和名 アルギン酸ナトリウム
英文名 Sodium Alginate
CAS 9005-38-3 (link
to
ChemIDplus),
(link to JAN DB), (link to
JANe DB)
別名
Algin、Alginic acid sodium
salt[Merk Index]
収載公定書 薬添規(JPE2018), 食添(JSFA-IX) USP/NF(27/22) EP(4)
用途 安定(化)剤、基剤、結合剤、懸濁(化)剤、粘稠化剤、粘稠剤、分散剤
■JECFAの評価 (link to
JECFA)
ヒトのADI(1日摂取許容量);"Not specified"(特定せず) 1) (1992年,第39回)
■単回投与毒性 (link
to
ChemIDplus)
アルギン酸とその塩の急性毒性
化合物
|
動物種
|
投与経路
|
LD50(mg/kg体重)
|
文献
|
アルギン酸ナトリウム
|
マウス
|
静脈内
|
200未満
|
Solandt,
1941
|
アルギン酸ナトリウム
|
マウス
|
腹腔内
|
最小致死量
(LDLo) 500
|
Arora et
al., 1968
|
アルギン酸ナトリウム
|
ラット
|
経口
|
>5000
|
Woodward
Research Corp. 1972
|
アルギン酸ナトリウム
|
ラット
|
静脈内
|
1000
|
Sokov, 1970
|
アルギン酸ナトリウム
|
ウサギ
|
静脈内
|
約100
|
Solandt,
1941
|
アルギン酸ナトリウム
|
ネコ
|
腹腔内
|
約250
|
Chenoweth,
1948
|
アルギン酸ナトリウム
|
ラット
|
腹腔内
|
1600
|
Thienes et
al., 1957
|
アルギン酸カルシウム
|
ラット
|
静脈内
|
64
|
Sokov, 1970
|
アルギン酸カルシウム
|
ラット
|
腹腔内
|
1407
|
Sokov, 1970
|
アルギン酸の1%懸濁液0.1 mlをマウスまたはラットに皮下注射あるいは筋肉内注射しても、有害反応は認められなかった1) (Chenoweth, 1948)。
■反復投与毒性 (link to
TOXLINE)
ラット 12日間反復投与毒性試験
Charles river CD系ラット雌雄4匹からなる群に、対照飼料(デンプン)あるいはアルギン酸ナトリウムを10%添加飼料を12日間供与した。糞便中の脂質はアルギン酸群では5倍に増加し、総血中コレステロールは低下したが、有意ではなかった。糞便中の総ステロール量は多少増加した1)
(Mokady, 1973)。
ラット 2または4週間反復投与毒性試験
雄のSprague-Dawley系ラット(5〜7匹/群)に対して、5%スクロースあるいは5%アルギン酸ナトリウムを添加した非繊維性飼料を2または4週間供与したところ、膵液−胆汁分泌が増加した。アルギン酸あるいはアルギン酸カルシウムを与えても、膵液−胆汁分泌に影響は認められなかった1)
(Ikegami et al., 1989)。
ラット 4週間反復投与毒性試験
21日齢のWistar系ラット雄10匹の群に、アルギン酸ナトリウムを0、0.5、1、2または3%添加した、10%カゼインまたは10%大豆タンパク質を含有する飼料を4週間供与した。アルギン酸ナトリウムはタンパク質効率(protein efficiency ratio)に影響は及ぼさなかった1)
(Mouecoucou et al., 1990)。
ラット 10週間反復投与毒性試験
ラット6匹の群にアルギン酸ナトリウムを5、10、20、30%で10週間混餌投与した。最初の2週間は、明らかな栄養失調のため、20%および30%投与群で死亡率が高くなった。5%および10%投与群では寿命(生存率)に影響はみられなかった。10%投与群の体重増加量はわずかに抑制されたが、5%投与群では体重増加に影響はみられなかった1)
