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和名 アセチルトリプトファン 英文名 N-Acetyl-D-tryptophan CAS 2280-01-5 (link to ChemIDplus) 別名 収載公定書 EP(5) 用途 安定(化)剤 ■JECFAの評価 ■単回投与毒性 N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)及びL-トリプトファン(L-Trp)の急性毒性試験をJCL-ICR系マウス、Wistar系ラット及び日本白色ウサギを用いて検討した。ウサギにおける最大投与容量(静注)は200mL/kgであり、これは夫々Acetyl-L-Trp、L-Trpの2,400、2,000mg/kgに相当する。この用量でウサギに死亡は認められなかった。マウス及びラットにおけるLD50 (mg/kg)は以下の通りである。毒性症状としてマウス、ラットでは活動性低下、震顫、眼瞼下垂、チアノーゼ、体温低下が認められた。また、腹腔内投与では肝葉の癒着がみられた。1) (Kawaguchi and Kotera 1980)
■反復投与毒性 ラット Wistar系ラットにN-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の600、1200又は2400 mg/kg/dayを30日間腹腔内投与し、L-トリプトファン(L-Trp)の500、1000又は2000mg/ kg/dayと比較した。Acetyl-L-Trpでは2400mg/kg群雌で最初の5日間に摂餌量及び体重増加の軽度抑制がみられた。それ以外、血液、血液生化学及び尿検査、剖検、臓器重量、病理組織学的検査に異常はみられなかった。L-Trpでは1000mg/kg以上の雌雄で死亡例、活動性低下、摂餌量・体重増加の抑制、摂水量・尿量の増加、立[y1]毛がみられた。血液生化学的検査では2000mg/kg群雄及び1000mg/kg以上の群の雌にGOTの上昇が、雌の全ての群にALPの上昇がみられた。雌では全群に肝及び腎重量の増加がみられ、病理組織学的には1000mg/kg以上の群で肝細胞の肥大、胸腺の萎縮が認められた。結論として、Acetyl-L-TrpはL-Trpに比し低毒性であり、その最大無作用量は1200mg/kg/ dayである。2) (Kawaguchi et al., 1980) Wistar系雄性ラットにN-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の300、600又は、1200mg/kg/dayを14週間腹腔内投与し、L-トリプトファン(L-Trp)の500又は1000mg/ kg/dayと比較した。Acetyl-L-Trpでは最高用量の1200mg/kgでも死亡例はなかった。いずれの投与群においても体重、摂餌量、血液、、血液生化学及び尿検査、剖検、臓器重量、病理組織学的検査に異常はみられなかった。一方、L-Trpでは1000mg/kg群で死亡例がみられ、活動性低下、摂餌量・体重増加の抑制、摂水量・尿量の増加、立毛がみられた。血液生化学的検査では500mg/kg以上の群で尿素窒素、血糖の上昇、NEFAの低下がみられた。病理組織学的には1000mg/kg群のいくつかの例で巣状の腹膜炎が認められた。結論として、Acetyl-L-TrpはL-Trpに比し低毒性であり、その最大無作用量は1200 mg/kg/day以上である。3) (Kawaguchi et al., 1981) ウサギ 1群雌雄各7匹の日本白色ウサギにN-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の600、1200又は2400mg/kg/dayを30日間2mL/kg/minの速度で点滴静注を行い、L-トリプトファン(L-Trp)の500、1000又は2000mg/kg/dayと比較した。Acetyl-L-Trpでは2400mg/kg群雄で軽度の摂餌量低下を伴う体重増加の抑制、貧血傾向及びLDHの上昇が、雌で貧血傾向と副腎重量の増加がみられた。その他の用量では影響はみ見られなかった。L-Trpでは2000mg/kgで、10日目までに雌雄各4匹が死亡し、一般状態が悪化したため15日目に生存例も剖検した。その結果、腎尿細管の拡張、扁平化及び胸腺の萎縮が認められた。1000mg/kgでも30日までに雄2匹、雌1匹が死亡し、生存例においても貧血が認められた。病理組織組織学的検査では胸腺及び精巣の萎縮が認められた。500mg/kgでは著変はみられなかった。以上の結果、Acetyl-L-TrpはL-Trpに比し毒性が低く、その最大無作用量は1200mg/kg/day付近と推察された。4) (Kawaguchi et al., 1980) 1群雄各8匹の日本白色ウサギにN-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の300、600又は1200 mg/kg/dayを90日間2mL/kg/minの速度で点滴静注を行い、L-トリプトファン(L-Trp)の500又は1000 mg/kg/dayと比較した。