和名 アルギン酸
英文名 Alginic
acid
CAS
9005-32-7 (link
to
ChemIDplus)
別名
収載公定書 薬添規
(JPE2018),
食添
(JSFA-IX)
USP/NF(27/22) EP(4)
用途 賦形剤,崩壊剤,崩壊補助剤
■JECFAの評価
(link to
JECFA)
委員会は第
35回会議の報告書の
2.2.3項にある同様の作用を有する低吸収化合物
(セルロース類,多価アルコール,ゴム,デンプン類
) では,通常 『
ADIを特定しない』
と設定していることから,アルギン酸,並びにそのアンモニア塩,カルシウム塩,カリウム塩及びナトリウム塩においても 『
ADIを特定しない』
と設定した。しかしながら,この作用を有する他の化合物と同様に,多量の摂取により緩下作用を生ずる可能性があることを指摘した。
■単回投与毒性 (link
to
ChemIDplus)
化合物 |
動物種 |
投与経路 |
LD50 |
文献 |
アルギン酸 |
ラット |
腹腔内 |
1600 |
1) (Thienes at al.,
1957) |
■反復投与毒性 (link to
TOXLINE)
1群
5匹のラットにアルギン酸
5, 10, 20%含有飼料を
2ヵ月間供与した。
20%含有飼料群において摂餌量及び体重増加量の低下が認められた。
5%および
10%含有飼料群では影響はみられなかった。
1) (Thienes et al., 1957)
■遺伝毒性 (link
to
CCRIS)
試験 |
試験系 |
濃度 μg/plate |
結果 |
文献 |
復帰突然変異試験 |
ネズミチフス菌
(TA98, TA100) |
0-4.2 mg/mL |
陰性 |
De Veer I, et al
,19942) |
優性致死試験 |
マウス
(ICr/Ha Swiss系) |
82, 200, 1000
mg/kg, i.p. |
陰性 |
1) (Epstein et
al., 1972) |
■がん原性
幼若マウス (ICR/HA系) の生後1, 7, 14及び21日に,それぞれ0.1及び0.2 mLのアルギン酸懸濁液 (10, 100 mg/mL)
もしくは媒体を頸部皮下に投与した (アルギン酸投与群の総投与量は6及び60 mg)。通常飼料で49〜53週間飼育した。各群の動物数は,媒体対照群,6 mg群及び60 mg群でそれぞれ170,20及び79匹であった。腫瘍発生率は,正常範囲内であった。投与21日には6 mg群の20匹中16匹が,60
mg群では79匹中16匹が生存し,媒体対照群では170匹中147匹の生存が認められた。投与49週には6 mg群の20匹中10匹が,60 mg群では79匹中11匹のみが生存し,媒体対照群では170匹中118匹の生存が認められた。低用量群の動物数が限定されていること,高用量群の生存数が少ないこと及び試験期間が短いことから,本試験はアルギン酸のがん原性を評価するのに適当ではないものと考えられた。1) (Epstein et al., 1970)
■生殖発生毒性 (link to
DART)
■局所刺激性
該当文献なし
■その他の毒性
該当文献なし
■ヒトにおける知見 (link to
HSDB)
6人の健常成人にアルギン酸ナトリウムの8 gを7日間投与したところ,悪影響は認められなかった。(Millis &
Reed, 1947)
臨床症状により塩の制限が必要な3人の患者に,アルギン酸 15gを1日3回7日間経口投与した。糞中ナトリウム及びカリウム排泄のわずかな増加がみられたが,血清中電解質濃度の変化は認められなかった。(Feldman et al.,
1952)
6人の本態性高血圧患者に,アルギン酸カリウムを10%を含むアルギン酸の45gを5〜9週間毎日服用させた。また,浮腫状態にある3人の患者には同用量を約1週間服用させた。良好な耐容性がみられ,胃腸管障害も発現しなかった。(Gill
& Duncan, 1952)
5人の健康成人男性ボランティアに,アルギン酸ナトリウムの175 mg/kg/日を7日間投与した後,200 mg/kg/日を16日間投与した。毎日の服用量は,1日量を3回に分け間隔をおいて投与した。被験液は,秤取したアルギン酸ナトリウムを冷却した蒸留水220 mLに加え速やかに攪拌することにより作製した。その後24時間は,各ボランティアが服用前にその親水コロイドを一定量のオレンジジュースに加え濃厚な液状ゲルに水和することを許可した。投与期間に先行して,同容量のオレンジジュースを投与する7日間の対照投与期間を設けた。投与期間中を通して,明らかなアレルギー反応に関する質問を行った。対照投与3日,被験液投与最終日である23日及び休薬期間最終日である7日に,以下の項目について検査した。絶食下の血糖,血漿インスリン,呼気中水素濃度,血液学的検査 (Hb, Ht, MCV, MCH, MCHC, RBC, WBC,
白血球分画, 血小板),及び血液生化学的検査 (Na, Cl, K, CO2, Urea, LDH, AST, Bili, Al-p, P, Ca, TP, Alb, Crea, 尿酸塩, lipid, CHO, HDL,
TG)。定期的尿検査は対照投与期間及び被験液投与期間3週に実施した。5日間の便収集は対照投与期間の2〜6日及び被験液投与期間の16〜20日に行った。糞便の輸送時間,湿重量,乾燥重量,水分含量,pH,潜血,中性ステロール,脂肪,揮発性脂肪酸,及び胆汁酸を測定した。アレルギー反応の報告及び発現はなかった。糞便の輸送時間に対する明らかな影響を示さずに乾燥重量及び湿重量並びに水分含量の顕著な増加が認められたことから,アルギン酸ナトリウムの膨張性物質様の作用が示唆された。pHには変化はみられなかった。揮発性酸は4人で増加がみられたが、1人は減少した。中性ステロール及び胆汁酸に変化はみられなかった。血液学的検査,血液生化学的検査及び尿検査では,インフルエンザに罹患した1人におけるいくつかの検査値を除いて異常は認められなかった。(Anderson
et al.,
1991)
製粉中の乾燥海藻ダスト及び純粋なアルギン酸塩化合物に暴露されているアルギン酸塩工場の208人の労働者に対して,肺過敏症についての検査を行ったところ、労働者208人のうち15人において,明らかに業務上のダスト曝露に関連した症状が認められた。血清学的検査において,明らかな症状がみられた15人のうちの8人及び明らかな症状が認められなかった1人の血清中に沈降抗体が認められた。これらの16人の労働者の胸部レントゲンは正常であった。業務に関連した呼吸器系症状もしくは血清中沈降抗体のどちらか一方もしくは両方 (12人中3人)
が観察された12人の労働者は,最大1時間、生の海藻ダストを含む大気に曝露されていた。曝露前,曝露直後,曝露1,
3, 5及び24時間後に肺機能検査を行った。Transfer Factor (ガス拡散能)
の低下を伴う遅延性の肺容積の損失を引起す,急性の重篤な気道閉塞でみられる可逆性肺機能の低下が認められた。(Henderson et al., 1984)
■参考文献
1) FAO/WHO. WHO Food Additives Series 30, Thirty-ninth
report of the joint FAO/WHO exert committee on food additives (link
ro
WHO DB)
2) Toxicol.
Lett.. 72(1-3):113-119, 1994 (link to
PubMed)
■Abbreviation
ChemIDplus; ChemIDplus DB in TOXNET,
CCRIS;Chemical
Carcinogenesis Research Information System ,
DART;
Developmental Toxicology Literature
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