(Nilson & Wagner, 1951)。
ラット 4または13週間反復投与毒性試験
Wistar系ラット雌雄各10匹から成る群(体重46.0〜47.3 g)に低粘度のアルギン酸ナトリウムを0、5、15または45%で4または13週間混餌投与した。体重を毎週記録し、摂餌量を1〜4週間、および12〜13週間に測定した。最初の1週間は糞便を採取し、90日間定期的に糞便の外観を定期的に判定した。4週間後、対照群のうち1群、5%群および45%群を破棄した。13週間後に血液学的検査(ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、白血球数、白血球分画)を全ラットに実施した。14週目に全ラットを屠殺し、臓器の相対重量を測定し、全ラットの肉眼的および病理学的検査(約25箇所の組織)を実施した。
1週目に、45%アルギン酸ナトリウム群のラットは異常な脱毛を起こし、完全に脱毛した。試験の初期において45%群では激しい下痢が認められた。15%群では、1週目に異常な糞便の排泄はわずかしかなかった。45%群では、顕著な成長遅滞が見られた。15%群では、成長は正常であった。試験の最終2週間に、アルギン酸ナトリウムを他のロットに変更しなくてはならなくなった。新たなロットによる飼料を与えたところ、体重が急激に減少し、その後回復したが12週目の終わりになっても回復は完全ではなかった。試験最終週に15%群の摂餌量が低値であったのは被験物質のロットを変更したことが原因である。アルギン酸ナトリウムを与えたラットでは、摂餌量100
g当りの糞便量が著しく増加した。血液学的検査には異常は認められなかった。内容物を含む、あるいは含まない盲腸重量は、15%アルギン酸ナトリウム群で有意に増加した。肉眼的な観察では腫脹、拡張、重量増加した盲腸が認められた。病理組織学的検査では、15%投与群の雄10匹中6匹、および雌10例中3匹の膀胱で、乳頭腫の外観を呈する肥厚した尿路上皮を認めた。アルギン酸ナトリウム15%群の雄10匹中6匹、および雌10匹中2匹では、腎盂の肥厚したものも見られた尿路上皮の下、および/または腎乳頭の表面下に、わずかなカルシウム沈着を認めた。このような変化は対照群では認められなかった1)
(Feron et al., 1967)。
ラット 128週間反復投与毒性/発がん性試験
雄のアルビノラット10匹から成る2群に、アルギン酸ナトリウムの市販製剤2種を5%濃度で生涯にわたって(最高128週)混餌投与した。寿命、最高体重、摂餌量および摂水量のデータに有害な影響は見られなかった。肉眼による剖検では異常は認められなかった。病理組織学的検査は実施されなかった1)
(Nilson & Wagner, 1951)。
ラット(アルギン酸カリウム/カルシウム)
アルギン酸カリウムを5%混餌したところ、下剤として作用(下痢)したが、アルギン酸カルシウムの5%混餌投与では、このような作用は認められなかった1) (Thienes et al., 1957)。
ラット(アルギン酸)
ラット5匹からなる群に、アルギン酸を5%、10%、または20%の濃度で2ヶ月間混餌投与した。20%混餌投与群のラットでは、摂餌量が減少し、体重増加が抑制された。低用量群のラットに影響は認められなかった1)
(Thienes et al., 1957)。
イヌ 1年間反復投与毒性試験
ビーグル犬各6頭からなる群(雌雄同数に分割)に、アルギン酸ナトリウムを0、5、あるいは15%の濃度で1年間混餌投与した。体重増加、行動、外観、定期的な血液学的検査、試験終了時の尿検査、血中尿素窒素、血中グルコースおよび血清アルカリホスファターゼについては、正常であった。肉眼的および病理組織学的検査では、投与に起因する影響は認められなかった1)
(Woodard Research Corp., 1959)。
モルモット 10週間、7ヶ月間反復投与毒性試験