Acetyl-L-Trpでは1200mg/kg群で最初の1週間は軽度の体重増加の抑制がみられた。それ以外、いずれの群においても血液、血液生化学及び尿検査値に有意な変化はなく、剖検、臓器重量及び病理組織学的検査にも異常はみられなかった。L-Trpでは1000mg/kg群で、死亡例、活動性低下、立毛、摂餌量及び体重増加の抑制、摂水量及び尿量の低下がみられた。同群では貧血の指標である赤血球数、ヘモグロビン及びヘマトクリットは低下し、血糖値の上昇がみられた。死亡例では腎尿細管の拡張と上皮の扁平化が認められた。以上の結果、Acetyl-L-TrpはL-Trpに比し毒性が低く、その最大無作用量は600mg/kg/day以上と推察された。5) (Kotera et al., 1981) ■遺伝毒性 N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の変異原性を、枯草菌H17(rec+ )、M45(rec-)を用いた修復試験(rec-assay)及び大腸菌Sd-4、WP2hcr-、ネズミチフス菌TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538を用いた復帰突然変異試験により検討した。その結果、Acetyl-L-Trpはrec-assayにおいて0.05-5,000μg/discの濃度でDNA傷害誘発能を示さなかった。復帰突然変異試験においては大腸菌Sd-4系では0.05-5,000μg/plateの濃度で、同WP2hcr-及びネズミチフス菌の系では0.1-10,000μg/plateの濃度で有意の復帰突然変異コロニーの増加は認められなかった。 また、ラット肝ミクロゾーム画分(S-9)併用による代謝活性化系存在下においても大腸菌WP2hcr-系では0.1-100μg/plateの、ネズミチフス菌株の系では0.1-10,000μg/plateの濃度で復帰突然変異誘発能は認められなかった。6) (Yamasaki et al., 1981) ■がん原性 該当文献なし ■生殖発生毒性 マウス JCL-ICR系妊娠マウスに、妊娠6日より15日までの10日間N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の100、300又は900mg/kgを腹腔内に、2,500又は5,000mg/kgを経口投与した。腹腔内投与した母動物の2/3及び経口投与した全母動物は剖検して胎児に及ぼす影響を検討すると共に腹腔内投与の残り1/3の母動物は自然分娩させ出産児の観察を行った。妊娠期間中、腹腔内900mg/kg群では摂餌量の減少がみられたが、全ての投与群において母動物の体重、血液及び血液生化学的検査値、妊娠期間、分娩及び保育状態に影響はみられなかった。胎児観察では、いずれの群においても死亡、体重に変化なく、外形、骨格及び内臓にも異常はみられなかった。出産児の観察では腹腔内900 mg/kg群で出生時及び離乳時までの体重はやや軽かったが、離乳後は回復した。検体投与による外形異常はなく、出産児数、骨格及び死亡率、更にはIrwin試験、Open-field試験、Water T-maze試験においても異常はみられなかった。F1児の生殖能にも変化なく、F2世代においても異常はみられなかった。7) (Ueshima et al., 1980) ラット Wistar系ラットに、N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の150、300又は600mg /kgを雄では交配前60-80日に、雌では交配14日前から妊娠17日まで腹腔内投与した。交配率、妊娠率、体重増加、摂餌量、臓器重量に異常なく、血液及び血液生化学的検査値にも影響はみられなかった。黄体数、着床率、胎児死亡率、胎児体重に有意な変化はみられなかった。外形、骨格及び内臓にも影響はみられなかったが、変異として頚肋骨、椎体分離、第14肋骨、胸骨核非対称、胸骨未化骨等がみられたが、いずれも対照群と比べて有意な増加はなく、化骨進行度にも影響はみられなかった。8) (Maruoka et al., 1980) Wistar系妊娠ラットに、妊娠7日から17日までの11日間N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の150、300又は600mg/kgを腹腔内に、2.5又は5.0g/kgを経口投与した。母動物の2/3は妊娠20日目に剖検して胎児の観察を、残りの1/3は自然分娩させ出産児の観察を行った。腹腔内投与群においては母動物の体重、摂餌量に変化なく、着床率、胎児の死亡率、体重、体長にも変化なく、外形、骨格及び内臓奇形も認められなかった。出生児(F1)の体重、生後発育、行動及び生殖能並びにその胎児(F2)にも影響はみられなかった。経口投与群においては5.0g/kg群で母体重の抑制、摂餌量の減少、摂水量の増加がみられ、それらの胎児では死亡及び低体重とそれに伴う化骨遅延がみられた。