am. Coll. Toxciol. 1984: 3: 101-130 (link to the Journal)
2) Anonymous Beratergremium fuer umweltrelevante Altstoffe (BUA. Gesellschaft Deutscher Chemiker. Weinheim ; New York : VCH) 1997: -: 153-
3) Toxicol. Appl. Pharmacol. 1975;32:566-576  (link to PubMed)
4) "AMA Archives of Industrial Hygiene and Occupational Medicine. (Chicago, IL) V.2-10, 1950-54. For publisher information, see AEHLAU. CODEN Reference: 4,119,1951 "
5)
Environ. Mutagen. 1985: 7: 213-232  (link to PubMed)
6) Carcinogenesis 1987: 8: 1433-1437   (link to PubMed)
7) ": Environmental and Molecular Mutagenesis. (Alan R. Liss, Inc., 41 E. 11th St., New York, NY 10003) V.10- 1987- CODEN Reference: 10(Suppl "
8)
Mutation Research. 1991; 260: 349-367  (link to PubMed)
9)
Mutation Research 1995; 343: 157-183  (link to PubMed)
10)  Carcinogenesis 1985; 6: 1577-1583  (link to PubMed)
 
 Abbreviation   
TOXNET DB; ChemIDplus DB in TOXNET, CCRIS;Chemical Carcinogenesis Research Information System , DART; Developmental Toxicology Literature
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