雄の成熟アルビノモルモット5匹からなる2群に対し、アルギン酸ナトリウム1%を10週間飲水投与した。さらに6匹からなる4群により、7ヶ月間試験を行った。有害な影響は認められず、結腸潰瘍は発生しなかった1)
(Watt & Marcus, 1972)。
■遺伝毒性
表.アルギン酸ナトリウムおよびアルギン酸に関する遺伝毒性試験結果 1)
試験
|
試験系
|
濃度μg/plate
|
結果
|
文献
|
エームス試験
|
Salmonella typhimurium
|
最高10 mg/プレート
|
陰性※1
|
Isidate et
al., 1984
|
染色体異常試験
|
Chinese
hamster
肺細胞(CHL細胞)
|
最高10
mg/ml
|
陰性※2
|
Isidate et
al., 1984
|
染色体異常試験
|
Chinese
hamster
卵巣細胞
|
1, 50,
100mg/mL
|
陰性※2
|
Larripa et
al., 1987
|
優性致死試験
|
マウス
ICr/Ha Swiss
|
82, 200, 1000
mg/kg,
体重腹腔内投与
|
陰性※3
|
Epstein et
al., 1972
|
※1 代謝活性化ありの試験
※2 代謝活性化なしの試験
※3 被験物質アルギン酸
■がん原性
マウス 89週間反復投与毒性/発がん性試験
Swiss系マウス(6週齢)雌雄各75匹からなる群に、対照飼料(加熱処理済みデンプン)、またはアルギン酸ナトリウム含有飼料を89週間投与した。アルギン酸ナトリウムの用量は漸増させて25%とした(投与39週目)。状態、行動、糞便の外観について連日観察した。体重は投与1、2、4週目に記録し、その後は4週間に1回記録した。投与87週目に各群の雌雄各5匹以上について摂水量を測定した。投与40週目および78週目に各群の雌雄10匹ずつについて血液学的検査を行った。投与78週目および86週目に一晩絶食後、各群の雌雄各10匹について血中グルコースおよび血中尿素窒素濃度を測定した。82週目に各群雄5匹以上について、投与86週目に各群雌8匹について尿検査を実施した。投与87週目に、生存している半数の雌雄の投与群の飼料を対照飼料に変更し、さらに2〜5週間後に雄6〜8匹について尿検査を実施した。投与82週目および85週目に各群雄4〜5匹の糞便のpHを測定した。投与80週目に各群の雌雄10匹ずつ、および投与89〜92週目に全生存動物を屠殺し、臓器重量の測定および肉眼的・病理組織学的検査を実施した。
雄の対照群では投与39〜65週目に、雄のアルギン酸ナトリウム投与群では最後の6ヶ月間に、出血性心筋炎による死亡率が上昇した。これはこの系統のマウスで観察される現象である。アルギン酸ナトリウム投与群において、雄では投与8週目以降、雌では投与20週目以降に平均体重が減少した。極端に多量の摂水量(対照値の5〜10倍)、尿量の増加、尿失禁の発生(雄8匹、雌2匹)、尿のpH上昇、尿比重の低下、血中尿素窒素量の増加、腎臓重量の増加、腎杯の拡張、遠位尿細管拡張発現率の上昇から明らかなように、アルギン酸ナトリウムはマウスに対して腎毒性を示した。さらに、盲腸および結腸の腫脹や泌尿器系の変化が認められたが、これらの変化は、可逆的なものと考えられ、投与87週目に投与を中止した後、2〜5週間以内に、完全あるいはほとんどで認められなくなった。回復期において、尿細管内石灰沈着あるいは腎盂腔(pelvic
space)での結石の発生率は低下しなかった。マウスでは、15%アルギン酸ナトリウムを与えたラットで認められたような、腎乳頭および腎盂上皮の過形成を伴った腎盂の石灰化は認められなかった。おそらく、多量の摂水量とともに低比重の多量の尿排泄があったため、25%アルギン酸ナトリウム投与群のマウス腎盂腔においてカルシウム濃縮による石灰化および石灰沈着が予防されたのであろう。さらにマウスでは、15%アルギン酸ナトリウムを与えたラットで認められたような、膀胱上皮の過形成は認められなかった。マウスにおいて、アルギン酸ナトリウムの発がん性作用は認められなかった1)