しかし、外形異常、骨格及び内臓奇形は認められなかった。9) (Kadota et al., 1980) Wistar系妊娠ラットに、妊娠17日から分娩後21日までN-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の150、300又は600mg/kgを腹腔内投与した。F0母動物の半数は胎児(F1)観察の、残り半数は自然分娩させ出産児(F1)の観察を行った。F0母動物の体重増加、摂餌量、分娩、授乳、哺育に影響はみられなかった。F1胎児に奇形はみられずF1出生児の体重、生存率、死亡率、生後発育、行動及び生殖能にも影響はみられなかった。F1妊娠ラットの着床率、胎児(F2)死亡率にも有意な変化なく、F2胎児に奇形は認められなかった。唯一の変化はF2胎児の体重は対照群に比し小さかったが、自然分娩させたF2出生児の体重には抑制はみられず、Acetyl-L-Trp投与の影響とは考え難い。10) (Kadota et al., 1980) ウサギ 日本白色妊娠ウサギに、妊娠6日から18日までの間N-アセチル-L-トリプトファン(Acetyl-L-Trp)の125、250、500又は10,00mg/kgを静脈内投与した。妊娠29日目に剖検し胎児を観察した。500mg/kg以下では母動物の臓器重量、血液検査所見、胎児の死亡率、体重に変化なく、外形、骨格及び内臓にも影響はみられなかった。最高用量の1,000mg/kgでは妊娠28日及び29日にそれぞれ1匹が出産した。母動物に軽度の体重抑制、摂餌量減少及び貧血傾向がみられた。同群では胎児体重の抑制がみられたが有意差はなく、外形、骨格及び内臓にも異常はなく、催奇形性は認められなかった。11) (Ueshima et al., 1980) 以下については該当文献なし ■局所刺激性 ■その他の毒性 ■ヒトにおける知見 ■引用文献 1) 川口義郎、小寺敬一 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第1報) マウス、ラット及びウサギにおける急性毒性試験 医薬品研究、1980; 11(4): 635-45 2) 川口義郎、小寺敬一、竹本義枝 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第2報) ラットにおける亜急性毒性試験 医薬品研究、1980; 11(4): 646-65 3) 川口義郎、林 茂尚、竹本義枝、小寺敬一 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第9報) ラットにおける慢性毒性試験 医薬品研究、1981; 12(1): 129-43 4) 川口義郎、小寺敬一、竹本義枝 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第3報) ウサギにおける亜急性毒性試験 医薬品研究、1980; 11(4): 666-81 5) 小寺敬一、川口義郎、竹本義枝 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第10報) ウサギにおける慢性毒性試験 医薬品研究、1981; 12(1): 144-62 6) 山崎良治、新宮平三、杉本 比 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第11報) 細菌変異株を用いた突然変異性試験 医薬品研究、1981; 12(1): 163-71 7) 植島基雄、竹本義枝、丸岡久雄 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第8報) マウスにおける器官形成期投与試験 医薬品研究、1980; 11(4): 743-63 8) 丸岡久雄、門田雄三、上迫卓司、竹本義枝、 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第4報) ラットにおける妊娠前及び妊娠初期投与試験 医薬品研究、1980; 11(4): 682-9 9) 門田雄三、上迫卓司、竹本義枝、丸岡久雄、 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第5報) ラットにおける器官形成期投与試験 医薬品研究、1980; 11(4): 690-712 10) 門田雄三、上迫卓司、竹本義枝、丸岡久雄、 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第6報) ラットにおける周産期及び授乳期投与試験 医薬品研究、1980; 11(4): 713-34 11) 植島基雄、竹本義枝、丸岡久雄、 N-Acetyl-L-Tryptophanの毒性研究(第7報) ウサギにおける器官形成期投与試験 医薬品研究、1980; 11(4): 735-42 ■Abbreviation |メニューへ| |
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