(Til et al., 1986)。
マウス 21日間反復投与毒性/発がん性試験(アルギン酸)
幼児アルビノマウス(ICR/HA系)の頸部に、アルギン酸懸濁液(10および100 mg/ml)または溶媒のみを生後1日目に0.1 ml、7日目に0.1
ml、14日目に0.2 ml、21日目に0.2 ml皮下注射し(したがって、2試験群のアルギン酸総投与量は6および60 mgである)、通常飼料で49〜53週間飼育した。試験開始時、溶媒対照群のマウスは170匹、6
mg投与群は20匹、60 mg投与群は79匹であった。腫瘍発生率は、対照範囲内であった。生後21日目における生存数は6 mg投与群で20匹中16匹、60
mg投与群では79匹中16匹であったのに対し、溶媒対照群では170匹中147匹であった。生後49週目における生存数は6 mg投与群で20匹中10匹、60
mg投与群では79匹中11匹のみであったが、溶媒対照群では170匹中118匹であった。低用量群のマウス匹数が限られており、高用量群の生存率が低く、試験期間が短期であったことから、本試験はアルギン酸の発がん性評価には不適切であったと判断されている1)
(Epstein et al., 1970)。
ラット 128週間反復投与毒性/発がん性試験
雄のアルビノラット10匹からなる2群に、アルギン酸ナトリウムの市販製剤2種を5%濃度で生涯にわたって(最高128週)混餌投与した。寿命、最高体重、摂餌量および摂水量のデータに有害な影響は見られなかった。肉眼による剖検では異常は認められなかった。病理組織学的検査は実施されなかった1)
(Nilson & Wagner, 1951)。
■生殖発生毒性 (link to
DART)
■局所刺激性
抗原性
マウス 抗原性試験 マウス4匹にヒツジ赤血球を接種する4日前および接種当日に、アルギン酸ナトリウム(Mycrocystis
pyriforma由来)100 ?gを注射した。接種7日後にマウスから採取し、ヒツジ赤血球に対する抗体の有無について赤血球凝集反応により血清を調べた。アルギン酸ナトリウムによって赤血球凝集力価は有意に上昇した。しかし、再試験を行ったところ、結果は陰性であった1)
(Mayer et al., 1987)。
■その他の毒性
ラジウム(Ra)への影響
雄マウス(C57 Black、3ヶ月齢)に226RaCl2を単回腹腔内投与し、その3日目以降、10%アルギン酸ナトリウムを含有するパンを与えた(アルギン酸ナトリウム摂取量は13
g/kg体重)ところ、脱石灰化を認めずに大腿骨の226Ra含量が減少した。溶出した226Ra量は、226Raの腹腔内投与用量と無関係であった。血中226Ra量は2倍に増加し、糞便中の226Raは60%増加した。尿中226Ra濃度は有意には変化しなかった1)
(Kestens et al., 1980)。
マウス(BALB/c、3ヶ月齢)に226RaCl2の強制経口投与2時間前に6%アルギン酸ナトリウム含有のパンを与えたところ、Ra吸収量(全身について測定)が1/100以下に低下した。同様の試験において、47Ca吸収量は、対照と比べて1/1.2しか低下しなかった1)
(Vanderborght et al., 1971)。
ストロンチウム(Sr)への影響
雄のC57 黒色マウス(事前に85Srで3週間曝露した)に5%アルギン酸ナトリウム含有のパン生地(dough)を与えたところ、血中85Sr量は増加した1)
(Vanderborght et al., 1971)。
血中85Srの増加は、腸管腔、血液および骨格間におけるSrの平衡が変化したためであるという仮説が立てられた1)
(Van Barneveld et al., 1977)。
85Srで9週間曝露した雄のBlackマウスに対して、アルギン酸ナトリウムの腹腔内投与および経口投与(デンプンを含んだパン生地状飼料によって)を同時に行ったところ、血中85Srは5倍に増加した。肝臓、腎臓、および脾臓の85Sr含量はこのような併用投与によって4〜6倍に増加した。尿による85Srの排泄は1.2倍、糞便による排泄は1.8倍に増加した。アルギン酸塩の混餌投与のみの場合、血中85Sr量は2.5倍に、肝臓、脾臓および腎臓の85Sr含量は1.5〜2倍に増加した。糞便による85Srの排泄は2.1倍に増加したが、尿による排泄は多少低下した。アルギン酸塩の腹腔内投与のみの場合、血中85Sr濃度は2.3倍に、肝臓、脾臓および腎臓の85Sr含量は2.3〜3.6倍に、尿中85Sr排泄量は1.7倍に増加したが、糞便の排泄量には変化はなかった。Srの生物学的半減期は、アルギン酸の混餌投与と腹腔内投与を併用すると、およそ半分になった。アルギン酸塩の混餌投与のみの場合、骨格からのSrの溶出速度は約40%上昇すると考えられる1) (Vanderborght
et al., 1978)。
ヒトおよび動物に対し、Sr同位体をアルギン酸塩投与前の非常に早い時期に、あるいはアルギン酸塩と共に投与したところ(大半の試験は経口投与)、Sr吸収量が減少した。動物での測定によると、Sr吸収量は1/10〜1/1.2に低下した。Srの放射性同位体は死骸、骨格、大腿骨あるいは全身で検出された。ヒトについての報告によると、Sr吸収量は1/24〜1/1.6に低下した。Srの放射性同位体は全身あるいは血漿で検出された1)
(Vanderborght et al. 1971)。
カルシウム(Ca)への影響
ラットに対して、10%アルギン酸ナトリウム添加した、または添加しない、カルシウムおよびリン酸塩添加飼料を与えた。カルシウムの吸収および骨格残留に影響は認められなかった1)
(Slat et al., 1971)。
アルギン酸ナトリウム8 gを7日間連日服用した健常成人6名においてカルシウムバランスを検査したところ、通常の混合食をとった場合と比較してカルシウム吸収に阻害は認められなかった1)
(Millis & Reed, 1947)。
アルギン酸ナトリウム1.5 gを投与した男性15名中14名では、ストロンチウムの消化管内容物が1/2に減少した。一方、カルシウムの吸収はほとんど影響を受けなかった1)
(Harrison et al., 1966)。
アルギン酸ナトリウムを添加した、または添加しない通常食を取ったヒト被験者4名で、47Caおよび85Srの吸収および残留を比較した。アルギン酸塩15〜20
g/日を7日間与えた。アルギン酸塩によって85Srの残留量は約70%低下し、47Caの残留量は7%低下した。Na、K、MgまたはPの排泄パターンに変化は認められなかった1)
(Carr et al., 1968)。
バリウム(Ba)への影響
ラットに10%アルギン酸塩(3種類)を混餌投与した。混餌投与3日目または4日目のラットに133Baを経口、腹腔内、皮下投与した。経口投与の場合、様々な種類のアルギン酸塩によって、死骸のバリウム残留量は4倍〜8倍低下した。放射性標識バリウムを非経口的に投与した場合、標識バリウムの糞便排出量がわずかに増加し、バリウム投与4日後に死骸のバリウム含量は対照と比較して5〜12%低下した1)
(Sutton et al., 1972)。
その他の無機物への影響
様々な濃度のCd(水酸化カドミウムとして)添加生理食塩水またはPb(酢酸鉛として)水溶液を用いて、アルギン酸添加(1
g/100 ml)または無添加の状態における平衡透析試験を実施した。平衡状態を室温で24時間以上保った。金属濃度が増加するにつれ、アルギン酸塩との結合量は増加した。10および50
?g /mlのPb濃度で、0.7および5 mgの Pbがアルギン酸1
gとそれぞれ結合した。0.01、0.1、5、10 ?g /lのCd濃度で、0.09、0.4、2.1、7.5
mgのCdがアルギン酸1 gとそれぞれ結合した1) (Rose & Quarterman, 1987)。
雄ラット6匹からなる群に、Pb(酢酸鉛として)をCd(水酸化カドミウムとして)とともに4週間混餌投与した。添加量は、Pb 200 mg/kg、Cd 5 mg/kgであった。さらに、飼料1
kgに対してアルギン酸40 gを混餌した。雄ラット10匹からなる対照群にはアルギン酸無添加のPb/Cd添加飼料を与えた。肝臓、腎臓、大腿骨のPbおよびCd沈着量を測定した。アルギン酸混餌群には成長抑制が認められた。アルギン酸はCd沈着量に影響を与えなかったが、大腿骨および腎臓のPb含量は2倍になった
雄ラット6匹からなる5群に、アルギン酸0、1、5、10、40 gを4日間混餌投与した。投与3日目に、全ラットに対して放射活性のあるPb 2 ?gを含有する生理食塩水0.2
mlをゾンデで強制経口投与した。投与4日目にラットを屠殺し、血液、十二指腸粘膜、肝臓、腎臓、および内臓を除いた死骸の放射活性を測定した。飼料1 kg当たりアルギン酸1
gの混餌でも、すでにPb残留量は増加していた1) (Rose & Qyarterman, 1987)。
ボランティア被験者3名の限定的な試験では、アルギン酸塩サプリメント摂取により203Pbの吸収量は変化しなかった1) (Harrison et al.,
1969)。
離乳した雄のSprague-Dawley系ラット12匹からなる2群に対照飼料、あるいはトウモロコシデンプンに代えて10%アルギン酸ナトリウムを混合した飼料を8日間与えた。アルギン酸ナトリウム投与群では、糞便の乾燥重量が顕著に増加した。CaおよびZn吸収に対してアルギン酸ナトリウムによる影響はなかった。鉄(Fe)、クロム(Cr)およびコバルト(Co)の吸収はアルギン酸ナトリウム投与群で有意に低下した1)
(Harmut-Hoene & Schelenz,
1980)。
ビタミンへの影響
健常男性被験者に経口投与されたリボフラビン-5’-リン酸の吸収は、ビタミンを2%アルギン酸塩溶液50 mlとともに投与した場合、ビタミンを水のみと投与した場合と比較して有意に増加した1)
(Levy & Rao, 1972)。
■ヒトにおける知見 (link to
HSDB)
健常成人 7日間反復投与試験
健常成人6名にアルギン酸ナトリウム8 gを7日間連日投与したところ、有害な影響は認められなかった1) (Millis & Reed, 1947)。
ヒト(患者) 7日間反復投与試験(アルギン酸塩)
臨床において完全にナトリウムが制限されている患者3例に、アルギン酸15 gを1日3回7日間経口摂取させた。糞便中のナトリウムおよびカリウム排泄量にわずかな増加が認められたが、血漿電解質濃度に変化はなかった1)
(Feldman et al., 1952)。
健常成人 23日間連日投与試験
健常成人被験者5名にアルギン酸ナトリウム175 mg/kg体重/日を7日間与え、その後さらに16日間200 mg/kg体重を与えた。1日の投与量は、3回分に量り分け、各日に一定間隔で摂取させた。各服用分は、重量を測ったアルギン酸ナトリウムを素早く攪拌しながら冷却蒸留水220
mlに加えて調製した。次に、その親水コロイドを24時間水和させて、液体ゲルにした。各被験者は、分量を測定したオレンジジュースをそれに加えて摂取した。投与期間の前に、7日間の初期対照期間を設けた。その期間中に、投与期間に摂取するのと同量のオレンジジュースを連日摂取させた。投与期間中に明らかなアレルギー反応を考慮した。初期対照期間の3日目、投与期間23日間の最終日、および回復期間7日間の最終日に、次のようなパラメータについて調べた。空腹時血糖値、血漿インスリン、呼気水素濃度、血液学的パラメータ(ヘモグロビン、ヘマトクリット、平均赤血球容積、平均赤血球ヘモグロビン量、平均赤血球ヘモグロビン濃度、赤血球数、白血球数、白血球分画、血小板数)および生化学的パラメータ(Na、Cl、K、CO2、尿素、乳酸デヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、リン酸、Ca、蛋白、アルブミン、クレアチニン、尿酸、脂質、コレステロール、高密度リポ蛋白、コレステロール、トリグリセリド)。初期対照期間および投与第3週に一般的な尿検査を実施した。初期投与期間2日目〜6日目、および投与期間の16〜20日目に、5日間の糞便を採取した。糞便通過時間、湿重量、乾燥重量、水分含量、pH、潜血、中性ステロール、脂肪、揮発性脂肪酸および胆汁酸を測定した。アレルギー反応は報告されず、また認められなかった。腸内通過時間に有意な変化なく、糞便の乾燥重量および湿重量、水分含量が有意に増加することから明らかなように、アルギン酸ナトリウムは中等度の効果がある便増量剤として作用する。糞便のpHは正常値を保った。糞便の揮発性酸総量は、被験者4名で増加したが、1名で減少した。糞便の中性ステロール総量および個々の中性ステロール量、胆汁酸総量および個々の胆汁酸量に変化はなかった。血液学的パラメータ、生化学的パラメータ、および尿検査パラメータには、有意な変化はみられなかった。ただし、インフルエンザに罹患した被験者1名では、いくつかのパラメータに変化が認められた1)
(Anderson et al., 1991)。
ヒト(高血圧患者)5‐9週間反復投与試験(アルギン酸カリウム,アルギン酸) 本態性高血圧患者6名に、アルギン酸カリウムを10%含有するアルギン酸45 gを、5〜9週間連日投与した。浮腫性疾患患者3名に同用量で約1週間投与した。この投与による有害作用、胃腸障害は認められなかった1)
(Gill & Duncan, 1952)。
アルギン酸塩加工工場作業者の所見
肺過敏症について、アルギン酸塩工場で乾燥製粉した海草や純粋なアルギン酸塩化合物の粉塵に曝されている作業者208名を検査した。これらの作業員208名のうち15名は作業時の粉塵曝露に起因する症状を明らかに示していた。血清検査では、明らかな症状が認められた作業員15名中8名および症状を認めなかった作業員1名の血清で、調製抽出物に対する沈降抗体が認められた。
これら作業員16名の胸部X線所見は正常であった。作業関連の呼吸器症状または血清中の沈降抗体のいずれか、あるいはその両方(12名中3名)が認められる作業員12名を、生の海草粉末で人工的に汚染した環境に最高1時間曝露した。曝露前、曝露直後、1、3、5、および24時間後に、肺機能を評価した。急性で、時に重度の気道閉塞が現れ、その後、遅れて伝達因子(transfer factor)の低下により肺容量の低下が発生したことから明らかなように、回復可能かつ有意な肺機能の低下が認められた1)
(Henderson et al., 1984)。
■引用文献
1) WHO Food Additive Series No.30 Alginic acid Alginic acid and its Ammonium, Calcium, Potassium and
Sodium salts 1992 (accessed ; Sep. 2004 (link to
WHO DB)
338. Alginic acid and its ammonium, calcium, potassium and sodium salts
(WHO Food Additives Series 5) (iink to
WHO DB)
■Abbreviation
ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET,
CCRIS;Chemical
Carcinogenesis Research Information System ,
DART;
Developmental Toxicology Literature
|メニューへ|
|